デイト
「いえ……しかし。」
初めて一緒に食事を取るというのに、相手に金銭での負担をかけるのは申し訳なさが勝る。
席に着くと、女性は白い衣を脱いだ。
ちょうど、フードの頭の部分だけ外したようになった。
「(申し訳なさが正しい言葉遣いかはわからないが……。)」
心に感じるつっかえをそのように表現した。
「……いいんです。それに、聞きたいことがあるのでしょう?」
柔らかい雰囲気を纏っているが、眼は真剣であった。
こちらの意図を見透かしているのだろうか?
「……それでは、お言葉に甘えて。さっき体調を整える物があると言ってましたけど、ここは行きつけのお店なんですか?」
「……ええ、良く来ますね。特にお昼は毎日のように通っています。おすすめはメニューに書いてある通り、『シャルロッテの薬草焼き』がおすすめです。」
「じゃあ、それを一つ、お願いします。」
机の隣の店員に注文をする。
店員はなんだか驚いたような顔をしてから、短く返事だけをして注文を木の板に書いていた。
この世界に紙はないのだろうか?
もしかして、すごく無礼なことをしてしまったのだろうか。
店員の顔が赤い。
「……それでは、私は『漆黒漬けの木の葉や木』を一つ。」
「は、はい……。」
「……それと、ホワイトネックを一つ。」
「はい……、ご注文は以上ですか。」
「……よければ、あなたもネックを一つどうですか?」
不意に尋ねられる。
ネックというものが何を意味するのかわからない。
「……それでは、ホワイトネックを一つ……。」
故に答えるのに一拍遅れてしまう。
「……注文は以上です。」
「は、はい……。ありがとうございます……。失礼します……。」
何だろう、獣のような耳や尻尾をしている人の声はよく響くような気がする。
受付の女性の特徴というよりも、獣人(?)の特徴なのだろうか。
店員の女性は来た廊下を戻り、店の奥に小走りしていった。
「……さて、注文も終わりました……。」
何か意味深である。
「……あなたが知りたいことは何なんですか……?」
女性の雰囲気が変わる。
纏っていた空気が緊張感を持ち始める。
「……まずは、貴女の名前は?」
女性はひどく赤面した。