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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『炎の山』と狐人種の少女
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42.エピローグ2

 次に昴達が足を運んだのは冒険者ギルド。その途中にある《ハウンドドッグ》にも足を運んだのだが、「湿っぽいのは好かん!」とダンクに言われ、酒をたくさん出されただけだった。断ることもできず、出されたお酒を飲むと「また来いよ」と声をかけられ、昴とタマモはお礼を言いつつ《ハウンドドッグ》を後にした。


 冒険者ギルドに入ると以前よりもましになったとはいえ、かなりの注目を集めた。なんとなく居づらさを覚えながらもパルムのもとまで行く。


「よぉ、パルム」


「よっなのじゃ」


「これはこれはタマモさんとスバ…’ジョーカー’様」


「その呼び方はやめてくれ」


 慌てて言い直したパルムに昴は苦笑いを浮かべる。


「そういうわけにはいきません。ランクAの冒険者の方に軽口を叩くなど、ギルドの受付嬢としてありえないことです」


「そのランクAの俺がいいって言ってるんだ。それでも変えないっていう方が不敬に当たらないか?」


 昴がニヤリと笑いかけると、パルムは困った顔をした。


「そう言われましても…」


「パルムがその態度をとるっていうなら他の受付嬢にしてもらおっかな」


 もちろん昴にそんな気はない。パルムは昴が新人の時からよくしてくれた気が置けない相手なのだ。しかしそんなこととは露知らず、昴の発言を周りの受付嬢が急にそわそわし始めた。


「わ、わかりましたわかりました!!前みたいに話すんで!!」


 この冒険者ギルドには昴を狙う者達(スバルファン)が犇めいていることを知っているパルムが慌てて答えると昴は満足そうに頷いた。


「それで、今日はどのような用事ですか?」


「うーん、用事っていうかお礼を言いにね」


「えっ?」


 パルムは昴の言っていることの意味が分からず、目を丸くした。


「このガンドラの街を離れようと思っているからさ。いままでよくしてもらったパルムに感謝がしたくて」


「それは…また突然ですね」


 あまりのことに言葉を失うパルム。周りで耳をそばだてていた受付嬢たちも失望の色をかくせない。


「まぁこの街は気に入っているからね。俺の用事が終わればまたここに戻ってこようとは思ってるから」


「そう、ですか…冒険者を足止めすることは受付嬢にはできませんので」


 いつもは元気に立っている猫耳があからさまに垂れていた。こんなに落ち込むとは思っていなかった昴は少し狼狽える。


「そんな落ち込むなって。つーか冒険者との別れなんてそんな珍しいことじゃ…」


「相手がスバルさんだからです!!」


 急に大声を出したパルムに昴もタマモもびっくりしたが、一番驚いていたのはパルム自身であった。


「す、すいません」


「いや別にいいけど…どうした?」


 パルムが顔を俯かせる。


「わたしが受付嬢になってスバルさんみたいな方は初めてだったんです。女だと思ってバカにするか、色目を使ってくるか、そんな人たちばかりだったので、友人のように接してくれるスバルさんが嬉しくて…」


 パルムは意を決したように顔を上げる。その顔にはいつものような明るい笑顔があった。


「寂しいですけど、また会えますよね!冒険者との別れを惜しむなんて受付嬢失格です!」


「…さっきはあんなこと言ったけど、俺はこの冒険者ギルドでパルム以外に受付嬢をやってもらうつもりはないから」


「え…?」


「だから俺が戻ってくるまでクビになるんじゃねーぞ?」


 昴が笑いかけるとパルムは顔を赤らめて視線をそらした。


「…ずるいです」


「ん?」


「なんでもありません!このパルム、看板受付嬢なんですから首になんてなりっこないですよ!!」


 ぐっ!拳を前に出すパルムを見て昴は苦笑する。


「じゃあそういうことだから…」


「なんだ。儂に挨拶なしで行くのか?」


 後ろから声をかけられ、昴の顔が引きつる。慌てて振り返ると嫌らしい笑みを浮かべたサガットが立っていた。


「げっ!(じじい)!!」


「おぉサガ(じい)!!」


 昴は嫌そうに、タマモは嬉しそうに言った。冒険者としての依頼を受けてなかったとはいえ、サガットに逐一タマモの様子を報告するようにと言われていた昴はタマモを連れてサガットの部屋を訪れていた。その度にお菓子をくれるサガットにいつの間にかタマモは懐いていた。


「‘ジョーカー’よ。ランクAともなればそのギルドの長に挨拶をするのは当然のことだぞ?」


「あいにく俺は普通じゃないんでね。まーここ以外のギルド長には挨拶するつもりだから」


「相変わらず小憎たらしいやつだ」


「のうのうサガ(じい)!」


 タマモが目をキラキラさせながらサガットの裾を引っ張る。


「ん?おぉそうだったそうだった!ほれタマモ」


 サガットは懐からクッキーの入った袋を取り出すとタマモに渡した。タマモはうはーっと興奮しながらその袋を受け取り、お礼を言う。


「…うちの子を甘やかさないで欲しいんですけどねぇ」


「お前さんと違ってタマモは素直ないい子だからつい甘くなってしまうんだよ」


 昴はさいですか、と肩を竦める。サガットが孫を見るおじいちゃんのような顔でタマモを見ていたが、昴に顔を向けると急に真顔になった。


「一応お前さんのことはそれとなくあっちのギルド長に伝えておいた。えらく興味を持ったようだぞ?」


「…冒険者ギルドは耳が早いことで」


「ギルド長専用の魔道具があってな…まぁそんなことはどうでもいい」


 サガットは咳ばらいを一つ挟む。


「今回の異常な魔物大暴走(スタンピード)に関して、ギルド側はまだ原因を判明できておらん。こちらが全力で捜査をしているにもかかわらず、だ」


 サガットの言葉を受け、昴は眉を顰める。


「それだけ周到に行われた可能性がある。相手がどのような輩なのかも見当が付かない。注意するに越したことはないだろう」


「わーってるよ」


「何かあれば冒険者ギルドを頼れ。ルクセントの冒険者ギルド長は義に熱い、信用できるであろう…血の気が多いのが玉に瑕だが」


「あいよ…あんま感謝したくねーけどサンキューな」


 昴がしぶしぶそう言うと、サガットはにんまりと笑った。


「殊勝で結構。いつもそれぐらい素直であれば言うことないんだが」


「悪かったな!」


 夢中でクッキーを頬張っているタマモに合図をする。最後にパルムとサガットに一声かけた。


「パルム、本当にありがとな。また来るからそん時もよろしく!(じじい)も…まぁ世話になったよ」


「わたしの方こそいろいろありがとうございました!!看板受付嬢パルムはいつまでも’ジョーカー’ことスバルさんをお待ちしております!」


 パルムが深々とお辞儀をする。サガットは何も言わなかった。昴はそのまま冒険者ギルドの出口に向かって歩いていく。


「スバル」


 不意にサガットが昴の名前を呼ぶ。昴は振り返りはしないがその足を止めた。


「死ぬなよ」


 思いがけないサガットの言葉に内心驚いていたが、昴はゆっくりと振り返るとサガットににやりと笑いかけた。


「死なねーよ」


 それだけ言うとタマモを引き連れて冒険者ギルドから出ていった。


「いつまでもお待ちしております、か…なかなか大胆な告白だな」


「な、な、何言ってるんですか!べ、別にそんな深い意味はないですよ!」


 からかうような笑みを向けるサガットにパルムは顔を真っ赤にさせながら反論した。


「はっはっはっ、そう照れることもあるまい。まぁあの朴念仁には伝わらなかったみたいだがな。まったく、若いとはいいことだ」


 笑いながら去っていくサガットを見るパルムの顔はまだ赤かった。


「まったく…ギルド長の悪ふざけにも困ったもんですねぇ…」


「せんぱぁい?」


 パルムは怨念のこもった声に思わずビクッとする。恐る恐る振り向いた先には例の三馬鹿、もとい以前昴を女子会に誘った受付嬢の後輩たちが睨んでいた。


「な、なんでしょうか?」


「抜け駆けはずるいですよ!」


「そうですよ!」


「ずるいずるい!」


 三人とも一様に不満な顔をしている。


「ぬ、抜け駆けなんてしてません!大体ギルド長にも言いましたけどさっきのはそういうことではありません」


「じゃああれはなんですか?」


 後輩の指さした方を見ると、そこには悔しそうに床をどんどんと叩いている冒険者が何人かいた。口々に「俺のパルムさんがぁぁぁ」と嘆いている。見なかったことにしよう。


「とにかく!あなたたちは仕事に戻りなさい!そんなくだらないことでいちいち席を外さない!」


「「「はぁーい…」」」


 納得のいかない表情を浮かべながら自分たちの席に戻っていった、と思いきや後ろでなにやらこしょこしょと話し始めた。


「それにしても去り際のスバル様見た!?」


「「見た!!」」


「『死なねーよ』にやり、ですって!!かっこよすぎる!!」


「あんな顔で言われたらあたし死んじゃう…」


「「あたしも!!」」


 パルムは三馬鹿の頭に無言で冒険者名簿を叩きつける。三人が振り返ると般若の形相で仁王立ちするパルムの姿があった。三人は謝ると慌てて自分たちの席に戻っていった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 最後に昴達が向かったのはマルカットの屋敷。あの騒動があった後もタマモは何度か遊びに行っていたようだったが、昴が来たのは久しぶりであった。


 屋敷の入り口で門番のモックとメイドのミトリアが話しているのを見つけ、昴は声をかけた。


「こんちわ」


「あら、スバル様とタマモさん。ようこそいらっしゃいました」


「お、スバルさん。久しぶりに来ましたね!タマモさんは昨日ぶりかな?」


「のじゃ!皆に会いに来たのじゃ!」


 二人とも笑顔で答える。ただミトリアの目はタマモにくぎ付けであった。


「スコットとデルはいるかの?」


「あぁ、あいつらなら庭で稽古してますよ!」


「ほほう!それは楽しそうじゃの!」


 タマモはモックに連れられ庭へと向かっていった。その後ろ姿をミトリアが残念そうな面持ちで見つめる。


「挨拶に来たんだけど、マルカットさんいる?」


「あいにく旦那様は所用で、グランを引き連れてお出かけになりました」


「そっか…この街で一番お世話になっているから挨拶しときたかったんだけどな…」


「確か今日ですもんね…船出…」


 ミトリアが暗い表情を浮かべ肩を落とした。


「ミトリアさんとタマモを引き離すことになっちゃうな」


「タマモさんもですけど…スバル様もこの街にいていただきたかった」


「俺?」


 思いがけないミトリアの言葉に昴が目を丸くする。


「はい…スバル様と出会ってから旦那様が活き活きとするようになりました。食事の時もよくスバル様の話をしていましたし…とても気に入っていらっしゃるご様子だったので」


「マルカットさんが…」


 そう言われると昴は少し寂しい気持ちになった。


「でも、旦那様はおっしゃっていました。彼はまたいずれここに戻ってくるから寂しいことはない、と」


 ミトリアが居住まいを正す。


「スバル様…一メイドが出過ぎた願いだとは思いますが、何卒また街にいらしてください。その時は精一杯ご奉仕させていただきますので」


 ミトリアは深々と頭を下げた。いつもしている機械的なものではなく、自分の感情をお辞儀に乗せたものだった。


「ミトリアさん…」


 昴はそっとミトリアの肩に手を添える。顔を上げたミトリアの表情は不安そうであった。


「大丈夫、またくるよ。ミトリアさんのいれたお茶は格別だからね。それを飲みにタマモと絶対来るからさ」


 そんなミトリアに昴は笑いかける。一瞬呆気にとられた表情を浮かべたミトリアはすぐに微笑んだ。


「…スバル様は女性問題で苦労しそうですね」


「は?」


 ミトリアは楽しそうにクスクス笑うが昴には全く意味が分からなかった。


「おう!スバル!」


「スバルさん!」


 昴が首をかしげていると庭の方から昴を呼ぶ声が聞こえ、そちらに目を向けるとガタイのいい男と小柄な男が歩いてきた。


「スコットにデル!ひさしぶりだな」


 昴は手を挙げて応える。


「今日行っちまうんだってな?」


「寂しいっす!」


「そうなんだ…ってお前らいつの間に仲良くなってんだ?」


 スコットのたくましい腕にぶら下がるタマモを見て昴が呆れたような声を出した。


「ん?あぁ、タマモはここに遊びに来ては俺たちの訓練に付き合ってくれてな!」


「うちが稽古をつけてやったのじゃ!」


「タマモさん強いっす!」


 タマモは腕から回転しながら飛び、きれいに着地すると自信満々な表情で言った。ミトリアだけがタマモの曲芸に拍手を送る。


「こいつは愛嬌があるからな!モックともよく話してるよな?」


「えぇ。タマモさんは植物に興味があるらしくて、よく庭の手入れをしているときに話しますね」


「モックは物知りなのじゃ!いろいろ面白い話が聞けるのじゃ!」


「デルはよく打ちのめされてる」


「タマモさん手加減なしなんすよ?御者のあっしにはきついっす…」


 肩を落とすデルを見ながらスコットは豪快に笑った。


「まぁ…なんだ。お前達は家族みたいなもんだ!マルカットの旦那もきっとそう思ってる!だからなんかあったらいつでも会いに来な!」


 照れ隠しに鼻をこすりながらスコットが言った。それを聞いて皆も頷いている。


「そう言ってもらえると嬉しいよ。また必ず来るからそん時もよろしくな!」


「のじゃ!!絶対また来るからの!!」


 昴は軽く手を挙げて別れを告げた。タマモも元気よく手を振る。昴達はマルカットの屋敷の人たちに見送られながらその場を後にした。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 フランの母であるフローラと来たときは市をやっていたため、かなりの人でにぎわっていたが、今は依然と比べかなり落ち着いていた。昴は初めて見る船に興奮気味のタマモを宥めながら目当ての人物を探す。


「おーい!こっちだ!!」


 声のする方に目を向けると、色黒の男が昴達を手招いていた。


「わりぃ、待たせた」


「なーに、いいってことよ!!」


 予定よりも遅れた事を気にも留めずにノックスはニカッと白い歯を見せた。


「それで、こっちのちっこいのは?」


「ちっこいとは失礼だの。うちはタマモなのじゃ!よろしく!」


「おう!タマモかよろしくな!俺はノックスだ!!」


 ノックスはタマモの手を握るとぶんぶんと降った。あまりに豪快な握手にタマモの身体が宙に浮く。


「本当は俺一人のつもりだったけど急に連れができちまってな。問題なさそうか?」


「ちゃんと二人分の代金はいただいてるから大丈夫だよ!」


「…代金?俺まだ払ってないよな?」


 昴が訝しげな表情を浮かべる。


「あ?今さっき商人のお偉いさんが来てお前ら二人分の金払っていったぞ?なんでも先行投資だ、とか言って」


 昴は誰が自分たちの船代を払っていったのかを悟り、思わず息を()く。


(あの人は本当に…感謝してもし足りねーな)


 昴は心の中でマルカットに深く礼を言った。


「大丈夫か?」


「あぁ…大丈夫だ。まさかそこまでしてくれるとは思ってなかったからちょっと驚いただけだ」


「そうか…そういやそのお偉いさんから言伝預かってんだ」


「言伝?」


「あぁ。『土産話楽しみにしてます』だとよ」


 それを聞いた昴は思わず笑みを浮かべた。


「スバル?どうしたのじゃ?」


「いや…旅が終わったらマルカットさんにたくさん面白い話してやらねーとな」


「のじゃ!マルカットが驚くような話をいっぱいいっぱい見つけてくるのじゃ!!」


 タマモが期待に胸膨らませながら、これから起こるであろう自分が体験したことない出来事に思いをはせる。


「お二人さん、そろそろ出港するぞ!船に乗れ!」


「あぁ、わかった。…タマモ、準備はいいか?」


「準備万端なのじゃ!海の上を旅するなんて楽しみだの!」


 踊るような足取りでタマモが船に乗る込んだ。昴は一度振り返り、ガンドラの景色を目に焼き付けた。


「それじゃ…行くか!」


 期待と不安を胸に、まだ見ぬ新天地へと昴は一歩踏み出した。


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名:楠木 昴  年齢:17歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:515

筋力:4265

体力:3680

耐久:3701

魔力:4072

魔耐:3896

敏捷:4365

スキル:【鴉の呪い】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

※【鴉の呪い】…【双剣術】【気配察知】【気配探知】【気配遮断】【黒属性魔法】【威圧】【夜目】【???】

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名:タマモ  年齢:12歳

性別:女 出身地:ガンドラ

種族:亜人族・弧人種 

レベル:255

筋力:1462

体力:1478

耐久:1332

魔力:2597

魔耐:1955

敏捷:1862

スキル:【火属性魔法】【無詠唱】【炎の担い手】【身体強化】【第六感】【近距離戦闘】【気配遮断】【魔力増幅】【自己治癒能力】【成長躍進】

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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