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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『龍神の谷』に住まうもの
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1.プロローグ

 サリーナ地方には二つの大きな山脈が存在する。


 一つはアルコラム山脈。サリーナ地方を東西に分断するがごとく山々が連なるこの山脈の特徴は緑が多い肥沃な大地であること。一つ一つの山が『炎の山』よりも大きく、それでいて『恵みの森』に匹敵するほどに鬱蒼と木々が生い茂っている。サリーナ地方の町や村はこの山脈の麓にあることがほとんどであり、その山がもたらす恩恵は計り知れない。サリーナ地方の人々はこの山脈を『施しの地』と呼ぶ。


 もう一つはマレー山脈。アルコラム山脈と同等の規模の山が集まる山脈であり、そこよりも昴達がいるパンドラ地方から離れた東側に位置していた。アルコラム山脈とは奇麗に平行になっており、山脈の長さもおおよそ同程度。ほとんど大差がないと思われる二つの山脈であったが大きな違いが一つあった。それはマレー山脈には動植物がほとんどない枯れた土地であることであった。麓の方はまだ木があるのだが、少しでも登ればそこにあるのは土と岩。魔物ですら近づかないこの山脈をサリーナ地方の人々は『裁きの地』と呼ぶ。


 『施しの地』と『裁きの地』、似ているようで相反する二つの山脈に守られるように存在する渓谷がある。


 サマリン渓谷、通称『龍神の谷』。


 亜人族の中でも希少種である竜人種が住まう土地。圧倒的な戦闘力を持ちながらも他種族との交流を意図的に避け、俗世から身を隠した者達。彼らは竜人種のみで集落を形成し、生活を営んでいる。


 竜人種がこの地を離れない理由は三つ。


 一つ目の理由が他の町から容易く来ることができないこの地形が彼らにとって都合がいいこと。竜人種の力は非常に強力である。基本的な身体能力であれば魔族や他の亜人族を凌駕する。それゆえに彼らは数多くの戦いに巻き込まれてきた。自分達の地を脅かそうとした輩に対して積極的に戦闘を行った時もあるが、ほとんどが頼られたり、利用されたりして戦いに赴くといったものであった。そういったことに嫌気がさした彼らにとって、他種族と切り離されたこの地は願ってもない場所であった。


 二つ目が彼らが歴史や格式を重んじる種族であること。全ての生きとし生ける者には平等に死が訪れる。強靭な身体を持つ彼らにとってもそれは変わらない。外の世界に興味がない竜人種はほとんどの者がこの地に生まれ、そして死んでゆく。そのためこの地には先祖の魂が眠ると考えられており、それをないがしろにすることは彼らの矜持が許さなかった。竜人種の歴史は長い。それが詰まったこの地を彼らが捨てることはおそらくないだろう。


 そして最後にして最大の理由。この地が『竜人の谷』ではなく『龍神の谷』と呼ばれるその所以。

竜人種の集落からちょうど東に、マレー山脈の中では比較的小さな山がある。その山の形は特殊であり、エアーズロックのようなプリン型をしていた。その山頂、といっても平らな荒れ地が広がっており、草一本生えていない場所なのだが、そこには大きな岩の洞窟があった。人工的に作られたものなのか、はたまた自然にできたものなのかわからないが、アレクサンドリア城すらも飲み込むほどに大きなその洞窟の中に奴はいた。


 今はその巨体を丸めて眠っている。しかし近いうちに目を覚ますであろう。そのときに竜人種がいなければサリーナ地方に血の雨が降ることになる。


 竜人種は奴を恐れ、そして監視をしている。彼らによってサリーナ地方が守られているという事実を知る者はいない。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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