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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
呪いのステータス
3/192

3.ステータスプレート

名前の変更しました!

北大路さおり→石川さおり


異世界の人のステータスを変更しました!

あまりにも弱すぎたので…

スキルを変更しました!

 謁見の間で魔王討伐に了承の意を示した後、昴達は城の内部にある大聖堂に案内された。ここは街にある教会とは使用用途が異なる。

一般的な教会では常駐している神官による傷や病気の治療や一般人の婚礼の儀等、庶民向けの儀を行なっているのに対し、ここ大聖堂では王家や位の高い者の婚礼等の重要度の高い儀や教会で手に負えないような重症、難病を癒す場となっている。

 ステンドグラスに囲まれ、どことなく格式の高い雰囲気にのまれつつ、これから行われる国民の儀を前に昴達は何とも言えない緊張感に包まれていた。


 国民の儀とはこの世界で産まれた者が行う儀式である。一歳になるまでに教会に訪れ、祝福を受けることで国民になることを認めてもらう。月に一度、周辺の赤子らを集めて執り行っていた。

 国民として認められたものは、ステータスプレートが発行され、国による一括管理のもと身分を保証されることとなり、買い物や宿場での宿泊が認められる。

 逆に言えばステータスプレートが無い者は街においてほとんどの行動が制限され、場合によっては立ち入ることさえ叶わない事態になってしまう。

 異世界召喚された昴達は当然、この国で身元を保証するものを何一つ持っていないので、本来であれば幼い時に行うものなのだが例外として国民の儀が行われるということである。


「国民の儀は我らの祝福を受け、このステータスプレートに自身の血を吸わせるによって完了する」


 転生の間から謁見の間まで先導してくれたユリウスがシステム手帳ほどの大きさのガラスのようなもので出来たカードを見せる。彼はこの国の神官の長であり、大神官の役職についていた。国民の義の説明をしてくれたのもこのユリウスである。


「これより国民の儀をとりおこなう」


 そう言うとユリウスは目を瞑り両手を掲げると、ブツブツと呟き始めた。その様子を神妙な顔つきで見ていた昴達であったが、次第に自分達の体が薄く光り始めていることに気づく。ユリウスは昴達が動揺していることなどお構いなしにそのまま祝福の呪文を唱え続けた。

 五分程たったところでユリウスが目を開くと、身体から発していた光も段々と薄れていく。


「…さて、これでお前さんたちは祝福を受けた。これから一人ずつステータスプレートに血を捧げていくのだが、その前に説明しておかなければならないことがあるのぉ」


 ユリウスが髭をいじりながら昴達を見渡した。


「それはステータスとスキルに関してじゃ」


「…ステータスとスキル?」


 ユリウスの発言に浩介が眉を顰める。


「左様。ステータスプレートに保存される情報は名、年齢、性別、出身地、種族そして能力とスキルなのじゃ」


 後半の耳慣れない言葉に疑問符を浮かべる昴達に対し、ユリウスは丁寧に説明をしてくれた。


 能力に含まれるのはレベル、筋力、体力、耐久、魔力、魔耐、敏捷の7項目であり、それぞれその人間が持つ身体能力を数値化したものである。戦いの経験を積むことでレベルを上げることができ、その結果能力も上昇する。現代のRPGのシステムとほとんど同じと考えていい。

 スキルというのはその人間が持つ潜在的な能力を指す。例えば【毒耐性】のスキルを持つものは毒物に強くなったり、【火属性魔法】のスキルを持つものは火属性の魔法を放つことができる。ちなみにスキルは先天的に持ち合わせているものだけでなく、訓練や様々な条件を満たすと習得することもできる。


「実際に身分を示すときに確認するのは名、年齢、性別、出身地、そして種族の五つじゃ。能力やスキルを他人に知られるというのは命に係わるケースもあるため、自分以外には確認できないようになっておる。ただ魔王討伐のため呼び出されたお前さんたちの能力はこちらで確認しておきたい。そのためお前さんたちの能力とスキルを見ることを許してもらえんかの」


「それは拒否権はあるのか?」


「ほっほっほ…国の存続に関わること故、断られたらこっそり見るほかあるまいのう」


 雫の問いかけににやりと笑って答えるユリウス。雫は肩を竦めながら確認するようにクラスメートに目を向けると、みな黙って頷いた。


「了承は得た。早速儀式を始めてくれ」


 雫がそう告げるとユリウスはニッコリと笑みを浮かべ、一番近くにいたさおりを手招く。


「そこの可愛いお嬢さん。お名前は?」


「え?あたし?」


「そうじゃそうじゃ。それ、名は何と申す?」


「…石川さおりっていいます」


 一番最初に指名されたのが不安だったのか、さおりは普段よりも若干ひきつった笑みを浮かべながら名乗った。


「ほう、サオリ殿。少し皆に説明したいことがあるから協力してもらえんかの?」


「あっはい、あたしでよければ」


 その答えにそうかそうか、と嬉しそうに笑いかけ、さおりの手を引くと祭壇の上へと登らせた。


「カイル大臣が言っていたことは覚えているかの…お前さんたちには特別な力があると」


 ユリウスが問いかけるとみな無言で肯定した。


「その証拠はこの能力とスキルを見れば一目瞭然なんじゃ」


 ちょっと失礼、と懐からナイフを取り出し、さおりの人差し指に押し付ける。少し切れた指からステータスプレートに血を垂らすと、一瞬光り輝き、すぐに元のステータスプレートに戻った。


「お前さんたちはこの国に来たばかりで戦ったことがないので全員がレベル1じゃ。そしてこの国のレベル1の者の能力はおよそ70前後になっている。…たまに才能あふれる者も出てくるがそれでも130くらいじゃのう。実際に見てもらった方が早いか」


 ユリウスはそういうと一人の若い神官を呼び出した。


「彼は最近神官の一人になったものでのう。まだ修練を積んでいない彼はお前さんたちと同様レベル1のままじゃ。こやつのステータスを見てこの国の平均というもの知ってほしい。ほれ、ステータスを表示してみなさい」


「は、はい!"ステータスフルオープン"」


 袖から取り出したステータスプレートが若い神官の言葉に反応して空中に四角いディスプレイを投影する。


==========================

名:ユルグ  年齢:15歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:65

体力:68

耐久:65

魔力:125

魔耐:115

敏捷:80

スキル:【聖魔法】

==========================


「これでも魔力と魔耐に関してはかなりの高水準と言っていいんだがのう。まぁこれがこの国の平均的なステータスじゃ。ありがとう、さがっていいぞ」


 若い神官ユルグは大きくうなずき、慌てた様子で自分がいた位置に戻っていく。


「さて、次はお前さんたち異世界人の力を見せてもらおうかのう。サオリ殿、自分のステータスプレートを手に持ち"ステータスフルオープン"と唱えてみてくれ」


「はい!…ちょっと恥ずかしいけど…"ステータスフルオープン"!!」


 渡されたステータスプレートに向かって少し照れながらユリウスに教わった呪文を唱える。


==========================

名:石川 さおり  年齢:17歳

性別:女 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:156

体力:145

耐久:126

魔力:82

魔耐:118

敏捷:185

スキル:【格闘家】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================


「これがあたしのステータス…?」


 さおりは自分のステータスを見て驚きのあまり言葉を失っていた。他の者たちもステータスプレートから映し出された画面に驚きつつも、その値を見て、ユリウスの言葉に偽りのないことを確信する。


「これは…やはり異世界人の能力はすごいのう。しかしこれでお前さんたち異世界人には特別な力があることがわかってもらえたかのう」


 少し驚きながらも興味深そうにさおりのステータスを見ていたユリウスが昴達に尋ねるが返事は帰ってこない。みな今見た光景が信じられないという様子で呆気に取られていた。当の本人もとっくに消えてしまったステータスウインドウがあった場所を茫然と見つめている。


「い、今のは石川さんが特別すごいということではないのですか?」


 一番早く我に返った浩介が困惑しながら尋ねるがユリウスは首を横に振って否定した。


「いや、そういうわけではないじゃろう。ほかの者のステータスを見てみればわかることじゃ。まぁその前に2、3説明したいことがあるからもう一度ステータスを表示してもらえんかのう」


「……………」


「サオリ殿?」


「え?あ、すいません!えーっと"ステータスフルオープン"!」


 心ここにあらずの状態であったさおりはユリウスに名前を呼ばれて慌ててステータスウインドウを表示した。


「さて、見てもらいたいのはスキル欄じゃ」


 ユリウスは表示されたステータスウインドウのスキル欄を指さす。


「【格闘家】【アイテムボックス】【多言語理解】【成長促進】とあるが、まずは後半の三つのスキル。これは異世界人であれば誰もが与えられるスキルになっておる。実際に前の異世界人も全員所持していた。【多言語理解】の方はスキル名を見ればなんとなく能力の内容がわかると思うが、あらゆる言語の読み書きができるものとなっている」


 ユリウスの説明に、確かに日本ではないこの国の人と何不自由なく会話していたことを思い出し、このスキルの恩恵であることに納得する一同。


「【成長促進】は成長の速度が他の者に比べて早い。これも異世界人が強いと言われる所以じゃな。そして【アイテムボックス】は非常に便利な能力で、無機物であれば無限に収容可能な空間を作り出すことができる。商人ならば喉から手が出るほど欲しい能力じゃのう。ほら、サオリ殿、手を前にかざし”アイテムボックス”と唱えてみるのじゃ」


「手を前に出して…こんな感じですかね…”アイテムボックス”!」


 さおりの出した手の前の空間に裂け目ができ中には闇が広まっている。


「その空間に入れたいものを入れることができ、出したい時がその空間に手を突っ込み、頭に念じれば取り出すことができるというわけじゃ」


「はぁー…便利ですね」


 さおりは自分が作り出した空間にハンカチを出し入れしながら感心したようにつぶやく。


「そして【格闘家】のスキル。これはユニークスキルというもので、この世界でも希少なスキルの一つである。このスキルの特徴は複合スキルであるということじゃ」


「ユニークスキル…?」


「そうじゃ。とはいっても異世界人の全員が【格闘家】のユニークスキルを持っているわけではない」


「それでは石川さんは特別ということですか?」


 知らない言葉のオンパレードに頭をかしげるさおりに対しユリウスの言葉の意味を考えながら浩介は質問を投げかける。


「いやこれがまた異世界人が特別な力を持っているといわれるところでのう。異世界人は必ず一つユニークスキルを所持しているのじゃ。サオリ殿はたまたま【格闘家】のスキルを持っていただけで、ユニークスキルを持っているからといって異世界人の中で特別、というわけではないのじゃ」


 ユリウスからの情報を懸命に頭で咀嚼する昴達。そんな彼らをユリウスは黙って見つめるとずれた丸眼鏡を直しながら小川咲が恐る恐る手を挙げた。


「あのぉ…申し訳ありませんが、複合スキルというものはどういったものなのでしょうか?」


 クラスメートの注目を集めたことに恐縮しながら咲は小さい声でユリウスに尋ねる。


「おぉ儂としたことが!複合スキルの説明をするのを忘れておった」


 頬をぽりぽりとかきながら謝ると咲は両手を前に突き出してぶんぶん振って「いえいえ、大丈夫です!」と慌てて答える。ユリウスはコホンッと咳ばらいをすると複合スキルの説明を始めた。


 複合スキル通称ユニークスキル。

 これは一つのスキルに複数のスキルの能力を兼ね備えたスキルをさす。例えば魔法のスキルとして【火属性魔法】や【水属性魔法】が存在する。【火属性魔法】のスキルを習得しているのであれば火属性の魔法を、【水属性魔法】のスキルを習得していれば水属性の魔法を使用することができるのであるが、魔法系の複合スキルとして最もポピュラーである【魔法使い】のスキルを習得しているのであれば火属性や水属性だけでなく、多種多様の魔法を使えるようになる。それがユニークスキルが強力であるといわれる所以である。

 そのためユニークスキルを所持している者は少ない。特に生まれたときに持っていればそれだけで人生の成功が約束されるとまで言われている。あとからユニークスキルを習得することも可能ではあるが、その条件としてそのスキルに関連するスキルを習得し、さらにそのスキルの習熟度を高めることにより派生するため、その道を極めた者にしか習得できないスキルとなっており、その結果ユニークスキルを持つものは稀有であるのが現実となっている。


「…とまぁこんな感じじゃ。後は座学の方で詳しい説明があるじゃろう。とりあえずこの場ではさっさと全員分の国民の儀を終わらせて、お前さんたちの歓迎会に行くことにするかのう」


 ユリウスからの一通りの説明を受け、なんとか理解したクラスの者たちは自分のスキルに期待を抱きながら一列に並んでいく。ユリウスの話をぼーっと聞いていた昴は完全に出遅れた形になり、列の最後尾に並んだ。


(なんかとんとん拍子に話が進んでいくなー…)


 自分のステータスに一喜一憂するクラスメートを見ながら昴はそんなことを考えていた。

 さくさくと国民の儀を進めていくなか、周りで見ていた神官たちがどよめきが起こったのは四人のステータスが表示された時だった。


==========================

名:霧崎 雫  年齢:17歳

性別:女 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:136

体力:138

耐久:132

魔力:155

魔耐:151

敏捷:145

スキル:【聖騎士】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================

==========================

名:北村 香織  年齢:17歳

性別:女 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:98

体力:95

耐久:96

魔力:201

魔耐:195

敏捷:124

スキル:【聖女】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================

==========================

名:天海 浩介  年齢:17歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:162

体力:158

耐久:161

魔力:159

魔耐:163

敏捷:160

スキル:【勇者】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================

==========================

名:高橋 隼人  年齢:17歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:170

体力:152

耐久:150

魔力:76

魔耐:135

敏捷:168

スキル:【剣聖】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================


 特に香織と浩介の時はすさまじかった。【聖女】のユニークスキルを見たときに隆人とその取り巻きがニヤニヤと笑いながら囃し立て、香織はプルプルと小刻みに震えながら、顔を真っ赤にして俯いていた。

浩介の場合はクラスメートよりも神官たちが驚きの声を上げ、ユリウスですら目を見開いて浩介のステータスプレートを凝視していた。

 ユリウス曰く、この四人のユニークスキルは存在するということは知られているが、実際にこのスキルを所持している人を見たのは初めてだとのことだった。

 そんなこんなで昴を除く十九人の国民の儀が終わり、最後の昴の番が回ってきた。


「あいつのユニークスキルは【奴隷】とかじゃね?」


 次が昴の番であることに気づいた隆人のそんな言葉に、取り巻きの三人は腹を抱えて笑っている。そんな隆人達を窘めながら「楠木君、ファイト!」と香織が昴に声をかけた。香織の言葉に曖昧な笑みで返し自分の血を吸ったステータスプレートを受け取る。


(目立たないユニークスキルでありますように…)


 そんな願いを抱きながら「ステータスフルオープン」と唱える。

 映し出されたステータスを見て静まり返る大聖堂。昴も自身のステータスを見て思考が停止する。


==========================

名:楠木 昴  年齢:17歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:1

筋力:18 ↓DOWN

体力:17 ↓DOWN

耐久:17 ↓DOWN

魔力:18 ↓DOWN

魔耐:17 ↓DOWN

敏捷:19 ↓DOWN

スキル:【鴉の呪い】【多言語理解】【アイテムボックス】【成長促進】

==========================


 なぜかそのステータスは呪われていた。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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