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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『炎の山』と狐人種の少女
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28.帰還

 昴が『炎の山』の入り口にたどり着いたのは完全に日が落ちた頃であった。タマモを背負いながら山を降りていた昴は、このペースじゃ日を跨ぐかな、と思っていたが、途中で魔力を練れるようになり

なんとか夜になる前に着くことができた。


 昴はガンドラの街を見て思わず瞠目した。


「あの(じじい)…やりすぎだろ」


 昴の目の前に広がるのは土の壁、円状に突き出たそれから地上からの一切の侵入者を許すまいという意思が感じられた。これを一人でやってのけたとすれば、


「十分化け物ってことか」


 クリプトンや他の冒険者を見て、この世界の冒険者の強さをなんとなく自分の中で位置付けていた昴は、それを上方修正した。間違いなくランクSの冒険者は化け物である、と。


「これは…街には入れそうにねーかな?」


 あたりをキョロキョロと見回すと、土壁の一角に松明が置かれている場所があった。とりあえず向かってみると、そこには数十人の冒険者と、昴を邪険にしていたゾフマンと呼ばれる大剣使いの男、そしてサガットとなぜかマルカットの姿もあった。

 魔物が攻めて来ると警戒していた冒険者達は突然現れた少女を背負った男に狼狽したが、サガットがそれを制し、昴の元へと歩いて来る。その後ろでは驚いたように目を見開いたゾフマンが立っており、その隣でマルカットは満面の笑みを浮かべていた。


「特別依頼の報告を聞こう」


 サガットが事務的な口調で昴に尋ねた。


「あんたが言った通り魔物達は全員が"狂化"状態にあり、ランク以上の危険性を感じた」


 昴の報告を聞いて周りの冒険者達に緊張が走る。


「数は?」


 そんな冒険者達の反応を意に介せずにサガットは昴へ報告の続きを促した。


「俺が確認しただけでも五百匹くらい、魔物の種類はバラバラ」


「五百か…まぁ通常の魔物大暴走(スタンピード)とそこまで遜色はないな。"狂化"について何か原因はわかったか?」


「それはよくわからなかったな。とにかく全員が白い眼をしていて理性がないっていう共通点くらいかな」


「ふむ…」


 サガットは顎に手を添えて考える。魔物大暴走(スタンピード)の規模に不審な点が見られないということは、それ自体は自然発生のもの。しかしその魔物全てが"狂化"状態であったのは偶然とは考えられない。誰かが魔物大暴走(スタンピード)を利用してこの街に街を及ぼそうとしたのは明らかだが、サガットには犯人像が一向に見えてこなかった。ガンドラの街を潰すメリットがなさすぎる。この街はいわば物資の供給源、王国にとっても帝国にとってもガンドラの街は生命線になり得る場所であり、どちらかが手を出してきたとはサガットには思えなかった。


「…それで魔物はどうした?」


 一旦思考を中断して昴に尋ねた。今はとにかく目先の魔物の脅威の方が先決である。


「大方は倒した。とりこぼしはあるかもしらねーけど」


 あっけらかんと言い放った昴に周りの冒険者達は一瞬ポカンとした表情を浮かべ、すぐに罵声をあげ始めた。


「適当なこと言ってんじゃねーぞ!!」


「てめーなにもんだ!!」


「ガキはすっこんでろ!!」


 昴は面倒くさそうに冒険者達を一瞥するが特になにも言わずにサガットの言葉を待つ。後ろに立っていたゾフマンも声はあげないものの冒険者達と同じような気持ちであった。

 サガットは少し考えた後、昴の後ろで眠っている少女に目を向けた。


「彼女は?」


 それまで淀みなくサガットの質問に答えていた昴だったがはじめて言葉に詰まった。


「…逃げ遅れた亜人族の少女だ」


 サガットはタマモを注意深く観察する。


「あまり見たことのない種族だな…どうしてお前さんはこの子が森にいることを知っていた?」


 サガットの質問に昴は答えない。何故だかわからないがタマモが封印されていたことをこの場で話すのは憚られた。何も言わない昴にサガットがさらに追求しようと口を開いた瞬間、以外なところから声が上がる。


「この子はうちの贔屓にしている村の女の子でしてね。なんでも遊び半分で山に入って迷子になってしまったとかで、私が昴さんに無理を言って助けに行っていただいたのです」


 サガットと昴は同時に声のした方へ顔を向けた。そこにはいつものニコニコ顔を浮かべたマルカットが立っていた。


「お前の知り合いなのか?」


「知り合いと言いましても、ほとんど会ったことはございません。私が相手をしているのはその子の住んでいる村の村長さんですから」


「…それは本当か?」


 明らかに疑いの目を向けられているが、マルカットどこ吹く風か表情を一切変えずに頷く。

 しばらく射抜くような視線でマルカットを見ていたサガットだったが、諦めたように息を吐くと冒険者達に向き直った。


「今から魔物の確認と残党狩りに行く」


 サガットの言葉を受けて冒険者達に動揺が走る。これはサガットが昴の馬鹿げた発言を信じたということである。

 ざわめく冒険者達を代表するようにゾフマンが声をあげた。


「お言葉ですがギルド長。この者の言葉を信じることはできません」


「何故だ?」


「あまりにも荒唐無稽であり、ありえないことだからです。少女を助けたことをいいことに褒賞狙いでデタラメ言っているに違いありません」


ゾフマンの言葉に賛同するようにそうだそうだ、と冒険者達が声を上げる。サガットはそんな冒険者達を見渡した。


「では言い方を変えよう。今のところ山から魔物の大群が下りてくる気配はない。なので今のうちに山へと入り、魔物を間引いて欲しい。ここの守りは儂が受け持つ。それならば文句なかろう」


 サガットの言葉を受けて黙りこくった冒険者達。


「ゾフマンをリーダーとし、山に入ってくれ。当然倒した魔物に見合った褒賞は与える」


 冒険者達は互いに顔を見合わせると一人、また一人と山に向かって行った。それでも不満そうな顔をしているゾフマンにサガットは声をかける。


「どうした?」


「…山での魔物の討伐は圧倒的に相手に地の利があります。魔物大暴走(スタンピード)でさらに"狂化"している魔物を山の中で相手にするなど、危険極まりない。そのため街の前での迎撃態勢を取ったのに、今さら山に入って魔物を間引いて欲しいなどと…暗にこの小僧の言葉を信じているということではないですか!?」


 ゾフマンは昴のことを指差し、最後は感情を押し出しながら言うと、サガットは宥めるように彼の肩にポンと手をのせる。


「スバルの言葉が正しいかどうかはゾフマン、お前さん自身で確認してこい」


「っ!?で、ですがその間に魔物がここに来てしまったら」


「なんだ?わしの力が信じられないのか?」


 少しおどけた様子で、しかし身体にオーラを滾らせながらサガットが言う。それを見てソフマンは口を真一文字に結ぶと、それ以上何も言わずに冒険者達と共に山へと向かって行った。


「さて、と…このままスバルを冒険者ギルドに連行して色々話を聞きたいんだが」


 サガットはちらりと視線をマルカットに向ける。


「当然ありえませんね。スバルさんもそこのお嬢さんも私の客人。マルカット商会の力をフルに使って今日は屋敷でもてなす所存です」


 昴が口を開くよりも先にマルカットが言い放つ。その言葉には有無を言わせない力強さがあった。


「まぁそうなるだろうと思った」


サガットが諦めたように肩をすくめると、今度は昴の方に顔を向ける。


「スバル、落ち着いたらでいい。一度俺の元を訪ねろ。できればその子と一緒にな。その時にこの場で話せなかったことを聞かせろ」


「…全部を話すかは約束できねーぞ?」


 昴の意思というよりもタマモの意思がある。タマモが話して欲しくないと願えば昴は誰にも言うつもりはなかった。


「…それでも構わん」


 多少迷いながらも頷いた昴を見て、サガットは昴に背を向け、『炎の山』を見つめる。その背中から話は終わりだ、という無言のメッセージを受け取った昴はマルカットの方へと向き頭を下げた。


「マルカットさん、色々すいません」


「いえいえ…それが例の?」


「そうです」


 マルカットはあどけない寝顔を浮かべるタマモを見て微笑んだ。


「とにかくうちにいらしてください。お二人ともお疲れでしょうし」


「でも…いいんですか?」


 昴が遠慮がちに尋ねるとマルカットは悪戯っぽい笑みを浮かべた。。


「いいもなにも、もてなすとサガットさんの目の前で言い切ってしましましたからね。逆に来ていただかなければ困ります」


「そう、ですか…それならお言葉に甘えて」


 昴は困ったような笑顔を浮かべて、門のところで待機していた馬車にマルカットと共に乗り込んだ。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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