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異世界召喚されたらなぜかステータスが呪われていた  作者: からすけ
氷霊種の女と戦いの兆し
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1.プロローグ

「女王様!魔族達が大挙をして押し寄せてきました!!ここはお逃げください!!」


 洞窟内に響き渡る声。そこには見目麗しい二人の女性の姿があった。


「…それはできないわ。私は氷霊種(エケネイス)の女王にして、霊峰ギルガを守護する者。たかだか魔族が来たくらいで引くわけにはいかない」


 臨戦態勢に入る女王を見てお付きの氷霊種(エケネイス)の女は唇を噛む。


「あなたがやられてしまえば封印が解かれてしまう、それを理解しているのでしょう!?」


「あら。ミルキは私がそんなヤワな女だと思っているの?」


 ミルキと呼ばれたお付きの女が声を荒げるが、暖簾に腕押し、全く意に介さず女王は獰猛な笑みを浮かべた。それでも今回ばかりは引き下がるわけにはいかない。


「…こちらに向かっている魔族の部隊について偵察は済んでいます。今回の進軍は本気の様です」


「…誰が来ているの?」


 ミルキの声に緊張感が満ちているが故、女王は目を細めて尋ねた。


「七帝将のうち四名が部隊を率いて接近しております。それを束ねるのが'魔将'ベリアル」


「っ!?あの'破壊の魔女'が自らねぇ…」


 女王はさも愉快そうに笑みを向けるが、そのこめかみから流れる汗がそれを本心では無いとはっきりと告げていた。


「確かに今回は本気みたいね…魔族領をほったらかしにしていいのかしら?」


「王国には'獣将'が陽動として攻めている様です。帝国側には魔族領をどうこうする動きはありません。恐らく、帝国の人間に魔族の協力者がいるのかと」


「…これだから人族って信用できないわ」


 女王は顔を顰めながら思わず舌打ちをする。


「それにしてもベリアルが出てくるとは…」


 '魔将'ベリアル。名高い七帝将の中でも別格と恐れられる二柱の一人。自分と本気でやり合えば霊峰ギルガが消し飛ぶ可能性すらある上、確実に勝てるとも言い難い相手。

 ベリアル一人ですら手一杯なのに、一癖も二癖もある七帝将が他にも数人やって来ている。ミルキが尋常じゃない程焦っている理由が女王には理解できた。だかそれでも逃げるという選択肢はない。


「私が引くわけには行かないわ。ここで私が逃げたら確実に氷霊種(エケネイス)達が殺されてしまう」


「覚悟の上です」


 ミルキが真剣な表情で女王を見つめる。だが女王は首を左右に振ってそれを否定した。


「それではダメなの。王は慕う者を蔑ろにしてはいけない。部下に危険が迫っているなら先陣に立って守りぬく、それが私の女王としての矜持よ」


「女王様…」


 女王の力強い言葉にミルキは一瞬涙が溢れそうになったが、すぐに(かぶり)を振り、覚悟を決めた顔を向ける。


「女王様がお逃げにならない事はなんとなくわかっておりました。しかしあなたが我々を守りたいと思う気持ちと同じくらい、我々もあなたを守りたいのです」


 その声が合図だったのか、数人の氷霊種(エケネイス)が洞窟内に入ってくる。


「…なんのつもり?」


 女王が訝しげな表情を浮かべながら聞くも、ミルキはそれに答えない。


「これは氷霊種(エケネイス)総意の上での行動。女性様に対する無礼への叱責は我々が生きて戻った時に甘んじて受けましょう」


「あなた達…まさかっ!?」


 女王が慌ててやめさせようとしても時すでに遅し。氷霊種(エケネイス)達が自身の魔力をミルキに託した後だった。


「今までありがとうございました。あなたが女王でよかった、心の底からそう思います…」


 ミルキが涙を流しながら女王に微笑みかける。


「"永久凍土の牢獄(ニブルヘイム)"」


 ミルキの両手から放たれたこの世の物とは思えない冷気が一瞬で女王の身体を覆い尽くす。気付いた時にはその身体は宝石のような氷に包まれていた。


「さようなら…私達の女王様」


 そう呟くとミルキを含む洞窟に入ってきた氷霊種(エケネイス)の面々が雪荒ぶ決戦の地へと赴く。氷の結晶の中からそれを見ていた女王の目から一筋の雫がツーっと頬を伝って流れ落ちるのだった。

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新連載、完結しました!(笑)『イケメンなあいつの陰に隠れ続けた俺が本当の幸せを掴み取るまで』もよろしくお願いいたします!!
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