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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
サロビア平原の戦い
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42.エピローグ

 ナイデル砦で昴の話を聞いた一行は完全に日が落ちたというのにアレクサンドリアの道を進んでいた。魔族との戦いにより疲弊している事を慮ってガイアスがナイデル砦で朝まで身体を休めるか尋ねたが誰も首を縦には振らなかったため、強行軍で一直線に城を目指している。


「あいつは…相変わらずイケメンに弱いのな」


 前を歩くニールにつきまとう千里を見ながら昴は呆れたように言った。千里はわかりやすいぐらいに色目を使っており、普段より胸元を強調させるようにはだけさせている。その後ろにはいつものように萌が付き従っていた。

 当のニールは女性相手でしかも昴の知り合いというわけで無碍に扱うわけにもいかず、かといってこんな積極的なアプローチなどされたことなどなく、ほとほと困り果てていた。

それは中々興味深い光景であり、昴はニヤニヤ笑いながら何も言わずに眺めることにする。


「まぁニールは男の俺から見てもめちゃくちゃカッコいいからなぁ….渡辺じゃなくてもああなるだろ。ほれ、上田を見てみろ」


 昴の隣で面白がりながら観察していた優吾が萌を指差した。千里とニールの少し後ろを歩く萌は顔を真っ赤にさせながら俯き、時折チラチラとニールに熱のこもった視線を向けている。


「ニールの奴…いつか女に刺されるな」


「ニールもスバルだけには言われたくないのじゃ」


 突然、優吾の頭の上に乗ったタマモがひょっこり顔を出した。昴はタマモに視線を向けながら顔をしかめる。


「どういう意味だよ?」


「タマモ降りろ。重たい」


「どういう意味も何もそのままの意味じゃ!」


 タマモは優吾の頭の上であどけない笑みを浮かべるが昴の表情は更に苦いものになっていく。


「全然意味がわからねぇな」


「はぁ…これだから昴はダメなんじゃ」


「降りろっつーの」


 首だけでタマモの全体重を支えている優吾の顔がどんどん赤く染まっていくがタマモはお構いなしでブラブラと身体をゆすり始めた。


「ガンドラの街ではフランとパルム。ルクセントではサガラとココ。サクヤは…微妙なラインかの」


「いや無視すんじゃねーよ!首が折れるだろうが!」


「そいつらの共通点が全然見出せないんだけど」


「だからスバルはダメなんじゃ!少しは女心を学ばんと…」


「降りろぉぉぉ!!このアホ狐がぁぁぁ!!!」


 ついに我慢の限界を迎えた優吾が頭上に手を伸ばすと、タマモはヒラリと身を翻し軽やかに地面に着地した。そして艶っぽい笑みを浮かべながら肘でツンツンと優吾の身体をつつく。


「なんじゃあ、ユウゴ。もしかして照れておるのか?」


「ないから。お前に照れるのだけは天地がひっくり返ってもないから」


「またまたー。うちはしっかりと覚えておるぞ?戦場でユウゴがした熱い告白の事を」


 その瞬間ピシリと音をたてて優吾が石化する。きゃっ、と頬に手を当てて照れているタマモを無視してゆっくりと昴に目を向けると、聖人君子のような笑みを浮かべていた。


「タマモ、その話を詳しく教えてくれ」


「まだ昴には話しておらんかったの!あれはユウゴのもとに駆けつけた時のことじゃ」


「なっ!!馬鹿!お前っ!!」


 慌てて優吾がタマモの口を塞ごうとするも、ぴょんぴょん飛び跳ねながらその手を躱していく。


「魔物に囲まれて絶対絶命のユウゴを助けるために華麗に参上した美少女タマモちゃん!うちが現れるや否やユウゴはうちの手を力強く握ってこう言ったのじゃ!『好きな女くらい守れないアオキユウゴじゃないぜ』っての!」


 昴の隣に飛んできたタマモが優吾の声真似をしながら言った。昴は笑いを必死に堪えながら、優吾の方に顔を向ける。


「そうだったのか。優吾、俺は応援するぜ?」


「………タぁマぁモぉぉぉ!!?」


 般若のような顔になった優吾は両手を開いてジリジリとタマモの方ににじり寄った。


「のほほー!この可愛い可愛いタマモちゃんを捕まえられるのものならつかまえてみるんじゃな!」


「待てコラァ!!」


 いきなり走り出したタマモを憤怒の形相で優吾が追いかける。こんな暗いのによくやるな、と昴は離れていく二人を見ながら苦笑いを浮かべた。


「本当に賑やかな人達ね」


 後ろから声をかけられ振り向くと、青みのかかった肌をした美女がこちらに微笑みかけている。


「まだお礼を言ってなかったな」


「あら、お礼なんて結構よ。私達は協力関係なんですから」


 涼しげな顔でそう告げるユミラティスを昴は黙って見つめた。

 

 氷の中にいた女。そしてなんの前触れもなく自分達についてくると言った女。


 何か目的があるようだがその内容については一切話さない。こちらも詳しい事情は教えてないのでお互い様ではあるのだが、そもそも自分についてくる事で果たせる事などあるのだろうか。

 昴は目の前にいる氷霊種(エケネイス)を信じていいものか未だに決めあぐねていた。


 だが今はそれ以上に気になる事がある。


「で?なんでお前らがユミラティスといるんだ?」


 昴がユミラティスの左右に控える亘と卓也に目を向けると、亘はキラリと眼鏡を光らせた。


「そんなの決まっているではないですか。綺麗なお姉さんとお近づきになりたいだけです」


 ドヤ顔で言い切った亘に昴がジト目を向ける。まぁ予想はしていた答えだったのでさして驚くこともなく卓也に視線を移した。


「僕は精霊族に興味があって話を聞いていたんだ。あと亘君のお目付役」


「なっ…お目付役とは失敬ですね!私はただユミラティスさんのいい香りを堪能しているだけです!」


「…すでに手遅れみたいだね」


「くすっ…本当に愉快な子達ね」


 ユミラティスが大人の微笑を浮かべると亘がだらしなく鼻の下を伸ばす。異世界に来て一番印象が変わったのは亘である、と昴は断言することができた。学校にいるときは規律を重んじる成績優秀な優等生。今はただのドスケベ眼鏡。

 しばらくユミラティスに見惚れていた亘であったが、急にブンブンと頭を振り、眼鏡を直すと真面目な顔を昴に向ける。


「それはそうと昴君」


「いや、今更真面目な顔されてもドスケベ眼鏡である事実は変わらない」


「ドスケベ眼鏡で結構!男はみんなドスケベな生き物なのです!」


 開き直った亘を憐みの込めた目で見ていると、亘はオッホンと咳払いをした。


「私のことはいいんです。それよりもあなたのことですよ」


「俺の事?」


「このまま城に戻っていいのですか?」


 亘が先程までとはうって変わって真面目なトーンで昴に問いかける。昴も真剣な表情に変わり、顎に手を添えた。


「当然わかっていると思うけど、王国は魔族に対応しうる強者を欲している。昴君が王国に戻ればどうなるかなんて火を見るより明らかだよね」


「卓也君の言う通り、良くて城に缶詰め状態。悪くて昴君を武器に王国は魔族に戦争を吹っ掛けるでしょう」


 亘が言っていることは昴も考えていた。今回の戦いで騎士団どころか異世界の勇者ですら力不足を痛感することになり、王国は早急に新たな力を求めることは想像に難くない。


「お前らの言いたいことは分かっているよ。このままバックレちまった方が色々と楽なんだろうけどよ…」


 昴は二人から視線を外すと夜空を見上げた。


(すじ)は通さなきゃならねぇだろ?」


(すじ)…ですか…」


 亘が少しだけ顔を俯かせながらスッと眼鏡を直す。


「今更って感じはするけどな。でも生きているってことがばれた以上、ちゃんと女王様に好き勝手動く許可をもらわねぇとな」


「………」


 卓也が何とも言えない表情で昴を見つめた。亘も難しい顔で何かを考えこんでいる。


「………それは私達のためでしょうか?」


 亘から出た予想外の言葉に昴は目を見開いた。そんな昴を見て卓也は呆れたように肩を竦める。


「大体昴君の考えていることは分かるよ。君が好き勝手やったら僕達他の異世界人が立つ瀬がないって考えているんでしょ?」


 昴は何も言わなかったが、その無言がもうすでに答えであった。卓也と亘は昴を見ながら大きくため息を吐く。


「な、なんだよ?」


「あなたも大概ですね」


「お人よしっていうかなんていうか」


「うるせぇな!」


 拗ねたように顔を背ける昴を見て、二人は苦笑いを浮かべた。


「お話は終わったかしら?」


 それまで黙って三人の話を聞いていたユミラティスがおもむろに口を開く。三人が同時に目をやるとユミラティスが笑顔で前を指さした。


「そろそろ城に着くんじゃない?」


 ユミラティスの指を辿ると、先頭を歩くガイアスが持つ松明の光とは違う明かりが目に入る。あれはアレクサンドリアに入るための門を照らす光。結構な時間歩いてきたがようやくアレクサンドリアにたどり着いたのだった。


「とりあえず込み入ったことを考えるのは後だ。もし軟禁状態にされそうになったら一暴れして脱走するさ」


「そうね。私もやらなきゃいけないことがあるからご一緒させていただくわ」


「後はニールとタマモがいればなんとかなんだろ」


 昴の言葉を聞いた二人は人知れず震えあがる。昴達の力を知っている手前、四人が本気で暴れたら冗談抜きでアレクサンドリアが壊滅する気がした。


 アレクサンドリアに近づくにつれ、門の前に複数の人間がいることに気づく。その中心にいるド派手な銀色の鎧をまとったイケメンによりその集団が何の集まりかは大体察しがついた。


「天海のあの鎧、派手すぎじゃね?」


「まぁ目立ちたがり屋ですから」


 亘がひどくどうでもよさそうに答える。他のクラスメートの姿も視認することができるようになったところで、昴は眉をひそめた。


「どうしたの?」


 そんな昴の様子に気がついた卓也が声をかけると、昴は頭をトントンと叩きながら首をかしげる。


「なーんか忘れている気がするんだよなぁ…」


 魚の骨がのどに突っかかったような、何とも嫌な感じがした。

 

 アレクサンドリアに戻るにあたって亘が言った問題以外の何かがあったような気がする。


 昴が必死に頭を悩ませていると、門の前にいた一人の男が猛スピードでこちらに走ってくるのが見えた。その男はがっしりとした体形に鉄の鎧を装備しており、手には魔物を斬り刻むには十分すぎるほどの巨大な剣を持っている。


「…あっ」


 昴が思い出した時にはもう男は目の前まで来ていた。誰もが目を丸くして自分を見ているというのに、その男は昴にしか目がいっていない。至近距離でターゲットを確認すると、その男は手に持つ剣を高く上げ、目の前の敵目がけて振り下ろした。


==========================

名:楠木 昴  年齢:17歳

性別:男 出身地:アレクサンドリア

種族:人族 

レベル:615

筋力:4986

体力:4322

耐久:4250

魔力:4601

魔耐:4458

敏捷:5119

スキル:【鴉の呪い】【多言語理解】【アイテムボックス】

※【鴉の呪い】…【双剣術】【気配察知】【気配探知】【気配遮断】【黒属性魔法】【威圧】【夜目】【成長促進】【???】

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名:タマモ  年齢:12歳

性別:女 出身地:ガンドラ

種族:亜人族・弧人種 

レベル:506

筋力:3231

体力:3108

耐久:2986

魔力:4952

魔耐:4374

敏捷:3825

スキル:【火属性魔法】【無詠唱】【炎の担い手】【身体強化】【第六感】【近距離戦闘】【気配遮断】【魔力増幅】【自己治癒能力】【嗅覚検知】【動体視力】【成長躍進】

==========================

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名:ニール  年齢:19歳

性別:男 出身地:龍神の谷

種族:亜人族・竜人種 

レベル:611

筋力:5578

体力:5236

耐久:5360

魔力:3015

魔耐:2745

敏捷:4441

スキル:【雷属性魔法】【身体強化】【槍術】【気配遮断】【気配探知】【気配察知】【自己治癒能力】【絶対耐性】【環境対応】【威圧】【龍鱗】【竜気】【竜神化】【逆鱗】

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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