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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『龍神の谷』に住まうもの
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7.コンガ

 外出の手続きをし、問題なくルクセントを出た昴達はココが行っていたとおり街道を進んでいた。道中ちらちらとタマモがこちらを見てくるのを無視していたが、流石に耐え切れなくなり声をかける。


「どうした?」


 タマモが慌てて視線をそらすも時既に遅し、昴の方へおずおずと顔を向けると遠慮がちな声で尋ねた。


「…よかったのか?」


「なにが?」


「ココのことじゃ。何も聞かずに断ってよかったのか?」


「理由を聞いたりしたら断りにくくなるかもしれねーからな。聞く前に関わらない、これが一番だ」


 にべもなく告げる昴にタマモは微妙な表情を浮かべる。


「でも…ココは悪いやつじゃなさそうだったのじゃ」


「それはなんとなく俺にもわかったけど」


「ココは笑っていたがの…あれは本気で困っておったと思うのじゃ」


「本気で困っていた?」


 昴が意外そうな顔で見ると、タマモはこくりと頷いた。


「なぜかわからんがそんな気がするのじゃ」


 タマモは耳をしょんぼりさせながら言った。少なくとも昴にはそうは見えなかったが、おそらくタマモの【第六感】がそう告げているのであろう。


「さっきも言ったが俺は積極的に関わるつもりはない」


 昴がきっぱりと言い切ると、タマモ残念そうに俯いた。


「…だけど、もし困っているところを見かけてしまったら、助けざるを得ないだろうな」


「スバルッ!!」


 タマモの尻尾と耳がピンッと立たせて昴を見た。昴は照れ臭そうに鼻をかきながら顔をそらした。


「そんなことよりも今は依頼に集中だ。ほら、森が見えてきたぞ」


「任せるのじゃ!うちが全部やっつけてやるのじゃ!!」


 一目散に森の方へ駆けていくタマモを見ながら昴は苦笑いを浮かべた。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 ‘コンガ’が出るという森に着いた昴は早速【気配探知】を発動し、周囲三キロメートルの魔物の気配を探る。いくつかの気配の中に十五匹ほど固まって行動する集団を見つけた。


「'コンガ’は群れるって言ってたな…多分やつらだ」


「見つけたのか?」


「あぁ、こっちだ」


 昴が木の上に飛び上がると、【身体強化】を発動したタマモがそれに続く。ある程度進んだところで手でタマモを制すると、気配を消すように指示を与えた。そこからは慎重に移動していき、目標を確認できる場所で身を潜め、様子を伺う。

 ココの言う通り、茶色い毛で覆われており、足に比べて腕が五倍ほど太い。体長は二メートルに満たないほどだが、その腕のせいでもっと大きく見える。目視できるのは十体、残りの五体は近くにいるのを感じるが姿は見えなかった。

 昴がちらりとタマモの方を見ると、必死に自分を指差していた。


「…いけるか?火属性魔法は森じゃあまり使えないぞ?」


「近接だけで余裕なのじゃ」


 互いにコソコソと声を潜め確認を行う。昴は気配を探った時に'コンガ'の実力をなんとなく把握していたので、タマモ一人でいけると判断した。


「ならいってこい。援護はする」


 昴の言葉に嬉しそうに頷くと、タマモは勢いよくその場から飛び出す。そのまま【無詠唱】で炎の爪を両手に作り、いきなり襲ってきた相手にまったく対応できていない'コンガ'二体を瞬く間に切り裂いた。

 隙だらけの相手を仕留め損なうような腕はしていないタマモは、倒れた相手には目もくれず、次の'コンガ'に飛びかかり、炎の爪を突き立てた。'コンガ'達も一瞬で三体もの仲間がやられ、ここで初めて自分達が敵に襲われていることを悟る。威嚇をするように強靭な腕で地面を叩くが、タマモは無視して移動し、すれ違いざまに二体の'コンガ'を葬りさった。

 後ろに回った'コンガ'がタマモめがけて振り下ろした腕がジャンプで躱され、地面に大きな亀裂が走る。タマモは空中でクルクルと回転し、勢いを付けると、腕を振り下ろした相手の脳天にかかと落としをお見舞いした。それを食らった'コンガ'は泡を吹きながら倒れ、ピクリとも動かなくなる。


「なんじゃ、歯ごたえのない奴らじゃの」


 危険な相手と判断し、タマモから距離をとった'コンガ'達を見て、タマモがつまらなそうに言い放った。

 目の前にいるのは'コンガ'四体。ジリジリと後ずさっていく獲物を見て、獰猛な笑みを浮かべながらどう料理しようか考えていると、タマモの【第六感】が発動する。咄嗟にその場で跳び上がり下を見ると、後ろの茂みに潜んでいた'コンガ'二体が飛び出し、今までタマモがいた場所に自慢の腕を叩きつけているのが目に入った。


「その程度のスピードではうちに奇襲は通じんのう!」


 降り際に炎爪を振り下ろし、奇襲を仕掛けてきた'コンガ'の首を落とす。木の上に隠れていた三体の'コンガ'がタマモの着地を狙って飛び降りてきた。先程の奇襲をジャンプで避けた時に、視界の端でその'コンガ'達を捉えていたタマモは地面に着くと同時に思いっきり地面を蹴り、後ろに飛んだ。一瞬のうちに拳を振り下ろす標的を見失った三体の'コンガ'は腕を振り上げたまま着地する。お返しとばかりに'コンガ'達の着地を狙っていたタマモは手前の二体に炎の爪を突き刺し、もう一体めがけて飛び上がった。


「くらうのじゃぁぁぁ!!」


 タマモの右膝が'コンガ'の顔面にクリーンヒットした。その瞬間【無詠唱】で魔法を唱える。タマモの膝が触れているところから'コンガ'の顔が炎上し、そのまま地面に倒れた。

 次々とやられていく仲間達を見て残っている'コンガ'の顔に恐怖の色が浮かんでいく。


「さて、と…次はどいつじゃ?」


 目の前で嬉々として戦っている敵に自分達は敵わない、そう理解した'コンガ'達の行動は早かった。四体が四体、別々の方向へと逃げ始める。


「あっ、ちょっ、こら!逃げるな!」


 当然向かってくるだろうと思っていた相手が一目散に逃げていく様を見て面食らうタマモ。慌てて後を追いかけようとしたタマモの後ろから四羽の"飛燕(ひえん)"が翔び立ち、逃げた'コンガ'を一匹残らず仕留めた。

 タマモが慌てて振り返ると、そこには'鴉'を構えた昴が立っていた。


「最後逃げられてしまったのじゃ」


「詰めが甘いな。相手が逃げ出すことも考えておかないと」


「うむ…反省点なのじゃ」


 タマモはしょんぼりと耳を垂らした。そんなタマモを元気づけるように昴は優しくタマモの頭を撫でた。


「でも戦い方は良かったぞ。奇襲にも対応できてたし、ちゃんと周りが見えていたな」


「えへへ…そうかの?」


 嬉しそうに尻尾をフリフリさせるタマモを見て、単純なやつだ、と苦笑いを浮かべる。


「じゃあ討伐の証拠として魔物のコアを取り出していくぞ」


「ほーい!他の素材はどうするのじゃ?」


 昴は'コンガ'の亡骸を見回し、首を横に振った。


「"アイテムボックス"に入れてってもここの解体屋がどんなやつかわからんからな…今回はコアだけ持って行こう」


 昴はコアを回収しながらガンドラの冒険者ギルドにいた解体屋のガンテツを思い出していた。


(ガンテツのおやっさんがいたからガンドラでは好き勝手素材を持って行ってたけど…受付を見る限りルクセントの解体屋には期待できそうにねーな)


 全員分のコアを回収すると、二人はルクセントの町へ戻るため、森を後にした。


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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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