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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
アレクサンドリアの女王
186/192

1.プロローグ

大変お待たせいたしました!


色々と試行錯誤を重ねている所ではございますが、とりあえず続きを書いていこうと思います!


かなりのスローペースになると思いますが、ご了承くださいm(__)m

 魔族の襲撃に備えて騎士団及び異世界の勇者達は別れて門の警備にあたっていた。

 

 アレクサンドリアには三つの門がある。

 

 一つ目は昴達が『恵みの森』に向かう際に通った南門。

 そこからはアレクサンドリアの南の領地に行くことができ、ガンドラの街からの商人などがよく利用している。

 

 二つ目はアレクサンドリアから西に向かうための西門。

 西の領土は比較的魔物も少なく平和な土地であるため、『学園都市アカデミア』、『美食の町フーリ』といった多種多様な町が栄えていた。

 

 そして三つ目がサロビア平原へと続く東門。

 この門から行けるのは数少ない村と魔族の領地。そのため、この門を利用するのは冒険者か物好きな変わり者以外はほとんどいなかった。


 そんな東門に今は数多くの騎士達と【勇者】天海浩介、そして【薬師】の小川咲が門を守るように立っていた。


「……怖いかい?」


 隣で不安そうな顔をしている咲に浩介が声をかける。咲は浩介の方に顔を向けると弱々しい笑みを浮かべた。


「怖く無い訳ないじゃないですか。魔族の実力は未知数……でも、そのほとんどが人族よりも強力な力を持つ、と授業で習いました」


「…………」


「いくら私達が異世界の勇者だからといって太刀打ちできるかなんてわからないです。特に私は非戦闘員ですし」


「……そうだね」


「でも……」


 咲が上目遣いで浩介のことを見つめる。


「いざって時は守ってくれますよね?」


「……当たり前さ。僕は勇者だからね。誰も傷つけはさせないよ!」


 自信に満ちた表情で手に持つ剣を構えた。そんな浩介を見て、咲は心の底から安堵した表情を浮かべる。


 二人がそんなこと話をしていると、騎士団の一人がこちらに近づいてくる人影に気がついた。


「前方に人影が見えます!あれは…」


 その騎士の言葉に一瞬で門の前が緊張感に包まれる。浩介も油断なく剣を構えるとスッと咲の前に移動した。


 段々とその姿が露わになっていく。やって来たのはナイデル砦に向かっていた同胞の姿だった。

 ボロボロの鎧を見にまとい、至る所に傷があるにも関わらず、笑顔を向けながらこちらへと向かってくる。門の前までやってくると嬉しそうに声を張り上げた。


「報告します!サロビア平原において、無事魔物供を撃退することに成功いたしました!」


 一瞬訪れる静寂、しかしすぐに門の前は歓声の渦に包まれていった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 サロビア平原の戦いに勝利を収めたという報告は瞬く間に広まり、帰ってくるクラスメートを迎えるため他の門に出払っていた異世界組が東門へとやって来た。


「さっすがは俺たち異世界の勇者だよな!魔族如きに遅れはとらなかったって訳だな!」


「その通りです!でもお姉様がいればもっと簡単に魔族を打ち払えたです!」


 自分達の仲間の奮闘を月島葵は自分の事のように喜んだ。そんな葵を、実際には戦いを見ていないのにあたかも見て来たかのような口ぶりで仲田ひとみがよいしょする。

 アレクサンドリアの町の正門となる南門を守っていた北村香織も安堵の表情を浮かべていた。報告をした騎士はすぐに城へと向かってしまって詳しい情報は得られなかったのだが、戦いに赴いた異世界の勇者達は全員無事であるという事だけは残していってくれたのだ。親友の無事を知った今、思わず涙が溢れそうになる。


 そんな香織の下に浩介がやって来た。


「お疲れ様。みんな無事みたいで安心したよ」


「そうだね。みんなが戦いに向かった時はどうなっちゃうか不安だったけど、とにかく良かった!」


 本当に嬉しそうに笑う香織の見て、思わず浩介の顔にも笑みが浮かぶ。ただ今は確かめなければならないことがある、と浩介は真面目な顔を香織に向けた。


「結界の方はどう?何か異変はあるかな?」


 浩介の言葉に香織も表情を引き締め、首を左右に振る。


「私の"絶対聖域(サンクチュアリ)は問題なく発動しているから魔族の侵入はないと思う」


「そうか…それならよかった」


 浩介は頷き、サロビア平原の方へと視線を向けた。


 "絶対聖域(サンクチュアリ) 。使用者の意図せぬ者の侵入を阻む結界を生み出す【聖属性魔法】。その領域は並の使い手であれば半径数メートルの半球程度であるのだが香織が生み出した結界はアレクサンドリアを包み込むほどに巨大なものであった。

 【勇者】の浩介と【聖女】の香織、同じ【聖属性魔法】を使いこなす者同士であったがその性質は大きく異なる。

 浩介の【聖属性魔法】は攻めることに特化したもの。単体相手に爆発的な威力を発揮するものや多勢相手に真価を発揮するものなど、ありとあらゆる状況において相手を倒すという一点に絞った魔法であった。

 一方香織の【聖属性魔法】は癒しと護りを司るもの。【聖女】にスキルが内包する【護りの担い手】と【癒しの担い手】により、ステータス以上の効果を発揮する。

 そんな香織が結界を張っている以上、香織に気づかれずに街に入ることは不可能であった。


「それにしても…」


 浩介は皆がいるところから少し外れたところに目をやると眉をひそめる。松明の灯が届かないような場所に一人の男が佇んでいた。誰もが顔を綻ばせ、勝利を祝い、帰ってくる者達を待ち望んでいるというのにその男、玄田隆人は一人無表情で虚空を見つめている。浩介が見ている者に気がついた香織は表情を曇らせた。


「玄田君…本当にどうしちゃったんだろうね」


「この世界に来たのが原因、ってわけではないだろね。最初のうちは学校にいるときと変わらない様子だったし」


 浩介が隆人を注意深く観察しながらこの世界に来たばかりのころを思い出す。お山の大将よろしく、隆人はいつもと変わらず誠一達を引き連れ、こちらの世界でもやりたいようにやっていた。


「いまでは仲良しだった加藤達とも口をきいてないみたいだからね」


「……なにかあったとしか思えないよ」


 香織が口元に手を添えながら思い当たる節がないか記憶をたどるが何も思いつかない。だが隆人の様子がおかしくなったのかいつごろかだけは心当たりがあったのだが口に出すのは憚られた。

 そんな香織の気持ちを知ってか知らずか浩介が自分の考えを述べる。


「玄田が変わったのは彼がいなくなった時からだよね?」


 余りにストレートな物言いに香織は思わず目を伏せた。『恵みの森』での事件は彼女の心に深く刻みつけられており、未だにその傷は癒えずにいる。

 反応を見せない香織を不思議に思いながらもそれ以上尋ねるようなことはせず、浩介はブツブツと独り言を言い始めた。


「つまり玄田が変わったのは彼が原因って考えるべきか……そもそもあの二人は学校にいた時から仲が悪そうだったし、『恵みの森』に遠征に出た時に二人の間に何かがあったって考えるのが自然な流れか……」


 いくら浩介の言葉を聞きたくないと思ってもこの距離で独り言を言われれば嫌でも耳に入ってくる。この場から離れたい、と香織が考えていると前の方にいた騎士達がなにやらざわめき始めた。


「雫達が帰ってきたんじゃない?」


「ん?あぁ、そのようだね。早速みんなの元気な顔を見に行こう」


 これで浩介の話を聞かなくて済む、と内心安堵した香織は浩介と共に帰って来た者たちが見える位置まで移動する。

 ナイデル砦への道から先頭で現れたのは松明を持っているガイアス、そしてフリントの二人。それに続いて雫達、そしてなぜか『龍神の谷』に行っていたいたはずの美冬達の姿も確認できる。全員が疲れた顔をしつつも、安堵に満ちた表情をしていた。


「えっ……?」


 帰って来た者たちの顔を一人一人眺めていた香織の口から言葉が落ちる。自分の見慣れない者たちが何人かいる中、一人だけ懐かしい姿があった。今も瞼に焼き付いている、自分を’グリズリーベア’の魔の手から守ってくれたあの姿。


「う、そ……」


 大きく見惹かれたその双眸には黒いコートを着た黒髪の男がうつっていた。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 魔族との戦いを終えた者たちが帰ってくるということで浮かれ気味な周りを見ながら隆人は内心で舌打ちをした。今の隆人にとって魔族も王国の人間も大差などなく、今回の戦いも一欠けらの興味もわかなかった。

 それでも隆人がこの場に来たのは(ひとえ)に雫の無事な姿を見たかったからである。邪魔者を排除したのも雫のため、いや正確には雫を手に入れたい自分のためだった。そのせいで誰ともわからないやつからそれをネタに脅迫される始末なのだが。


「……いや誰ともわからない奴なんかじゃねぇ」


 闇夜を見る目を鋭くしながら隆人は呟いた。頭の中には一人の男が描き出される。


「前田の野郎……」


 隆人の言葉には憎しみがこめられていた。戦いに出る前に自分の前に姿を現した健司は「これで全部終わらせる」と言っていた、そして「霧崎にバレなくてよかった」とも。

 それを知っているのは隆人を脅している犯人以外にあり得ない。全部終わらせるという言葉の意味が気がかりではあったが、それも帰ってきた奴を締めあげれば済む話。


 そんなことを考えていると、周りの騎士達がざわざわとし始めた。待ち望んでいた者たちが帰ってきたのであろう、隆人も身を乗り出し目当ての人物を探す。

 ガイアスの後ろにいる雫を見つけた隆人は自然と笑みがこぼれた。疲弊はしているもののその姿は隆人の憧れた、凛としている美しいものだった。こちらに向かってくる誰よりも眩い光を放っている雫に隆人は見惚れるばかり。それは荒み切った隆人の心に救済を与えるようであった。

 雫の後ろから次々にやって来る者達は隆人にとってはどうでもいいことであった。


 どうでもいいことのはずであった。


 えっ?


 冷たい風が吹く。


 なんで?


 黒雲が空を覆った。


 なんでお前が?


 月あかりが遮られる。


 なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?

 

 世界が黒に染まった。




























 ナンデオマエガソコニイル?




























 隆人の【オートメイル】が発動し、その身体を鎧が覆った。’アイテムボックス’から取り出した覚えのない愛用の大剣がいつの間にやら自分の手に握られている。


 頭で考える前に身体が動き出した。剣を握る手に力をこめてただひたすら一直線に相手に向かって走って行く。

 

 身体が熱い。煮えたぎるように熱い。


 正直自分が何をしたいのかもわからない。ただただ勝手に足が動く、前へと進む。


 全員の視線が身体中に刺さっても止まることはできない。自分の身体なのに自分のものではない錯覚に陥る。もういうことをきかなくなっていた。


 目の前に立ち、敵の姿に間違いないことを確認する。奴は自分が猛然と走り寄ってきたことにさして驚いていない様子であったが、そんなことは関係なかった。


 ジャマモノヲコロセ。


 頭の中にあるのはその言葉だけ。


 隆人は本能の命ずるままに手を上にかざし、何の迷いもなく大剣を振り降ろした。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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