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魔法使いです。勇者のパーティを抜けたいです。【連載版】  作者: マルゲリータ
第一章 魔術学校編
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魔法使いです。地獄の特訓の始まりです。

ランキング一位になっちゃった……やべえよやべえよ。いいのか?俺のこんな脊髄反射で書いてる文でいいのか?

いいんです!楽天カードマーン

いいっぽい。頑張ります。沢山のブックマークもありがとうございます。

 

「さて、先ずは移動をしよう」


 ミッシェル先生はそう言うとおもむろにスーツの懐から杖を取り出し一振りする。

 地面に魔法陣が浮き出た。淡く青色に光っててすごい綺麗。まあそれでも、ミッシェル先生の方が綺麗ですがね。キリッ。あらお上手。

 んー知識でしか知らないけど、多分これ転移魔法だな。瞬間移動。テレポーテーション。老人ホームで働く人は覚えておいて損はないよ。これで起き上がらせる時お尻触られることとか無くなるからね。便利。それにしても日常生活において転移魔法で瞬間移動するじっちゃんばあちゃんか。字面だけだとめっちゃ強そう。歴戦の老兵っぽい。


 ひゅんっときてスタッと着地。

 転移完了ー。どこだここ?寒い。山の上みたいだな。遠くに緑に溢れた山脈が広がってる。おー絶景絶景。


「ベルナルド。気を付けなさい、ここは崖の上だ」


 え?うお!なんだこれ。

 俺たちが立ってる場所から5メートルくらいの地点から地面が消えている。覗き込むとそこは断崖絶壁。怖すぎ。落ちたら500パーセント死ぬねこれね。羽虫の俺もこれには唖然として戦々恐々。足ガクブルですわ。俺の背中から羽生えてきたら飛び込んでみよう。飛べねー羽虫はただの虫だ。

 で、ミッシェル先生ここで何すんの?景色を見ながら皆でお弁当でも広げちゃう?交友の輪を広げちゃう?やっべ俺今日弁当持ってきてないんだけど。あ、ポッケに飴玉一個入ってた。先生ーアメはおかずに入りますかー?入りません。マジかよ。交友の輪広げられないじゃん。皆がお弁当の食べさせ合いっことかしてる間俺だけ飴玉コロコロ舐めてるの?想像しただけですげー泣けてくるよ?


「諸君は既に『飛行魔法』は授業で習っているな?」

「え、はい……一応は」

「実技として使ったことは?」

「いえそれはまだです」

「だろうな。一般的に飛行魔法は難易度が高く、理論だけ覚えていればそれで十分だとされている。だが、こと戦闘を視野に入れるなら話は別だ。平面的な動きだけよりも立体的に動ける者の方が有利に立てる。それによって戦術の幅も広がる」


 飛行魔法かー。確かに授業で教えてもらったなー。その後家で何か飛ばしてみよーと思って重いものとか飛ばして落としちゃったりしたなー。妹のシュークリームをそれで潰しちゃったんだけどね。いや、あの、テーブルの上に置いてあったシュークリームくん側も悪いと思いま…あ、ごめんなさい。謝るから!すぐ新しいの買ってくるから!だからそのゴミを見る目はやめてくださいお願いします。

 あの時の妹は怖かった。食べ物の恨みは舐めちゃいけないね。阿修羅みたいだったもん。いつもの冗談が通じない顔してたもん。


 ん?崖の上で、飛行魔法の、説明をしている。

 あれー嫌な予感がするよー?悪寒がするよー?いや、まさかそんな。たとえ鬼教官とはいえ先生だぜ?飛び込めなんか言うはずないでしょ?ははは、心配性だなアベル君はあははー。


「今から諸君らにはここから飛び込んで貰う」

「正気か?」


 言いやがったよミッシェル様。うっそだろお前。余りに衝撃的過ぎて俺の口からちょっとお汚い言葉が出ちゃったよ。あらやだごめんなさいね。わたくしの口が滑り申し上げたのよ。謝るからちょっと考え直そ?ね?いのちだいじに。


「安心したまえ。既に崖の中腹には三重に渡って衝撃吸収の結界魔法を施してある。また、例え不測の事態が起きたとしても予め諸君らには私が飛行魔法の印を付けておく。万が一にも死ぬことはあり得ない」


 いや、そういう問題じゃないんすよ鬼教官。

 あのね、人には恐怖心というものがありましてですね。作り物だと分かってても怖いお化け屋敷しかり、国外れの歓楽街にあるジェットコースターしかり。例え安全が確保されてても怖いものは怖い。ちなみに妹とジェットコースター乗った時に俺はグロッキーになりました。おろろろー。妹はけろっとしてた。強え。


「という訳で早速やっていこう。誰が最初だ?」


 はい!あの!レイ様がいいと思います!レイ様、レイ様!貴族の威厳を見せつける時ですよレイ・シモンズ様!見せつけましょうよ貴族の力!見たいなー平民との格の違い見たいなー俺。

 あ、ダメだ。あいつもこの教師正気か?って顔してるわ。取り巻きの子たちもブルブル震えてる。なんで付いて来ちゃったの……?


「……ふむ。ならば、ベルナルド。貴様が最初だ」

「ほわい!?」


 俺、ご指名入りましたー!あざーす。全然嬉しくない。え?なんで?なんで俺?ほらいるでしょ、さっきまで格の違いだとか羽虫だとかどうのこうの言ってたお調子お嬢様がさ。なにゆえ?


「なぜ、俺、なんです?ミッシェル先生」

「貴様の名が『ア』ベル・ベルナルドだからだ。名前の順にする」


 探せばアインズ君とかアウラ君とかいるんじゃないすかね!絶対あなたテキトーになっただけでしょ!?いいのか!そんなことでいいのか!?

 あー待って俺の肩を掴まないで。まだ心の準備が出来てないの。私初めてなの!いやー助けてー!

 参加者の皆さん、目線を逸らしている。そうだね。誰しも最初の犠牲者にはなりたくないよね。俺が今一番その気持ち理解できるよ。


「あの、あの、先生。先生。まだ心の準備が出来てないっす。恐怖に打ち克つ強靭な心を持てるまであと半年くらい待ってくれません?」

「ベルナルド、『恐怖』とは打ち克つものではないよ」


 耳元で優しげな声でミッシェル先生が囁く。


「『恐怖』とは、慣れるものだ」


 すっげ、この人ラスボスみたいなこと言ってる。


 ーーその日、俺は風になった。







 あー夕陽が綺麗だなー。

 崖の上で俺は虚ろな目で景色を眺める。

 周りにはかつて魔法使いの卵だった者たちの残骸が転がっている。死屍累々。皆死んでないよ。グロッキーにはなってるけど。安全性はバッチリだった。はは、流石ミッシェル先生だぜ!優しい!(感覚麻痺)


「……初日と考えると、こんなものか。今日はこれだけで終わりにしよう」


 鬼教官は俺たちの惨状を見渡すと、杖を取り出し転移魔法を繰り出す。

 景色が移り、見慣れた魔術学校第二屋外訓練場の光景に戻った。

 さて、帰ろう。この傷ついた心を妹に癒してもらおう。妹ーん!聞いてよー先生が僕たちを虐めるんだよー!助けてー!知るか自分で解決しろって言われそう。いや絶対そう言うと思うわ。はー辛辣ぅー。


 参加者の皆はゆっくりと立ち上がる。その様はまさにゾンビ。足もガクガク震えてるし。あ、シモンズ様大丈夫ー?へたり込んでるわ。取り巻きの皆さんが肩を貸してあげてやっと立った。立った!レイが立ったよ!ちなみに取り巻きの皆さんは飛び込みませんでした。まあ別に参加表明してないからね。よかったよかった。尊い命は護られたのだ。

 シモンズ様?ああ、めっちゃ嫌がってたけど強制的に飛び込みさせられてたよ。今日イチの悲鳴が出てたね。ざまあ。


「明日はこれに加えて剣術の訓練も始める。皆、しっかりと休息を取るように」


 はい了解ですミッシェル様。

 ん、え?なんて?


「ミッシェル先生、どういうことです?あれって今日で終わりじゃ……?」

「何を言ってる。訓練はまだ始まってもいないぞ。あれは基礎の基礎だ」

「ちなみに……訓練ってどのくらいの期間やる予定で?」

「王国大輪祭直前までだ。ざっと見て二週間ほどだな。それまでに貴様らを立派な魔法使いに育ててやる。安心したまえ」



 次の日。


 第二屋外訓練場に人の姿は無かった。


 俺とミッシェル先生以外は。




 わーい二人きりの秘密の特訓だー。


 吐きそ。


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