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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『炎の山』と狐人種の少女
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15.冒険者登録

 野菜のあんかけがかけられた焼き魚とパンの朝食に舌鼓をうった後、昴は冒険者ギルドへと足を運んだ。比較的今日はギルドが落ち着いていたため、暇を持て余していたパルムはギルドに入って来た昴の姿を見つけると大きく手を振る。しかしそんなパルムには目もくれず昴は一直線で二階へと向かった。無視されるとは思っていなかったパルムは一瞬ポカンとしたが、慌てて昴の後を追うと、ギルド長室を開けようとしている昴の腕を掴む。


「ちょ、ちょっとスバルさん!?何してるんですか!?」


「パルム、離してくれ。俺はどうしても話をつけないといけない奴がいるんだ」


「だ、ダメですって!ここは本来冒険者は立ち入り禁止なんですよ!?」


 必死に止めようとするパルムを無視して昴は勢いよく扉を開ける。部屋にはサガットが机で仕事をしており、二人を見ると意外そうな顔をしながらも、何かを察したようでニヤリと笑みを向けた。


「もう少し気づかないと思っていたが…案外早かったな」


(じじい)!騙しやがったな!」


「す、スバルさん!?ギルド長相手に失礼すぎですよ!!」


 あまりの昴の態度に戦々恐々のパルム。そんなパルムをサガットは手で制した。


「構わん。こっちが悪いのだからな」


 サガットは全く悪びれずに言うと指を組み、その上に顎を置きながら昴を見据える。


「それで?気に入らないから冒険者登録をやめるか?儂としてはそれでも構わないんだが」


 サガットに詰め寄ろうとしていた昴の勢いが止まる。いいように使われたことは気に入らないが、冒険者になれないのは困る。昴の身体から力が抜けたことを確認したパルムは冷や汗をかきながら昴の腕を放した。そんな昴を見てサガットは笑いかける。


「まぁ確かに新人冒険者にはちと荷が重い相手だったかもしれないが、お前さんなら儂はやれると思ったから選んだんだぞ?」


「…俺のことはほとんど知らないはずのあんたが?」


「見ればわかる。お前さんも同じようなもんだろう」


 そうだろ?っと確認するような視線を向けられ、気勢をそがれた昴は肩をすくめた。


「食えない(じじい)だよ、あんたは」


「ほめ言葉として受け取っておこう」


 サガットの満足そうな顔に舌打ちをしながら昴は部屋を出て行こうとする。


「スバル」


「ん?」


 振り返った昴の手元に硬貨が詰まった麻袋が投げられた。


「これは?」


「昨日の魔物の報酬だ。素材は別にいらんだろ?」


「…ったく、本当に食えねーな。こんなんされたら恨むに恨めねぇっつーの」


 昴は麻袋を”アイテムボックス”にしまうと不機嫌そうな表情を浮かべた。


「パルム、スバルの冒険者登録をしてやれ」


「よろしくパルム」


 二人のやりとりを口を開けたままぽけーっと見ていたパルムは、二人に声をかけられ我にかえった。そして何事もなかったかのように歩く昴を慌てて追いかける。


「すすすスバルさん!ちょ、ちょっとどういうことですか!?」


「ん?あぁパルムはあの後のことを知らないのか」


 昴はパルムにギルド長室に連れてこられてからのことをパルムに話した。


「はぁ…再試験で魔物討伐ですか…一体何を討伐したんですか?かなりの報酬をもらってましたよね!?」


「あー別に大した魔物じゃねーよ。新人冒険者ってことで、お祝いの意味を込めてあの(じじい)が色つけただけだろ」


「そうなんですか…ってさっきから(じじい)(じじい)ってスバルさんよくないです!もっと敬意を持ってですねぇ…」


「あーはいはい。さっさと冒険者登録してくれって」


 サガットの素晴らしさを語り出したパルムの話を聞き流しながらギルドカウンターへと向かう。



 カウンターに着くとパルムは中へと移動し、ステータスプレートよりも少し大きな銅色の板を取り出した。


「これが冒険者カードです!スバルさんはランクFなので、この銅色の冒険者カードになります!冒険者ランクCからFが銅色、Bが銀色、Aが金色でランクSにもなると白金色の冒険者カードになります!」


「ふーん…」


 ランクを上げる気のない昴にとってはなんの意味もない話であったので、適当な反応を見せる昴に対し、若干眉がピクリと動きながらもパルムは説明を続ける。


「これにこの前スバルさんに記入していただいた情報と冒険者ランクが入ります。スバルさん、人差し指を出していただけますか?」


 昴が指を差し出すと、パルムは小さいナイフで指の先を切ると、流れた血を冒険者カードに垂らす。冒険者カードに垂れた血はそのままカードに吸い込まれた。


「こうすることでスバルさんの魔力を記録します!これで冒険者カードに魔力を注ぐと登録された情報をカードに表示することができます!」


 パルムから渡された冒険者カードに試しに魔力を注ぐ。すると冒険者カードに文字が表示された。


――――――――――――――――――――――

氏名:スバル  冒険者ランク:F

出身地:イムルの村

所持スキル:【アイテムボックス】

推薦:ガンドラのサガット

――――――――――――――――――――――


「この推薦ってなんだ?」


「え?」


 昴の言葉に不思議そうな顔をしたパルムだったが、昴の冒険者カードを見ると目を丸くした。


「こ、これは昴さんすごいですよ!!冒険者ギルド本部の長のお墨付きってことです!!これがあれば他の冒険者ギルドで優遇されますよ!!」


「…(じじい)め、余計な気をまわしやがって」


 なんとなく素直に感謝する気になれない昴は冒険者ギルドへの魔力を切り、表示を消した。


「あっ!忘れてた!スバルさん入門証ありますか?」


「あるけど、これ必要なの?」


 昴はパルムに紙切れを渡す。パルムはそれを見ながら昴の冒険者カードに魔力を巡らす。


「この冒険者カードには街の入外出を記録することができるんです!!今度からはこれを見せるることで街に入ったり出たりできますよ!!」


 猫耳をピクピクと動かしながらパルムは元気よく言った。


「なるほどねぇ…マルカットさんはこれの商人バージョンを持ってたのか」


 最初にガンドラの街に来た時にマルカットが出していたカードを思い出しながら昴は呟く。


「今日は何かクエストを受けていきますか?」


「うーんと…どうやって受ければいいんだ?」


「あそこに貼られている依頼票をもってわたしのところに来てくれればクエストを受けられますよ!」


 パルムはギルドの端にあるクエストボードを指差しながら言った。


「依頼は最高三つまで受けることができます!ある程度依頼をこなせばランクEにはすぐになれますよ!」


「じゃあちょっくら見てくるかな」


 昴がクエストボードに行くと、依頼票が所狭しと貼り付けられていた。しかしランクD以上のものが多く、昴の受けられる依頼[薬草採取]と[ゴブリン討伐依頼]の二つくらいであった。昴はその二枚の依頼表をとるとパルムの下へと持って行く。


「この二つを受けたい」


「はい![薬草採取]の方は期限が三日、報酬は薬草一つに付き5カプ、[ゴブリン討伐]の方は期限は一週間、十体のゴブリンを狩って来てください。討伐の証として核をお忘れなく」


「あぁわかってるよ。薬草も核もギルドに持ってくればいいのか?」


「この依頼内容であればギルドで問題ありません。依頼によっては依頼者に直接届けるものがありますから依頼表はしっかりと見てくださいね」


 パルムは依頼表の内容を冒険カードに記録し昴に渡した。昴はお礼を言いながらそれを受け取ると、早速依頼をこなそうと思ったのだが、フランとの買い物の約束を思い出し、《太陽の宿》へと向かった。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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