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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
『炎の山』と狐人種の少女
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7.冒険者ギルド

 ダンクから冒険者ギルドの場所を聞いた昴はゆっくりと街を見ながら冒険者ギルドに向かった。マルカットが言っていた通り、ガンドラはアレクサンドリアの街と同じくらいの発展具合だった。

 アレクサンドリアは女王が直接治める土地として街自体が秩序をもって統治された「静」の街であったのに対し、ガンドラの街は人々が自由に、快活に生きている「動」の街であった。特に違ったのは街を歩く人種。アレクサンドリアにいた頃はほとんど城の中で生活していたが、偶に街に足を運ぶとそこには人族以外の種族をほとんど目にしなかった。しかしガンドラの街では犬人種や猫人種、それにごく稀だが耳の尖ったエルフと思わしき種族も街中を歩いていた。


 そんな異世界ならではの街並みを楽しみながらしばらく歩いていると、ひときわ大きい建物が目の前に現れた。


「ここが冒険者ギルドか」


 木で造られた建物は入り口が大きく開かれており、冒険者でも依頼人でも来るもの拒まずの精神を体現しているかのようであった。


「っと、こんなところで油売っててもしょうがねーな」


 冒険者ギルドが醸し出す雰囲気に呑まれ、しばらくポカンと建物を眺めていた昴であったが、我に帰るとそそくさと中へと入って行った。

 マルカットから冒険者は朝早くから依頼を受けるという話を聞いていたが、昼過ぎというのに建物の中はかなりの人で賑わっていた。正面には十人以上の受付嬢がカウンター越しに並んでおり、せわしなく冒険者の相手をしている。そこから少し外れる形で魔物の素材を回収する場所や、冒険に必要な道具を売買している場所などがあった。

 二階にはお偉いさんの接客をするための応接室のようなものがいくつかあり、それ以外の場所には雑多に椅子が並べられていた。冒険者によってはギルドに併設されている食事処から食べ物を購入し、その椅子に座って談笑している者や、掲示板に貼られた紙を真剣に見ている者も見受けられる。

 右も左もわからない昴は、とりあえず空いてるカウンターへ行き、受付の女性に声をかけた。


「えーっと…冒険者になりたいんだけど?」


 昴に声をかけられた猫人種の女性は耳をピンッと立てると、昴に特大の営業スマイルを向けた。


「はいはい!!新人の方ですね!!」


「あ、あぁ。冒険者登録がしたくて」


 猫耳の女性の圧力に若干たじろぎながらも昴は用件を伝えた。


「ようこそ冒険者ギルドへ!それでは所定の手続きを取ってもらいます!ただその前に、まずはあなたのことを聞かせてもらえますか!?」


「名前は昴で出身は」


「わかりました!スバルさんですね!わたしは、冒険者ギルド本部の受付をやってます、パルムって言います!よろしくお願いします!」


「あ、あぁ」


「ようこそ冒険者ギルドへ!」


 そういうとパルムは満面の笑みを昴に向けた。元気はつらつな受付嬢に苦笑いをしながらも、昴は「よろしく」と声をかける。


「まずは冒険者ギルドについてこのパルムが説明させていただきます!!」


 そう言うとパルムは冒険者ギルドについて早口でまくし立てていった。


 冒険者ギルド。

 ガンドラを本部として数多くの支部が存在する。各支部を取りまとめるギルド長、そしてその支部長を取りまとめるのがこのガンドラに在籍している総ギルド長である。

 ここには魔物を狩る者や素材の収集を生業とする者が集う。危険な地に赴くことができない者が依頼主として冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者にその依頼を斡旋する。依頼内容は様々であり、危険な魔物の討伐、材料の採取、護衛といった依頼も受けており、冒険者の強さに合わせてその依頼を割り当てていく。

 冒険者の強さの指標として、冒険者ギルド独自のランクが設定されており、新人のランクFから始まり、E、D、C、B、A、Sの7段階で評価される。一般的にはランクDになれば一人前、ランクBになれば一流と言われている。


「冒険者ランクはギルドへの貢献度によって査定され、時には面接をしたり、時には試験をして上がっていきます!しかしランクSだけは特別でギルド長が推薦し、支部長の過半数の承認を得たものだけが名乗ることができるのです!!」


「へー…ランクSってのはすごいんだな」


「その通りです!!」


 パルムが自慢げに胸をそらした。突き出した胸には気持ちばかりのふくらみしかないのがどこか哀愁を誘う。


「Sランクの人たちは謎に包まれているのですが、共通していることが一つ!!彼らは常軌を逸した強さをもっています!!かく言うギルド長も元ランクSなのです!!」


 ものすごい熱を込めて話すパルムに昴は若干引き気味になる。


「冒険者にはそれぞれランクがあって、依頼にもランクがあって、それぞれ冒険者に合わせた依頼を受けることができるって言うことか」


 昴がパルムに言われたことをまとめると、パルムはそうです!と大きく頷いた。


「ただランクがあるのは冒険者と依頼の二つだけではありません!魔物にもそれぞれ強さに乗じたランクが設定されています!!」


「ってことはランクBの冒険者はランクBの魔物に匹敵するってことか?」


 昴の問いにいままで意気揚々と話していたパルムの動きが止まる。少し気まずそうに俯きながら、目を左右に泳がせた。


「そういうわけではないのですが…すいません。魔物のランク付けはどういう基準で行われているのかわからないのです」


 猫耳をしゅんっとさせ落ち込むパルムに昴が慌てて慰めると、パルムは気を取り直したように説明の続きをし始めた。


「冒険者の中にはクランを結成する方たちもいます!」


「クラン?」


「はい!依頼を達成するのは当然ながら一人より大勢のが早くて安全です!!気の合う冒険者とクランを結成して複数人で依頼に取り組むということです!!」


「なるほどね…」


 一人で行動している自分には関係ない話だな、と思い昴はそれ以上詳しくは聞かなかった。


「というわけでスバルさんにはこちらを記入していただきます!」


 パルムは羊皮紙を取り出すと昴に手渡した。そこには名前や出身地などステータスプレートで表示される項目を記入する欄が設けられていた。


「一応必須なのは名前と年齢くらいなんですが、細かく記入すると有利になる場合があります!」


「有利になるっていうのは?」


「依頼の種類の中に指名依頼とよばれるものがあります!これは依頼主が自分にあった冒険者を冒険者名簿を見て指名する者なんです!!なのでスキルとかレベルとかセールスポイントになるものはしっかりと書いたほうがいいです!!」


「なるほどねぇ…」


 昴は羊皮紙に目を落とした。指名依頼を受けるつもりもないので余計なことは書かかずに、手早く名前と年齢を書くとパルムに渡した。そんな昴を見てなぜかパルムが感心している。


「どうかした?」


「いえ!スバルさんの年齢の人は自分で文字を書くことができず、代筆することが多いのですが、スバルさんはスラスラ書いているようなのですごいなって思いました!!」


「書けると便利だからって教えてもらったんだよ」


「そうなんですか!確かに文字は書けるに越したことはないですからね!あっ、虚偽の申告をしていないか確かめるため一応ステータスプレートを見せてもらってもいいですか?」


 適当に言った昴の言葉をパルムは疑うこともなく納得したような表情を見せた。昴は内心ホッとしながら"幻鷺(げんろ)"をかけたステータスを表示する。それを見たパルムは羊皮紙と照らし合わせ大丈夫です、と頷き、紙切れを昴に手渡した。


「これは?」


「これは受験票です!!」


「受験票?」


 意外なものが渡されたことに驚いているとパルムが説明をしてくれる。


「どんな依頼も戦うことが前提となっています!!なので冒険者には最低限の強さが求められるため、冒険者としてやっていけるか冒険者ギルドが試験を行います!!これは無駄に命を落とす人を減らすためのものです!!」


 受験票には「明日の正午、番号01」と書かれていた。


「明日の正午にここに来ればいいの?」


「はい!!このパルムに声をかけてくれれば試験場まで案内します!!」


「わかった。じゃあ明日またパルムさんに声かけます」


 昴が了解の意を示すとパルムはブルルっと身震いをした。


「呼び捨てで結構です!!さん付けだとなんだか調子が狂うんで!!」


 心底嫌そうな顔をしたパルムに昴は苦笑いを浮かべた


「わかった。明日またパルムのとこに来るよ」


「はい!!お待ちしています!!」


 大きくお辞儀をするパルムにお礼を言って昴は冒険者ギルドを後にした。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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