魔法使いです。俺は悪くないです。
ああ〜書籍化の音ォ〜!!
はい、この度「魔法使いです。勇者のパーティを抜けたいです。」がオーバーラップ様にて書籍化致します。7月発売です。色々加筆修正しております。書き下ろし有りです!
微エロもあります。微エロもあります。微エロもあります。大事なことなので三回(ry
詳しくは活動報告上げますのでお暇でしたらそちらからどうぞ。
そして遅刻の謝罪を。
二ヶ月ギリ経ってないのでセウト。
申し訳ねえ……更新遅れて申し訳ねえ……。
そして期間空いてからの更新なのに主人公の株が下がる回でホントに申し訳……いや主人公の株下がるのはいつも通りだったわ。
楽しんでいただければ幸いです。それではどうぞ。
門番の仕事を別の隊と交代して、俺たちは午後の見回りを開始する。
治安が悪いという訳ではないのだが、王都ということもあって人も多いのでちょっとしたイザコザは日常茶飯事だと言う。新米とはいえ騎士団の人間が目を光らせることでそういった事態を未然に防ぐことが出来るのだ。
そんなことをペラペラ説明した後、腹も膨れただろうしあとはよろしくー、とニナさんは手をフリフリ振りながら早々にどっか行った。あれは十中八九見回りが面倒くさくなっただけだと思う。
ぶっちゃけ俺も面倒くさいんですけど……。俺もついでに連れてってくださいよニナさん。二人で愛の逃避行と洒落込みましょうよ。あてのない旅路の果てに真実の愛を見つけに行きましょうよ。ダメ? あぁダメですか。そうですか。
仕方がないので俺は舗装された王都の街道を歩きながら見回りの任務を全うすることにした。どんな小さな仕事でも全力を尽くすのが真の男だ。千里の道も一歩からという言葉もある。良い言葉だ。座右の銘にしよう。
ガシャガシャと鳴る騎士団から支給された鎧が超うるさい。うるさいし重い。一番軽量なやつ選んだはずなのに重い。何故だ。答えは筋肉。鶏のささみと同じくらいしかない俺の筋肉量をなめるなコケー。こんなんで千里の道なんか歩いたら道半ばで挫折して休憩して新居を立ててそこに永住しちゃうだろうね。
悲しいね。俺も人並みに肉食べてるはずなのに一向に筋骨隆々にならないね。なる気配すらないね。憧れの細マッチョアベルになる日はいつやって来るのでしょう……。
筋肉が女の子にモテる要素とかほざく輩はみんな肉類を食すと腹を下す呪いにかかればいいと思うよ。あとついでにイケメンも腹壊せ。
もういっそ「私太らない体質なの☆」とか自慢しちゃおうかしら。あらやだわ今度は女性陣から冷たい目線頂いちゃいそう。周りが敵だらけの非モテ街道真っしぐらぽいのでこの話題はやめときましょう。雄弁は銀、沈黙は金ってね。まあ俺の場合黙ってても石ころのままなんですが。
「それでは、私とルーナさんであちらの道を行ってみます。アベル君、ロバート君をお願いね」
「あ、はい、了解です」
「なんかオレの扱いヒドくないー?」
「妥当よ。」
雲もまばらな青空で太陽が景気良く輝く昼間。多くの人々が行き交う街道でミーニャさんが二手に分かれることを提案してきた。提案というよりもう決定事項ぽかったけど。ぱっと決めてぱっと実行に移す。やっぱ委員長感すごいわ。
ついでとばかりにロバートの不平不満をばっさりと両断したしねミーニャ委員長。つよい。
「なんだよ〜もっと仲良くしようぜミーニャちゃん〜」
「ぅぇ…………その軽薄そうなところが嫌なんですっ! さあ行きましょうルーナさん!」
「え、あ、はい!」
ガン引きじゃないか。小さい声だったが「うえ」って言ってたぞ。好感度がゼロどころかマイナスまでめり込んじゃってるぞ。
まあなんとなくこの二人の相性が最悪なのは分かる。なんたって性格が完全に真逆だ。
かたや堅物の委員長、かたやヘラヘラ〜としたチャラ男。どう考えても水素水とごま油である。
プンプンと怒り足で遠ざかるミーニャさんを見ながら、あちゃー嫌われちったー、と笑うロバート。何もかもチャラチャラして苦手な奴だがこの厚いメンタルは素直に称賛する。俺だったら女の子に「嫌です!」とか大声で叫ばれた日には数日寝込む自信がある。
「あのアベルさ……くん!」
ミーニャを追い掛ける直前、ルーナさ……ルーナが俺の事を呼んできた。なんか変な呼び方だったがそこはあえて気にしないのが紳士の嗜み。ヒュー! 俺ってばマジ紳士の鑑。
「また後で会いましょうね?」
ぐいっと身体ごとこちらに近付いて至近距離で上目遣いをしてくるルーナ。
そんな可愛らしい仕草で殺しに来た彼女を前に紳士の鑑である俺はその称号に相応しい応対をしたのだった。
「りょ……あ、あと、はい、後で……はい……」
「はい! それでは!」
太陽のように笑ってぱたぱたと走り去るルーナを見送りながら、俺は颯爽と振り返りロバートに声をかける。
「よし……行こうか」
「おー!じゃいこーぜアベっち!」
ざわざわと騒がしい道を二、三歩進んだところで、ロバートが小話をするように切り出した。
「あのさー」
「ん?」
「さっきの、どもり過ぎて若干キモかったぞアベっち☆」
「うるせぇよぉ……!」
片目でウインクしながら言葉の右ストレートを繰り出してきたロバート。俺は両手で顔を覆いつつ絞り出すように悪態をついた。
紳士の道のりは千里どころか万里くらいありそうだ。ふふ……つらい。
「そーそー。そんで弟がさー『アニキなら騎士団長にだってなれるって!』って言ったわけさ。そしたらオレもよっしゃなってやるぜ! って言って王宮魔法騎士団にやって来たわけだよ」
「へ、へー……王宮魔法騎士団ってそんな軽いノリで入団出来るとこじゃない筈なんですが……」
「そりゃそうよー! なんたって王都にある騎士団のエリートだからなぁ。オレ超努力して入団試験受かったわけさ。もう一度同じくらいの努力しろって言われても絶対無理だわ。人生の努力の大半使い果たしたわマジで」
「なるほど……」
試験合格組かよ……すげーなオイ。見かけによらずすげーなオイ。いやまあ王宮魔法騎士団に入ってる時点ですげーのはわかってたけども。
見回りをして一時間ほど経ってのこと。ロバートとちょっとした世間話をしつつも、それまでは大した争いごともトラブルも見付からず、街は平穏そのものといった具合だった。
「きゃっ!」
「うお!? お、おい、大丈夫か?」
曲がり角を勢い良く走ってきた小さな女の子と避ける余裕がなくそのままぶつかってしまった。年齢は十歳かそこらだろう、地面にへたり込み息を切らしている。
俺は慌てて膝をついて怪我がないか確認する。幸いにして目立った傷は無いようで俺はほっと胸をなでおろす。
「はあっ、はあっ。あ、あの……」
「おー大丈夫だぞー? ゆっくり落ち着いてから話してみ?」
いつの間にか俺と同じように膝をついて女の子の背を撫でるロバート。女の子に対する仕草がナチュラル過ぎてマジヤバイっす。師匠と呼ばせてもらっていいっすか。でも師匠色々絵面が事案になりそうなんでちょっと控えたほうがいいっす。
言ってみてなんだがコイツが師匠なのは何となく嫌なので呼ぶのはこれきりにしよう。
「そ、その鎧……騎士さんだよね!? お願い! ロイを、ロイを助けて!」
その緊迫さに気圧され、俺は二つ返事でその願いに応える。
もしや王都の中にモンスターでも出たのだろうか、と嫌な想像が浮かぶ。
脳裏には以前訓練場で現れたギガントオーガの記憶。
俺は女の子に連れられるままその場へと--!
「おらー!」
「ぎゃははは!」
「……うぅ……やめてよぉ」
連れられた先の遊び場で数人の子どもが真ん中の少年にボールを当てて笑っていた。
あぁ……いや、うん。モンスターが出たとかそういうのじゃなくて良かったんだけども……。なんというかこれは……。
「ロイ! 助けに来たよ!」
「うぅ……アルマぁ……」
「きたな男女!」
「あー! 騎士呼ぶなんてズルいぞ!」
女の子が声高に叫ぶと、ボールを当てられていた気弱そうな少年が涙ながらに女の子の名前を呼び、周りの子どもたちが騒ぎ立てる。
リーダー格のぽっちゃりした少年が女の子に向かって不敵な笑みを浮かべていた。
「ほら、騎士さんでしょ! 助けてよ!」
「いや、あのー……」
どうなんだこれは。確かに助けるべきというのは分かるんだが、小さい子どもの苛めに王宮魔法騎士団が介入してもいいものなのか……? 逆に俺たちが罰を受けるとかそんなオチなんじゃ……。
……うーん、まあ罰を受けるなら受けるで仕方ないか……。どう見ても苛めの現場だし、ここはちゃんと年上として彼らが悪の道へ進む前に止めてやらねば。
俺はクールに結論を出し、自らの犠牲も厭わず彼らの元へ歩み寄った。優しいお兄さんのように、微笑みながら話しかけた。
「まったく、君達……そういう苛めはやってはいけないとご両親に教わらなかったの……」
「うっせーゾンビみたいな顔しやがって」
「もやしー」
「よわそう」
「このような覇気のない方が騎士団員とは嘆かわしいですね。一市民としてもっと頼り甲斐のある人を採用して欲しいものです」
………………………。
停止した俺の顔面に子どもたちの持っていたボールがぶつかる。
俺は一呼吸置いてから、ゆっくりと腰に差す魔法の杖を取り出そうと手を伸ばした。
「このクソガキどもがッ!」
「アベっち、アベっち! 子どもに杖は色々ヤバいから! ヤバイから!!」
HA NA SE!
世間を舐めたクソガキ共に縦社会の恐ろしさを見せつけてやる良い機会だ!
あと何より最後のメガネくいってした奴が一番ムカつくッ!
「何してるんですか。」
「…………いや、あの……」
気付けば俺は仁王立ちしたミーニャさんの前に正座させられていた。
「いいですか。誰だって誰かに叩かれたり、悪い言葉を言われたりしたら悲しくなるんです。それは皆さんもそうですよね?」
「……うん」
「でしたら、ちゃんと謝りましょう。出来ますよね?」
向こう側ではルーナがいじめっ子たちの前に膝をついてたしなめている。どうやら彼女の優しい言葉には素直に従っているようで、ロイという気弱そうな少年に謝罪していた。
ただぽっちゃりした少年だけが最後までそっぽを向き、渋々といった風に謝った。
ルーナが子どもたちの頭を撫でているのを尻目に、俺は正座を続行させられている。
「アベル君。君までこんな風になるなんて失望しましたよ。これからはしっかり冷静な心で--」
クドクドと説教を続けるミーニャさん。俺は反論のしようもなくただ正座の体勢のまま固まっていた。
……違うんすよ。魔法を使おうなんて毛ほども考えてはなくて……あの、年上としてその、威厳とかそこらへんをですね……。いや、あの、ホントにごめんなさい。
ポン、と肩に手を置かれ、俺はゆっくりと振り返った。ロバートだった。
「アベっち。…………大人になろうぜ?」
くっ!
ぐうの音も出ねえ……!
アベル君はこんな感じだよね。




