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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『龍神の谷』に住まうもの
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14.弁償

 ルクセントの町に戻ってきた昴達は冒険者ギルドに向かう。護衛の依頼は依頼人が直接冒険者ギルドに赴き、依頼を達成したことを報告しなければならないらしく、ココも昴達についてきた。

 冒険者ギルドに入ると、いち早くサガラが昴達に気がつく。


「おかえりなさい、スバルさん、タマモさん。おかえりなさいませ、ココ様」


 昴とタマモには会釈をし、ココには恭しく頭を下げた。昴は軽く手を挙げ、タマモは元気よく「戻ってきたのじゃ!!」と答える。


「サガラ、対応が硬いよ?」


 不満そうな表情を浮かべるココにサガラが業務用の笑顔を向ける。


「今日は冒険者ココではなく、依頼人のココ・エルシャール様なのでこのような対応になります」


「はぁ…ギルドっていうのは本当に…まぁ、いいや。依頼達成の報告に来たよ!」


「護衛の件ですね。かしこまりました。スバルさん、タマモさん、冒険者カードを出していただいてもいいですか?」


 昴とタマモはそれぞれ自身の冒険者カードをサガラに手渡した。サガラはてきぱきとそれに達成の記録をしていく。


「あー…サガラに聞きたいことがあんだけど…」


「なんでしょうか?」


 サガラは作業をしながら、遠慮がちに声をかけた昴の方へ顔を向ける。


「このギルドって魔物の素材の引き取りはどんな魔物でも行ってる感じ?」


「えぇ。このあたりに生息する魔物であれば滞りなく。受付カウンターの裏にあります素材カウンターで引き取ることができますよ」


 サガラが少し身を乗り出し、昴の足元を覗き込む。そこに魔物の姿はなく、不思議そうな顔をすると、昴の冒険者カードに書いてあった情報を思い出した。


「そういえばスバルさんは”アイテムボックス”のスキル持ちでしたね。魔物もその中に?」


「あぁ…そうなるんだけど…」


 頬をぽりぽりと掻きながら歯切れの悪い様子の昴に、サガラは嫌な予感を感じる。冒険者カードの処理が終わり、それを二人に返しながら冷静に尋ねた。


「…ちなみになんの魔物ですか?」


「えーっと…」


「’ドラゴン’じゃ!」


 昴が何か言う前にタマモが間髪入れずに答えた。その瞬間、サガラの笑顔が凍りつく。


「タマモさん、今なんと?」


 聞き間違いであってほしい、という思いを胸に平静を装いながらタマモに尋ねる。


「あっ、違ったのじゃ」


「ち、違うんですね!驚かせないでくだ」


「’ストームドラゴン’じゃ!」


 タマモに顔を向けた状態で固まったサガラは、ギギギッと油が足りない機械のように首を動かし昴とココを見る。昴は微妙そうな顔を浮かべながら、ココはニコニコと笑いながら、二人とも頷いた。


「………少々お待ちください」


 能面のような表情で席を立つと、サガラはそのまま裏へとはけていった。


「…なんか悪いこと言ったかの?」


 サガラの様子がおかしかったのは自分のせいなのか、とタマモは不安そうな顔で昴を見るが、答えることはできない。


「まぁ、でもサガラに聞いたのはいい判断だと思うよ。いきなりアレを出したら普通の人なら卒倒するだろうね」


「なんとなくそんな気はしていたが、やっぱりアイツはそういう扱いなのね…」


 横で昴達の話を聞いていた受付嬢の方をちらりと見ると、まだサガラのような昴達の耐性がないのか、目を見開いたまま固まっていた。また悪目立ちしちまったか、と昴はがっくり肩を落とす。

 

 そうこうしているうちにサガラが戻って来た。


「皆様、ギルド長がお呼びなので一緒に来ていただいてもよろしいですか?」


 笑顔で告げるサガラからなんともいえない威圧感が漂っており、三人は黙って頷くほかなかった。サガラの後について酒場を歩く昴とタマモを見て、何人かの冒険者が腰を抜かしていたが昴は無視する。そのまま奥にある訓練場への扉をくぐると、人払いがされているのかギルド長のランキス以外誰もいなかった。ランキスは訓練場の中央で腕を組み、不機嫌そうに仁王立ちしている。そこまで昴達が移動すると、ランキスは一人一人睨みつけてくる。


「それで?ぶっ倒した’ストームドラゴン’はどこにいやがる?俺は忙しいんだからデマだったり、間違ってたりしたらただじゃおか…」


 ランキスの言葉は昴が”アイテムボックス”から取り出したものにより遮られた。その姿を見たサガラはヒッと小さく叫び声をあげ、思わず距離をとる。ランキスも余りの驚きに口をあんぐりさせた。訓練場に横たわるのは緑の鱗が光り輝く、まぎれもない’ストームドラゴン’であった。


「呆れた…本当にお前、一体なにもんだ?」


 我を取り戻したランキスが発した第一声がそれだった。サガラは口に手を添えたままブルブルと震え、まだ話すことはできなさそうである。


「なにもんって言われても、ただの冒険者としか」


「お前みたいな冒険者がいるかっつーの!」


 呆れたように言うランキスの言葉に、ココが激しく頷いた。


「たくっ…総ギルド長(クソジジイ)も厄介なやつよこしやがって…」


「おい、本音が漏れてんぞ」


 ランキスが右手で頭をガシガシと乱暴に掻きむしった。


「とにかく、だ。こいつを引き取ることはできるが、金はすぐには用意はできん。かなりの額になる上、急遽痛い出費が出てうちは火の車だからな」


「痛い出費って俺らの?」


「ん?あぁ、いや、あれだ、気にすんな」


 ランキスは自分の失言に気づいて顔を顰めた。


「…’ストームドラゴン’の買値はどれくらいになる?」


「んー…専門家じゃねぇから詳しくはわからないけど、使える素材とコア含めて2000ガルは下らねぇだろうな」


「それで俺らが暴れたせいでかかった費用は?」


「なっ!?お前、気にすんなって…」


「いいから」


 有無を言わさぬ口調で昴が問いかける。


「…壊れた椅子や机の買い替えに300ガル、それに床や天井の修復に1000ガル、ダメになった食料や酒の弁償に300ガル、後は治療費として教会に500ガル、だったか」


「締めて2100ガルか…ならちょっと足らねーけど、この’ストームドラゴン’を謝罪の印として受け取ってくれ」


「「「はぁ?」」」


 ランキスにサガラ、おまけにココまで素っ頓狂な声を上げる。昴は三人を無視してタマモに視線を向けた。


「それでいいか?」


 タマモは驚きもせず、さも当然とばかりに頷いた。


「のじゃ!うちらの責任なんじゃから弁償するのは当たり前なのじゃ!」


「弁償って…お前らのせいじゃねぇだろうが!?」


「冒険者ギルドが壊れたのは明らかに俺らのせいだろ。ぶっ飛ばした冒険者達はどうでもいいが、迷惑かけた冒険者ギルドには悪いと思っているからな」


「いや、そうは言ってもよぉ…」


「それに俺たちには目的地があるからな。金ができるまでこの町に滞在しているわけにはいかねーんだ」


 昴の言葉を聞いても納得のいかないようにうーん、と唸るランキスにココが笑って声をかけた。


「ランキスギルド長。スバルは一度決めたらおそらく意見は変えません。ここは諦めてもらうしかないですよ」


「…こいつをうちが貰っちまったら、スバル達の取り分がなくなるだろうが」


「俺らの依頼は護衛だったから、その報酬はそこにいるココから貰えるはずだ。それで十分だよ」


「ふふっ。ちゃんと特別な報酬をあげるから期待しててね」


「特別な報酬!?なんかすごそうなのじゃ!!」


 ウインクするココの言葉を聞いてタマモが目を輝かせる。


「まーそう言うことだから、後のことはよろしく」


 昴はタマモとココを引き連れて訓練場に出て行く。後に残るのは呆然と立ち尽くしているサガラ、やれやれと肩をすくめるランキス、そして命を失いながらも圧倒的な存在感を放つ’ストームドラゴン’だけだった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


「それにしても’ストームドラゴン’を丸々譲っちゃうなんて…スバルも大胆なことするね」


 冒険者ギルドを出たところで、ココが感心したような呆れたような調子で昴に言った。


「ギルドを壊したまま知らん顔ってのはなんか後味悪かったからな」


「ふふふっ。スバルらしいね!」


「その分ココからの報酬には期待しとくかな」


「失望させないように善処するよ!報酬は明日引き渡しでもいい?」


「あぁ。ギルドに来ればいいのか?」


「うーん…できれば家に来てくれると嬉しいかな?」


「家に?」


 昴が聞き返すとココは住宅街の方を指差す。その一番奥に少し小高い丘があり、その上に一際大きい屋敷が立っていた。


「はー…流石は貴族」


「遠目からでも大きいのがわかるのじゃ!」


「多分迷うことはないと思うから!それじゃ、明日の朝僕のうちで!」


「おう」


「また明日なのじゃ!」


 ココはニッコリと笑うと家に向かって早足で歩き始めた。その背中をなにも言わずに見つめる二人。


「…どうするのじゃ?」


 不意に口を開くタマモ。


「どうするって?」


 なんとなく言いたいことはわかっているが昴はあえて聞き返した。


「’ゴールデンコンガ’を前にしたココは普通じゃなかったのじゃ。スバルも気づいておったのじゃろう?」


「あぁ」


「やつを討伐しただけで終わりならいいのじゃが…なんとなく心がざわつくのじゃ」


「んー…」


 ’ゴールデンコンガ’のコアを抱きしめていたココを思い出す。譲って貰えるとわかった時、ココは目に涙をためて喜んだ。それだけの事情があったのだ。昴ははぁ…と大きくため息をつく。


「しょうがねぇなぁ…」


「ぬっ?関わるのか?」


「様子を見るだけだ」


 ぶっきらぼうに答える昴を見てタマモが嬉しそうに笑う。


「正直貴族のやつになんか関わりたくねーんだけど…」


 タマモの身を案じたココ、自分をそっちのけで昴を癒したココ。


「あいつが悲しむ方が面倒くせーからな」


 そう言うと、昴はココの屋敷に目を向けた。


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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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