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魔法使いです。勇者のパーティを抜けたいです。【連載版】  作者: マルゲリータ
第一章 魔術学校編
14/39

魔法使いです。祭りの二日目が終わります。

沢山の感想ありがとうございます。このような拙作に大好きとか言ってくれる人とかいてもうね。俺が大好きって言いたい。ホント。ありがとうございます。

明日には感想返しの方にも手をつけられると思いますので。これからも頑張りますので、お時間のある時見ていってください。

 

 控え室で戦闘用ローブを脱ぎ、簡素な私服に着替える。二日目は二試合だけのため、俺は帰り支度を済ませて明日に備える。


「アベル。もう帰るのか?」

「あ、え。あぁライアンか……」


 俺が控え室から出ると廊下を歩いてきたライアンとばったり遭遇してしまった。てかビックリしたわ。突然話しかけないでもらえます?陰キャは突然話しかけるのに凄く弱いんですよ。つい(ども)っちゃうのよね。なんでだろうね?女の子から話しかけられた時なんかもう最悪よね。吃るどころかもう言葉を発することが出来ないからね。


「まあそうだな。今日の分の試合は終わったし……」

「観てたよ。見事だった。それにしても飛行魔法なんかいつの間に習得したんだ?」

「……秘密の特訓ってやつだ」

「はは、よく分からないけど生半可なものじゃなさそうだ」

「まあな……死ぬかと思ったし」


 爽やか笑顔で軽口を叩いてくるライアン。おのれイケメンめ。俺はこんなにもイケメンを目の敵にして嫉妬しているというのに、当のイケメンはそんなこと露知らずフレンドリーに絡んでくる。やめてよ! 俺の器の小ささが比較対比で浮き彫りになっちゃうでしょ! もっと悪役らしく振る舞いなさいよ! もしくはそのリア充オーラを俺にも分けなさいよ!


「俺が次勝てば三回戦進出。アベルと戦えるな」

「……ふ、ふん。精々足をすくわれないよう気をつけることだな。二回戦敗退の可能性だって十分あるんだぜ?」

「忠告ありがとう。そうだな、まずは目の前の試合だ」

「……それに例え三回戦に進んだとしても、お前の大会はそこで終わりさ……」

「そうなるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。これでも俺だって優勝目指してるんだ。負ける気はないさ」

「……ほぉう……く、口だけなら何とでも言えるさ……吠え面かくんじゃないぞ?」

「口だけじゃないと証明するさ」


 ライアンは不敵に笑うと右手を差し出してくる。握手を求めてきたのだ。

 くっ。何だ、何なんだコイツの主人公感は。さっきから俺の煽りを全部主人公っぽく返してきやがって。何だか俺が悪役みたいじゃないか。ちょっと調子乗ってる悪役みたいになってるじゃないか。


 違うぞ。俺は悪役なんかではない。俺の人生の主人公は俺なのだ。断じてこんな爽やかイケメン野郎などではない。


 俺は主人公に返り咲くべく精一杯カッコよく去ることにした。

 俺はライアンの手を払い背を向け歩き出す。


「その握手は明日の試合が終わった後にしてやろう。もっとも、地面に伏しながら握手出来るか疑問ではあるがな……! 無論勝つのは俺だ……」


 あれ、やっぱ凄い悪役っぽいんだけど。滲み出る小物臭が抜けきれないんだけど。


「ああ。良い試合にしよう」


 なんかやっぱあっちの方が超主人公感溢れてる。


 解せぬ。






 観客席に座り、俺はライアンの試合を観戦する。相手は下級生の男子生徒のようだ。ライアンは剣と魔法どちらもバランスの良いオールラウンダータイプか。腐っても最上級生。ライアンが終始優勢だ。


 あ、下級生の持ってる剣が飛ばされた。下級生が尻餅をつき、ライアンがそこに刃を突き付ける。


「ま、参りました……」

『……試合終了!勝者、ライアン選手!』


 下級生が降参の意思を示し試合が終わる。

 ライアンは剣を鞘に収めると、下級生に手を差し伸べ立たせていた。ライアンが何事かを呟き下級生が少し嬉しそうに頭を下げる。両者の健闘を讃えるように闘技場には万雷の拍手が満ちる。

 魔術大会のあるべき姿がそこにはあった。


 くっ。なんで終わり方まで爽やかなんだ……!なんでお前らさっきまで戦いあってたのに仲良くなってるんだ……!なんでちょっと友情が芽生えそうな展開になってるんだ……!

 おかしいだろ。俺が戦った相手なんか腹黒女子にストーカーなんちゃってイケメンだぞ。恋も友情も芽生えねーよ。てか芽生えさせたくねーよ。落差激しくないですかね。


 くそったれふざけやがってライアン。俺はお前と友情なんぞ育まんぞ。絶対だかんな。どんなに良い雰囲気になろうとお前と友達になんかならないんだからな!絶対だかんな!


 笑顔と拍手が溢れる観客席で一人、俺はそう誓ったーー。……やっぱり凄く悪役っぽい。


「ーー次はAブロックの三回戦か」

「ーーしかもあのシモンズ家のお嬢様レイと魔球部副部長マインの試合だってよ」

「ーーどちらも去年の大会で好成績を残しているらしい。おまえどっちに賭ける?」

「ーー俺はマイン選手の方に百(ゴルド)だ」


 ライアンの試合も見終わり、俺は席を立って帰ろうとした。だがシモンズの名が聞こえたので、俺はもう一度座り直す。あの高慢ちきなお嬢様の実力を俺は知らない。最上級生に混じり八位入賞まで果たしたのだから相当の力はあるのだろう。どんなもんか見てやろうと思った次第だ。

 まあアイツとは決勝まで当たらないけどね。そして俺はベスト16まで行けばそれ以上試合に出る気もないからあんま意味はないんだけどね。けど、どうせ観客席に座っているしついでに見てみようという軽い気持ちだった。なんか聞くところによると優勝候補同士の戦いっぽいし、面白そうだ。


 あ、シモンズが闘技場に入ってくる。うわぁ……相変わらずゴテゴテと高級そうな装備だこと。絶対俺はアイツと趣味合わないと思う。シンプルイズベストなんですよやっぱりね。悪趣味な高級品は俺嫌い。お金がないから僻んでるとかそんなんじゃないよ? ホントだよ?


 観客が拍手で迎えシモンズはそれに笑顔で応える。いつもの意地の悪そうな笑みではない。アイツあんな表情も出来たのね。いつも見下すような視線と意地の悪い笑顔ばっか見てたから、お前表情のレパートリーそれしかないの?とか思ってたよ。


 さて、お相手さん……えーとマインさんだっけ? が来るのを待つ。




 ………………来ねえし。


 待てども待てどもお相手がやって来ない。観客席からはざわざわとどよめきが聞こえる。

 そして立会いの教師が時計を確認し、拡声した声で告げる。


『えー……マイン選手が闘技場に現れないので……マイン選手棄権と見做し、レイ選手四回戦進出です!』


 周囲からはつまんなーい、という声が聞こえる。まあ魔術大会はそもそも自由参加だ。魔球部の副部長ってことは部の活動だけで魔法実技の成績はこなせているだろうし、大会に参加するメリットはそこまでない。それに街は王国大輪祭の真っ只中。遊びたい盛りの若者には大会に出るよりも面白いことなど腐るほどあるというものだ。

 あ、隣のおじさんが百(ゴルド)渡してる。さっきマイン選手に賭けてたもんね。律儀だね。


 お目当にはありつけなかったが、別にいいか。さて、俺も帰るとしよう。てか二試合動いたからか普通に疲れが溜まってるようだ。動くのダルいわー。飛行魔法で飛びながら帰ろうかな、と思い席を立つ。


 ちらりとシモンズの方を横目で見て、俺は帰路についた。


 帰り際。

 シモンズが一瞬、いつものような意地の悪い笑みを浮かべていたことが、気になった。



 王国大輪祭二日目が終わった。






 次の日、王国大輪祭三日目の朝。


 俺がキッチンに行くと見慣れない小包が置いてある。


「なんだこれ」


 結んである布を解き中身を見る。

 弁当だった。

 卵を焼いたやつとか、形の不揃いなミートボールとかそんなのが入っている。この適当さ加減は母さんが作ったものじゃないな。妹のエリーゼの方だ。


 布と弁当の間からメモ書きがひらりと落ちる。それを拾い妹の文字で書かれた淡白な一文を読む。


 "試合頑張れ"


 俺は昨日は試合に備えて早目に寝たため、エリーゼとは話していない。つまり、俺はエリーゼに昨日の試合結果について教えていないということでありーー。


「おう、頑張るよ」


 いや、野暮なことはよそう。

 俺はエリーゼの手作りの弁当を有り難く受け取り、大事に鞄へと仕舞う。


 これさえあれば、俺はライアンだろうが優勝候補だろうが。

 負ける気がしない。そんな気がした。


 俺は家を出て学校へと向かう。

 その足取りはいつもよりも軽かった。


少しずつ短編とは変えていこうと思います。変えないところは変えないつもりです。つまり、テキトー。

今回で言えばライアンは短編では二回戦負けという表記をしてアベルとは戦わない予定でしたが、連載版では戦わせます。世紀の一戦です。イケメンvs非モテ、ファイッ!!

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