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魔法使いです。勇者のパーティを抜けたいです。【連載版】  作者: マルゲリータ
第一章 魔術学校編
16/39

魔法使いです。妹と祭りを少し楽しみます。

ブックマーク数が一万を超え、私小躍りしております。一人バジリスクタイムです。

皆さんありがとうございます。これからもよろしくお願いします。気長に気楽に読んでいって笑っていってください。

デート回(妹と)+フラグをにょきっと立てる回だよ!

 

 ライアンとの一戦が終わり俺は涙を拭いて控え室を出る。

 勝負には勝った、はずなのに、チヤホヤされていたのは負けたアイツの方だった。なんで?

 おかしいじゃない。こういう時ってのはイケメンを実力でボコした俺に今までライアンに熱を上げていた女子たちが鞍替えしてウハウハになるもんなんじゃないの?男はやっぱり顔じゃねえ!中身だ!とか言いながら俺に汗拭きタオルを微笑みながら手渡ししてくれる女子がいてもいいんじゃない?あ、俺の場合中身も闇に満ち満ちてるからダメだって?うーん、俺、完敗!

 試合に勝って人生の勝負で負けた気分。全然釣り合ってないんだが。プラマイでマイナスが振り切っちゃってるんだが。ほげー。


 まあいい。嫌なことはゴミ箱に捨てちゃおう。ポイっとな。これ、俺の生きる上での教訓。どうもダメ人間です。


 さて、時刻は昼過ぎの微妙な時間。今日はあともう一戦あるのだが、少しばかり時間に暇が出来てしまった。

 そんな訳で今年くらいは祭りにでも参加してみようとか思ってみた。なぜか思ってしまった。

 来た瞬間に後悔したね。お一人様を嘲笑うかのようにリア充ばかりが闊歩しておられる。くっ、昨日にはリア充の一つを爆発することに成功したというのに、未だ世にはリア充が我が物顔で蔓延っていやがる……駆逐してやる……一組残らず……!


 俺がもう少しでダークサイドに堕ちようという時、視界に俺の愛しの妹が映った。

 心から闇のオーラが浄化されるのを感じる。もうリア充とかどうでもいいね。この世で最も可愛い妹に逢えたことに比べれば全てが塵のようなものだ。

 どこかの屋台で買ったのだろう、りんご飴を舐めながら頭にお面を付けている妹に俺は喜々として話しかける。


「おーいエリーゼー!」

「……? げ」


 エリーゼは声がした方、つまりは俺の方を向いてから、嫌そうな声を上げる。

「げ」とは何だ「げ」とは。そんな悲しい反応されるとお兄ちゃん泣いちゃうよ?


「いやー奇遇だな妹よ」

「うんそうだね。じゃ」

「ちょい待ってちょい待って」


 エリーゼは俺の愛情をつれない返事であしらい、どこかへと行こうとする。それを俺は全力で止めた。今の俺にとって妹は砂漠の中に現れたオアシス。妹が居なくなればどうなると思う?光のオーラに焼かれて俺が干からびちゃう。


「放してくんない?」

「……一緒に回ろうぜー兄妹の仲を深めようぜー?」

「知らない。お一人様で回ってれば?」

「やめてお願いだエリーゼ!俺をこんなリア充の荒波の中に置いていかないで!俺をひとりにしないで!」

「……どうして兄ちゃんはそこまで無様を晒せるの?」


 いよいよ本音を隠せなくなった俺が縋り付くと、エリーゼは憐れみを込めた視線を注いで一つ溜息をついた。





「友達と祭りに行くとか言ってなかったか?」

「その子とは今は別行動中なの。射的とクジ全制覇してくるんだって。付き合ってらんないよ」

「……アグレッシブな子だな」


 両手に綿飴とイカ焼きを持った俺とりんご飴を舐める妹が熱気に満ちた道を歩く。

 俺の手にあるこれらは全てエリーゼのものだ。俺の分は一欠片もない。金を出したのは俺だけどね。一緒に回る条件として奢らされました。あれ俺ってば兄ってより荷物持ちじゃない?


「ん」

「ほい」


 エリーゼが左手を出してきたので俺は綿飴を手渡す。そして食べ終わったりんご飴の棒を受け取る。やっぱ荷物持ちだな俺。


 あ、そういえば今日の弁当のお礼を言ってなかった。俺はエリーゼを横目で見ながら礼を言うことにした。


「そういや。弁当、ありがとな。美味かった」

「別に……母さんに作ったのの余りを適当に入れただけだし」

「おう、だからありがとう」

「……」


 プイ、と妹がそっぽを向く。おお? なんだ照れているのか? ふふ、褒められてそんなに嬉しいのか()い奴め。気を良くした俺はもっとエリーゼを褒めることにした。


「あれぞまさに愛妹弁当ってやつだな。兄への感謝と愛を感じたぜ」


 物凄い眼光でエリーゼが睨んでくる。あ、あれ?全く感謝と愛を感じないんだけど。侮蔑と拒絶の意思しか感じないんだけど。スミマセン、ちょっと調子乗りました。だからその目はやめて下さい。


 そんな風に歩いていると、カツンと何かを軽く蹴る音がした。俺はしゃがんでその物体を手に取ってみる。


「……なんだこれ?」

「……ロケットってやつじゃない、それ」


 細い鎖に繋がれた楕円形の装身具。わずかに開いた隙間から、小さな女の子とその子の両親であろう二人の男女が仲睦まじく笑っている写真が見えた。

 誰かの落し物なのだろう。よく見れば、本来首にかける鎖の繋ぎ目が壊れてしまっている。きっと、これの持ち主は知らずに落としてしまったのかもしれない。


 そしてこの写真は言うまでもなく家族写真だろう。間違いなくこのロケットは持ち主にとって、とても大切な物であるはずだ。


「悪いエリーゼ、ちょっと……」

「探すんでしょ?その持ち主のこと」


 エリーゼは俺が言うより先に俺の手からりんご飴の棒とイカ焼きをひょいと取り上げる。


「いいよ暇だし。付き合うよ」

「悪いな」

「はぁ……相変わらず兄ちゃんは全く、お節介というか何というか……」


 妹のお小言を俺は笑って聞き流す。

 俺は腰から杖を取り出し魔法を唱えた。


「『追跡(チェイス)』」


 ロケットに残った魔力の残滓を可視化し、それと同じ魔力の足跡を探る魔法。本来は逃走する犯罪者の足取りを掴むために使ったりする魔法だが、こういう時でも使える便利な魔法だ。間違ってもストーキングに使ったりしちゃダメな魔法だ。そんなことしたらおっかない騎士様がすっ飛んでお縄にかけられるから良い子はしちゃダメだぞ! この魔法を教えてくれた男の先生はチラチラと俺の方を見ながらそんなことを言ってた。その視線はどういう意味なのか俺は考えたくない。


「視えた。まだそんな遠くには行ってないな」


 地面に不自然に光る俺にしか見えない足跡のような魔力の痕跡を辿る。妹はそんな俺の後ろでイカ焼きを食っていた。美味そうだな。後で俺も買おう。


 そして魔力の元であるロケットの持ち主を見つけた。亜麻色の髪をサイドテールに束ねたその女の子は、泣きそうな表情で地面のあちこちに視線をやっていた。魔術学校の制服を着ているということはウチの学校の生徒だろう。見覚えはないが。


「あのー……スミマセン」


 俺が声をかけると女の子はこちらを振り向く。髪色と同じ亜麻色の瞳に見据えられ、俺が目を逸らしてしまう。しまった、勢いで声をかけたはいいものの、相手は女子だということをすっかり失念していた。俺が女の子とグッドなコミュニケーションを取れるわけないじゃん! なんで妹に頼まなかったの俺?


「はい? あのごめんなさい。ナ、ナンパというやつですか?気持ちは嬉しいんですけど、ちょっと今は困ると言いますか暇がないと言いますか……」

「あ、いや、ナンパではないです……」


 俺がナンパなんかしたら天地がひっくり返るね。あ、逆ナンならいつでもウェルカムですけども。いややっぱダメだわ。話しかけられた瞬間に吃って会話が進まない自信があるわ。


「あの、これ……そこで拾ったんですが……」

「あー! 私のロケット!」


 俺が右手に持つロケットを差し出すと、女の子は泣き顔から一転、花が咲いたような笑顔になる。

 そして俺がロケットを渡す前に、なぜか俺の手ごと両手で包んできた。


「あ、ありがとうございます!両親の贈り物で、大切な物で……!本当にありがとうございます!」


 あ、女の子の手柔らか……じゃない! 凄い可愛らしいお顔がすぐ目の前に来てぼく緊張しちゃ……じゃない! しっかりしろ俺。なんか前にもこんなことあった気がするぞ!その時もコロっと落ちちゃったのを忘れたのか学習しろ俺よああでもなんか良い匂いがします。


「……いや、あの、ちょ手、手が…」

「ああごめんなさい!痛かったですか!?」


 何だか的はずれな心配をされていらっしゃる。今はどちらかと言うと手よりも心臓が痛いですね。バクンバクン言っちゃってるんで。


「と、とりあえずロケットの鎖が壊れちゃってるみたいなんで……修理した方が良いと思います」

「ホントだ。あぁそれで落としちゃったのかぁ……」

「じゃ、じゃあ大丈夫そうなんで、俺たちはこれで……」

「はい! 本当に助かりました!ありがとうございます!」


 ペコペコと何度も頭を下げながら去っていく女の子を見送る。俺は右手を見つめ、善き事を成せたことに安堵する。きっと俺の今の顔は一つの事を成し遂げた漢の顔をしていることだろう。


「……兄ちゃん。そのニヤケ顔はR指定入っちゃうからやめた方がいいと思うよ」


 え、ひどくない?


「……あ」

「うん? ああ」


 エリーゼが何かを見つけて小さく声を漏らす。その視線の先にはこちらを見て手を振っている景品の山をこさえた女の子が居た。


「あれがさっき言ってた友達?」

「うん」

「そうか、じゃここでお別れだな」

「……そうだね」


 時刻を見れば次の試合までは良い頃合いとなっていた。俺は学校の方に戻るし、エリーゼは友達と祭りを楽しむのだろう。

 俺は学校の方へと向き直り歩き出す。


「兄ちゃん」

「なんだー?」

「……試合、頑張ってね」


 妹はこちらを見る事なくそう言葉を放って、足早に友達の方に駆け寄っていく。


「任せろ」


 俺は妹の背中を見届けながら、そう呟くのだった。


ジャンルを異世界(恋愛)からファンタジーに変えた方がいんじゃね?との提案を受け、バトルもしちゃってるしそうしようかなと思っているマルゲリータです。

でも、お願いが、あります。誰か……このクソ情弱の俺にジャンルの変更方法を教えてくれぇ……!

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