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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『龍神の谷』に住まうもの
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19.出発準備

 翌日、昴達は《竜の寝床》を後にすると、早速ココの屋敷に向かった。朝ごはんはまだ食べていなかったが、タマモがココと食べたいっと言ったので、とりあえず合流しよう、ということになった。

 

 屋敷に着くとココとギルオンが立っていた。少し意外に思いながら、昴は二人に挨拶する。


「おはよう。ギルオンさん、おはようございます」


「二人ともおはようなのじゃ!」


 タマモは今日も元気はつらつ。【自己治癒能力】のスキルの恩恵により、一日寝ると大抵の傷は治ってしまう。


「おはよう」


「うむ、おはよう」


 ココはあくびをかみ殺しながら、ギルオンは威厳たっぷりに挨拶を返す。


「ココがいるのはわかるけど、ギルオンさんがいるのはなぜですか?」


「スバル達には目的地があると聞いたからな。買い物が終わればこの町を出るんじゃないかと思い、顔を出したのだ」


 ギルオンが笑顔で手を差し出す。昴も笑顔を浮かべその手を握った。


「エルシャール家は何があろうとも冒険者’ジョーカー’を支持する。なにかあればいつでも力になることを忘れるな」


「…そう言っていただけると助かります」


「うちらもココとギルオンの味方じゃからな!」


 ピョンピョンと跳ねながら言うタマモを、ギルオンは嬉しそうな顔で見る。


「それは心強い。万万千千の兵士を手に入れた思いだ」


「ばんばん…?」


「数が限りなく多いってことだよ」


 首をかしげるタマモに昴が説明する。タマモが分かったようなわかっていないような顔で「そうなのか」と頷いた。


「うちらはその’ばんばん’なんじゃから、困ったときは呼んでほしいのじゃ!」


「頼りにしているぞ」


 ギルオンが優しくタマモの頭をなでると、タマモは気持ちよさそうに目を細めた。


「はいはい、こんなところで油売っていると遅くなっちゃうよ」


 ココが手を叩きながら、早く行こうと、二人を促す。


「それもそうだな。じゃあギルオンさん、失礼します」


「うむ、またこの町に来ることはあるんだろう?」


「えぇ、いつになるかはわかりませんが、時間ができたらお二人の顔を見にまた来ますよ」


「それは結構。達者でな」


「もう病気にかからぬよう気をつけるのじゃぞ!」


 二人はギルオンに別れの挨拶をして、ココと共にルクセントで一番栄えている港の方へと歩いていった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 三人はまず朝食を取るべく、海沿いの料理屋さんに入った。そこは今風にいえば海の見えるおしゃれなカフェといった感じで、いろんな種類のハーブティーやコーヒー、サンドウィッチなんかも扱っていた。

昴はコーヒーとハムエッグ、ココは家で朝食を食べてきていたので紅茶だけを注文し、メニューとにらめっこしていたタマモは、ベジタブル&ミートサンドウィッチレジェンドメガトンサイズを頼んだ。

 昴とココの注文したものはいたって普通なものであったがタマモの料理が来ると三人は目を丸くした。形はサンドウィッチというよりはハンバーガーに近いものだったのだが、驚くべきはそのサイズ。なんとタマモの顔三つ分くらいの大きさであった。昴はそれを見ただけで胸やけを起こしそうであったが、タマモは嬉しそうにかぶりつき、特に問題なく完食していた。流石の二人もタマモの食べっぷりに顔を引き攣らせていた。


 朝食を終えた三人は商店街へと足を伸ばす。


「それで買い物って何を買いたいの?」


「そうだな…」


 昴が”アイテムボックス”の中を確認する。フランとの買い物で二人分の食器や寝袋など、冒険に必要最低限なものは揃っていた。


「どれくらい野宿するかわからないから食料をたくさんと、あとは服かなぁ…」


「服、ねぇ…スバルはともかくとしてタマモは…」


 ココはタマモの服装に目を向けた。タマモはいつも通り巫女衣装を着ており、今日は白衣に橙色の袴を履いていた。


「この服はかなり古いデザインだからねぇ…タマモはこの服がいいんでしょ?」


「うむ!この服が一番動きやすくてしっくりくるのじゃ!」


「確かガンドラでは古着屋さんで買ったんだっけか?」


「あー…確かに古着屋さんなら売っているかもね」


 ココが納得したようにうなずく。


「後はあれだ。洗濯するための洗剤とか欲しいかな」


 今までは泊まった宿に洗い物を渡すと、次の日に洗濯をして返してくれていたので困らなかったが、これから『龍神の谷』に向かうということで、何日かかるかわからないため、それに備えて洗濯できる環境を整えておきたかった。


「センザイってのはわからないけど、洗濯なら服の汚れを落とす魔道具が売ってるよ。冒険者はみんなそれを使ってる」


「へー…じゃあそれが欲しいかな」


「オッケー!まずは二人の服を見に行こうか!」


「のじゃ!」


 タマモもやはり女の子、服を買いに行けるのが嬉しいのか、意気揚々と先頭に立って歩き始めた。



 ココが二人を連れてきたのは冒険者が多く使う服屋。そこで売られている服はデザイン性よりも機能性を重視したものになっており、並んでいる服はどれもこれも動きやすそうな形状をしていた。

 昴は適当に服を見繕う。基本的にはマルカットからもらった’ブラックウルフ’のコートを羽織っているので、その下に着るシャツやズボンを数枚購入した。

 自分の買い物が終わった昴は二人の方に目を向ける。そこには着せ替え人形になっているタマモと、目を輝かせながら服をとっかえひっかえしているココの姿があった。巻き込まれると面倒くさそうだ、と判断した昴は少し離れたところでその光景を見ていた。


 結局タマモはこの店で下着しか買わなかった。


「結構似合ってたと思うんだけどなぁ…」


 ココが不服そうな顔で独りごちる。


「ぬう…動きやすい服ではあったのじゃが、なんとなく落ち着かなくてのぅ…」


 せっかく色々服を選んでくれたのに一つも買わなかったタマモは申し訳なさそうな顔をした。それを見たココが慌ててタマモを慰める。


「そんな顔しないでよ、タマモ!誰にでも着やすい服ってのがあるからさ!さっ古着屋へ行こう!」


 その言葉で気を取り直したタマモとココが二人でどんどん先へ進んでいく。(荷物持ち)は無言でその後ろをついて行った。


 古着屋に着くとタマモがいつも着ている巫女服に似た服がたくさん並んでいた。タマモは嬉しそうにそれらを手に取り、身体にあてる。ココが難しい顔をしながら「こっちの方がいいんじゃない?」などと声をかけているが、正直昴にとっては色が違うだけで全部同じに見えた。

 あれこれ悩んだ末、タマモは上に着る白衣を五枚と赤い袴を三着、そして元の世界であれば禁色とされている黄丹のものを二着選んだ。それに加え、ココが「どこに行くかは知らないけど、ここより北は寒くなるから」と指摘してくれたので、毛皮のコートも併せて購入した。


「さて後は…」


「洗濯するための魔道具と食料だね。それは同じ店で買えるよ!」


「まったく違うものなのにか?」


「っていうか種類を選ばなければ買い物はある店に行けば事足りるんだ」


 ココ曰く、その店にはいろんな種類の物が揃っており品質もいいということだった。ココの話を聞きながら、昴はなんとなく百貨店を想像した。


「はい!ここがそのお店だよ!《冒険者万所(ぼうけんしゃよろずどころ)》!」


 ココが手を向けた先には他の店に比べ、数段大きな建物があった。看板には〔欲しい商品がすべて手に入る夢のお店!!冒険者万所(ぼうけんしゃよろずどころ)ルクセント支店〕と書かれている。それを見て手広くやっているな、と昴はおもわず苦笑いを浮かべた。


「あれ?その反応もしかしてこの店知ってる?」


「ルクセントのこの店に来たのは初めてだけどな。ガンドラの街に本店があってそこで買い物をしたことならある」


「マルカットのお店じゃな」


「そうなの!?本店はガンドラだったのか…せっかくここを見せて驚かそうと思ったのに」


「まぁここなら安心して買い物ができるな」


 昴達が全然驚かなかったことに落胆しているココを無視して昴は中へと入った。



 店内はかなりの人で賑わっていた。魔道具売り場に行くと、珍しいものがたくさん置いてあり、タマモは楽しそうに色んな魔道具を試している。目的の魔道具〔洗濯くん〕を見つけ、それを右手に持っている籠に入れ、左にタマモを抱え、ついでにその辺りに売られていた魔力ポーションを何本か突っ込み、次は食料品売り場へと足を運んだ。


「なんかお母さんみたいだね」


 昴の姿を見たココがからかうような口調で言う。昴は軽くため息を吐いた。


「こんな手のかかる子供は勘弁だな」


「なぬっ!?子ども扱いするなー!!」


 タマモが抗議をするように足をじたばたさせるが、昴はそれを無視して持って行く食料を選ぶ。”アイテムボックス”に入れておけば腐ることはないので、肉と野菜は多めに二週間分、それに水を樽で五本購入した。最後まで肉が少ない、とごねていたタマモを引きずりながら、冒険者万所(ぼうけんしゃよろずどころ)から出ていった。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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