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『私の仕える神様が、』シリーズ

恋愛不得手のヴェルテルトと、春の女神のフローラ様

作者: 天川ひつじ

※短編『私の仕える神様が、婚約破棄に駆け付けたいと言っている』から派生したお話です。そちらを先に読まないと、分かりづらいはず。すみません。





ある時、春の女神フローラは、破壊神になる予定の神様見習いヴェルテルトに、ひざまづいて乞われた。

「どうか! 人間の色恋について教えていただけませんでしょうか!」


なおフローラの周りには、常に多くの存在がいる。皆一様に目を点にし、ヴェルテルトを見た。


そんな周囲など視界に入っていないかのように、ヴェルテルトは真剣な表情だ。

顔にこわばりと緊張さえ見える。


突然のショックから気を取り直し、フローラはまず尋ねた。

「・・・どうしてひざまづいてるの?」

「そのようにするものだと、学びました」

「誰がそんな事をあなたに?」

「・・・私の仕える神様」

「あ、それ冗談・・・」

「の、友人となった一人の人間が、そのようにするものだと、神様に助言を」

「・・・?」


良く分からない。

しかし、真剣な表情だ。

とりあえずヴェルテルトを立たせようとしたが、彼は動かない。フローラの返事待ちのようだ。


そういえば、彼について『真面目で融通が利かない』と、ヴェルテルトの仕える神、ミラライトが言っていたような記憶が。


「どうかご助力を、どうかお願いいたします」

フローラに手を差し伸べながらヴェルテルトが頭を下げたが、まるで求婚のような姿勢にフローラはなんだか困ってしまった。


周りの面々も困惑したままだ。


とりあえず、話を詳しくを聞こう。

ヴェルテルトの差し出す手に手を乗せてやると、弾かれたようにヴェルテルトが顔を上げ、願いを叶えてもらった無垢な子どものように瞳を輝かせた。


ドキリとした。


ヴェルテルトを弟子にした実りの神の気持ちが、分かった気分。


***


実りの神ミラライトについては、交流があるので知っているし、神殿を訪れた事も何度もある。

説明のために見てもらいたいと言われてついていった神殿にて、フローラは、机の上の書類の様子、見せられた水鏡が映した人界の様子に、納得した。

そして、ヴェルテルトのなかで様々な勘違いもあって、フローラに恋愛のアドバイスを求めてきたという事も。


確かに、恋に落ちることを『春が来た』と人間たちは表現するし、『恋の始まり』はフローラの得意分野。

ただ、ズバリ恋の神様、アフロディアもいるというのに。


不思議に思って尋ねてみたら、ヴェルテルトは赤面した。

「話すきっかけが、難しく・・・」

「それ、私ならまだ話しかけやすいって事ね?」


「申し訳ありません。あまりにも、こういったことに不得手で・・・。フローラ様ならば、少し、聞きやすいと、判断いたしました」

たどたどしい説明だが、フローラは肩をすくめた。

確かにこのヴェルテルトは恋愛は専門外だ。いきなりアフロディアに話しかけるのは、フローラに話しかけるのよりも難易度が高かったのだろう。


こうして、フローラはヴェルテルトの仕える神の恋愛について、ヴェルテルトに相談されるようになった。


***


フローラにはヴェルテルトが気がかりになった。

慣れない仕事で、ヴェルテルトはいつも手いっぱい。なのに仕える神様の恋愛まで心配している。

可哀想になってしまう。


だから、気分転換も兼ね、よく遊びに行くことにした。


いつもいつも、ヴェルテルトは大きな机に一人で向かって、必死で仕事だ。


もともと手伝いをしていたから方法はある程度知っているようだ。

だが、もともとは、任せて良いと判断された内容だけこなしていたらしいのが、一から全てとなって判断のつかないものも多いのだという。


自分とは違う分野の仕事なので、フローラが教えて良いものではない。部外者が教える事で、違う判断になってはいけないからだ。


それでも、差支えないと思う範囲で、つい口を挟んでしまうこともある。


「ヴェルテルト。これとこれは、後回しで良いと思うわ?」

「え。あ、はい。そう、ですか」

ヴェルテルトは、戸惑う。

判断理由が分からないと前にも尋ねられたが、それ以上は答えようがない。

『強欲の願い』は却下して構わないとフローラは思うけれど、今のヴェルテルトにはどれが『強欲』となるかの判断基準も育っていない。


実りの神ミラライトは人界にはいるが、力を持ったままだ。だから、ヴェルテルトが、どの願いにどの程度実りの神の加護を与えるかを決める部分をこなしている。

1つ1つ、丁寧に読み、吟味し、悩み、調べるので、相当な時間がかかる。

実りの神ミラライトならば、きっと適当に「これはちょっと」「これ無し」「あ、大賛成」というノリであっというまに決めていくだろうに。


ちなみに他にも仕事はある。

その一方、水鏡を見やって、仕える神の恋愛の行方を気に掛ける。健気である。


真面目なのね。


フローラにできることは、頭を撫でてやることぐらい、だろうか。


***


ところで、フローラも、実りの神ミラライトの恋愛の様子は見て楽しい。


ヴェルテルトはとてもとても気にかけているが、フローラから見れば、彼らの恋はもう始まっている。

だけど、それは秘密のことだ。

眺めていると幸せな気分になってしまうけれど、彼らが自覚するまで見守ろう。


ふと、視線を感じてチラとみると、ヴェルテルトと目が合った。ヴェルテルトは一瞬目を見開き、慌てたように視線をそらした。そして顔を赤らめた。


フローラは、ヴェルテルトが自分に恋心を持っている事に、気が付いた。

フローラは少し動揺した。

ヴェルテルトの恋心に気が付かないふりで、また水鏡を見る。それから、笑んでしまった。


***


もどかしい。


ヴェルテルトは、確かに恋愛が不得手である。

しかしフローラにも理想がある。できれば、こう、もうちょっと何かアクションを起こして欲しい。


フローラだって、好意的に思う相手だからこそ、気にかけて頻繁に遊びに行っているわけだ。

気づいてよ。

普通、恋愛相談を頼まれたからって、毎日のように顔を見に行くわけないでしょう?

初めより、最近の頻度の方が上がってるでしょう?


しかし相手からは何も無い。


ううーん。

ちょっとだけ考えたフローラは、ある時、うん、と決心した。とりあえず連れ出しましょう!


「ヴェルテルト! お仕事ばかりは駄目よ。息抜きに、午後は遊びに行きましょう! 水鳥の湖で空に雲を飛ばすの。どう?」

「え、あ・・・」


本日も必死で机に向かっていたヴェルテルトは、驚いて顔を上げ、それからフローラの発言に戸惑った。

迷っているのが見て取れる。

心が揺れ動いているくせに、目の前の仕事量が彼をこの場に縛り付けている。


ちら、とフローラは水鏡に目をやった。

今日も今日とて、彼の仕える神様は一生懸命恋愛に向かっている。

彼もこのように進んでいいはずである。


なのに、ヴェルテルトは、頭を下げた。

「あの・・・申し訳、ありません。少し・・・難しいです。お誘い、ありがとうございます・・・」

何か言っているのを最後まで聞かず、フローラは若干腹をたてて、本日も腰かけていた机から飛び降り立ち上がった。

「分かった! 良いわよ」


フローラの言葉に、ヴェルテルトが目を伏せ表情を強張らせた。

その様子にフローラもひるんだ。


追い詰めては、可哀想だ。

彼は能力外の事を必死でやっているのに。恋愛だって不得手だって知ってるのに。


申し訳なさが優って、フローラは退出しながら、少し振り返って、ちょっとだけ、再度お誘いの声をかけた。

「・・・根を詰め過ぎよ。気が向いたら、ちょっとでも良いから、来てね?」


ヴェルテルトがうろたえて、立ち上がりかけたのが少しだけ見えた。


追い詰めてしまったのが情けなくて、加えて来てくれないような気がして、フローラは少し気落ちしてそのまま扉を閉めた。


***


ヴェルテルトに断られてしまったので、フローラは、いつも集まってくる楽しい面々と一緒に湖に出かけた。

フローラが行くところは穏やかな風が吹き、気候も安定し、周囲も幸せな気分に満ちる。

だからどこに行っても歓迎される。


気落ちしていたのをすっかり忘れて、皆と楽しく過ごしていると、自分の管轄の空間内にふっと冷えた部分が生まれたのに気が付いた。

誰が来たのかしら、と視線で遠くを探す。


ヴェルテルトの、後ろ姿があった。


あれ。来てくれたのね。


フローラは戸惑った。


でも、ヴェルテルトは声もかけずに、帰っていってしまったのだ。

フローラに異常を感じさせる程度の、暗さをまとって。


「フローラ様、見て、この笛手作りなんだよ!」

「え、あぁ。まぁ、ほんとうね、きれいな若葉色!」


周りに声をかけられて、フローラは気になりながらも、遊びの輪に戻る。


***


ところで。

ヴェルテルトの方は、明らかに暗雲を背中どころか周囲全体に背負っていた。


抑えようと思うのに、ため息ばかりが漏れてしまう。


せっかく、フローラ様が声をかけて来てくださったのに。


すぐに「行きます」と返事できなかった。断ってしまった。

それでも声をかけて来てくれた。


一方、情けない事に、仕事が手につかなくなってしまった。

それなら、本当に気分転換だと思って、行った方が良い。

もう昼から数刻立っていたが、湖にまだおられるかもしれない、と可能性を求めて湖に行った。


そこで見えた光景に、ヴェルテルトは立ちすくんだのだ。


フローラ様がいて、他の方々もいて、心から楽しそうだった。

湖も、あたりの空気も含めて、とても美しい光景だった。


とても、自分が入れそうにない。


きっと、あの調和した空間を壊してしまう。

あんな風に馴染める自信も無かったし、自分には歌ったり踊ったりなんて芸当は持ち合わせていない。


そうだよな、とヴェルテルトは思った。

フローラ様は、優しいから、自分にも気さくに誘ってくださった。当たり前のことだ。

その他の方々大勢と同じに、だ。当たり前だ。


どうして、たった一人待っておられるなんて勘違いをしたのだろう。


きっと、自分が加わろうが、行かないままだろうが、フローラ様には何の違いもない。


恋とは惨めになるものだと、知っていたけれど。

自分にはまだ早いに、違いない。


***


神殿の前で、ヴェルテルトは立ち尽くした。


仕事だってきちんと回せていない。

加えて、フローラ様への気持ちをどうしたら良いのだろう。


立ち尽くしている間に、日が暮れてきて、夕闇が迫ってきた。


「・・・」


神様。お願いです。どうか知恵を。助けてください。


ヴェルテルトは心底願い、目を開けた。


そうして、神殿に背を向けた。


***


一方。


もう遅くなったけど、大丈夫よね?

フローラは、星明りの美しい時間帯に、少し様子を見に実りの神たちの神殿を訪れていた。

この時間でも、ヴェルテルトが仕事をしているのは今までに十分わかっている。


なのに、訪れた神殿には、灯りが全くついていなかった。

「あら?」


フローラは周囲を移動して確認しようとした。

木々に隠れている部分はあるが、けれどやはり、誰もいない様子だ。

神殿というものは、神が不在であるとその機能を閉じる。つまり、ヴェルテルトさえ不在という事か。


フローラは困惑した。

昼に、ヴェルテルトの後ろ姿を見た。すごく沈んでいたけれど、何か大変な事があった?

事態を尋ねようにも、主となるものが不在なので、問いに答えるものもない。


「え。待って、ひょっとして・・・私、嫌われてしまったの?」

門の前でウロウロとしていたフローラは、ふとそんな可能性にたどり着いてゾッとした。


神殿の中に誰もいないのではない、フローラが拒絶されているだけなのでは?

中に住む神々が心を許したものだけが、その神殿に入る事が出来るのだ。


今まで拒絶された経験がないから知らないだけで、拒絶されてしまったら、灯りさえも自分には届かなくなるのでは・・・?


「え。嘘・・・」

仕事を置いてヴェルテルトが不在になるはずはない。

その状態を知っているのに、自分が遊びの誘いをかけたから?


彼は、あの時、再度の誘いを改めて断りに来たのではないのだろうか。ヴェルテルトは、本当に真面目で、とても律儀なのだから。

でも、自分たちがあまりに能天気に遊んではしゃいでいたから。

怒ってしまった?


まさか。

でも、あんな空気をまとった後ろ姿・・・。来たのに、声もかけてくれなかったのは、やっぱり、怒ったから?


「嘘・・・」


初めての事態に、フローラは地面に座り込んだ。

心配したものたちが、フローラのために集まってきた。フローラは蒼白な顔のままだった。


***


朝。

ヴェルテルトは驚いた。


神殿に戻ってみれば、門の前、フローラ様が座り込んでいる、と分かったのだ。

急いで門を開け、自分も飛ぶように門に移動する。

開門したというのに、フローラ様は入って来ず、外からじっとヴェルテルトが迎えに行くのを待っていた。


「どうされたのですか!?」

「私・・・あの・・・ねぇ、昨日は、どこかに行っていたの?」


どうして知っているのか、とヴェルテルトは息を飲んだが、俯きながら上目がちなフローラ様の可愛さにヴェルテルトはやられた。

正直に白状した。

「はい。あの、私の仕える神様のところに」

「え。あ、そうなの・・・」

「はい。そうですが? どうされたのです?」


明らかにホッとした様子のフローラ様を、ヴェルテルトは心配した。

余程訴えたかったのだろう、フローラ様の周囲が、ヴェルテルトに声を上げた。

「昨晩から、ずっと待っておられたのです! 暖かいお茶を! おもてなしを!」

「えっ、シーッ、秘密って言ったでしょう!」

「昨晩から?」


フローラ様とヴェルテルトがそれぞれ驚き、とりあえずヴェルテルトはフローラ様を神殿に招いた。

周囲の者たちはヴェルテルトの管轄外なので、門の外で待機となる。


***


「昨日・・・急に何かあったの?」

「・・・秘密です」

温かいお茶を召し上がりながらのフローラ様の問いかけに、ヴェルテルトは目を逸らした。


「・・・そう」

少しもどかしそうにされたが、まさか、

『仕事の大変さと、フローラ様への恋心について相談に行っていました』

などと正直に言いたくない。仕事についても完全に泣きつきにいっただけになった。

それでも、自分を労わってくれたし、判断基準をくれたので、ヴェルテルトは救われたわけだが。

尊敬もしている神様のためにも、頑張ろう、という気持ちを改めて持った。


なお、恋については、神様とヴェルテルト2人で頭を悩ますのでどうしようもなかった。

だけど、互いに励まし合う事で気持ち的に回復することができた。

解決策がなくとも理解し合う事は力となるのだと身をもって実感して帰還した次第である。


「昨日、あの、来てくれたのに、帰っちゃったのね」

と、フローラ様が、表情を硬くしながら、ヴェルテルトに尋ねてきた。

ヴェルテルトはハッとした。

「申し訳ありません。お誘いいただいたのに・・・」


「・・・どうして、来てくれたのに、帰ってしまったの? 聞いても、良い?」


この問いに、ヴェルテルトはどう答えて良いのか分からなかった。

自分が思ったことを素直に教えて、自分が酷く暗い性格だと知られるのも怖かったし、そんな話はフローラ様には相応しくないだろうとも感じていた。


「お願い。私を見てくれる?」

乞われたので、ヴェルテルトは顔を上げて、対面に座っているフローラ様を見つめた。

可愛いけれど美しい顔立ちだ、と改めて思う。

わざわざ、こんな自分のために、時間を割いてきてくださるなんて。

とても優しい気さくな方だ。


「ヴェルテルト。あの。立って」

急に、フローラ様が少し思いつめたようにヴェルテルトに指示を出した。


***


フローラは、決意した。

昨晩の動揺で、自分の気持ちはよくよく分かった。私はヴェルテルトが好きなのだ。

もともと知っているけれど、彼に嫌われるのは、絶対に嫌。


それで、目を見て確認したけれど、やっぱりヴェルテルトも、私の事を気にかけている。

これはうぬぼれでは無いと自信がある。


ヴェルテルトは恋愛ごとが本当に苦手で、どうしていいのか分からない。

うん。

だったら、私から動くしかないじゃない?


「ヴェルテルト。あの。立って」

フローラの言葉に、ヴェルテルトが驚きながら、素直に立ち上がってくれた。フローラが何を言うのか戸惑いながらも待っている。


フローラ自身も立ち上がった。


私は、春の女神。恋の始まりの神様、でも、ある。

だから、始めましょう?


向かい合って、フローラは、言った。自分からは初めてだったので、かなりの勇気を要した。

「私は、ヴェルテルトが好きです! 恋人になってください!」

「えっ!」

ヴェルテルトが驚いた。言葉を失ったらしく、口を開けたまま固まったようにフローラを見ている。


なによぅ、告白してもダメなの?

恋愛の神様アフロディアぐらいでないと、ヴェルテルトには効かないの?


あまりの相手の反応に、フローラは半泣きになって笑った。

「・・・私みたいに、自分から告白するタイプは、嫌い?」

「いいえ! 好きです! 大好きです!」

被り気味に、ヴェルテルトが大声で叫んだ。それから、真っ赤になった顔を見て、フローラも目を丸くした。


「好きって、言ってくれた! ヴェルテルト!」

「え、わ」

フローラはヴェルテルトに抱き付いた。ヴェルテルトは思い切り挙動不審になっている、が、もう気にしない。


ヴェルテルトがどうしていいのか分からないなら、私から行こう。

フローラは嬉しさに溢れつつも、己に誓う。


嫌われてなくてホッとした。夜の訪問相手が、実りの神様でホッとした。

他の誰かにとられたくないし、自分が彼を幸せにしたい。


チュッとフローラからキスをする。

ヴェルテルトはやはり驚いたが、今まで見た事のない、とても嬉しそうな顔を見せた。


***


ヴェルテルトが自分からまともに言えたのは、随分経ってからの事である。

「私を、選んでくださって、心から感謝しています。愛しています」


フローラ様がクスクスと嬉しそうに笑う。


***


ところで、ヴェルテルトが仕事を頑張りすぎたせいで、神殿はヴェルテルトと、ヴェルテルトが心底心を開いているフローラ様を主と認めてしまった。

つまり、神殿は、ヴェルテルトとフローラ様の住まいとなった。


破壊神となるヴェルテルトだが、実りの神様の仕事をし続けた影響で、収穫が得意分野の破壊神に育ちつつある。

能力とはこのように身についていくものらしい。


しかし現在、とても幸せそうに人界でお過ごしなのだが、ヴェルテルトが仕える神様が戻って来られたらどうなるのか。神殿を見て驚愕されるに違いない。


まぁ、その時また、考えよう。


ちなみにフローラ様は、ヴェルテルトが苦労したのを知っているので実りの神様に腹を立てているところがある。一緒に住むのは嫌らしい。

そう言われるとヴェルテルトは困惑してしまうけれど、非常に申し訳ない事に、自分だって同じだったりする。


「私とあなたの住まいに、神様がおられるのも・・・」

「私の方が大切ですものね?」

「はい」

ヴェルテルトの答えに、フローラ様がクスクスと笑う。

「私に言わされてない?」

尋ねられたので、ヴェルテルトも笑む。フローラ様のお陰で、笑顔が柔らかくなったと、増えてきた周囲に褒められることが多い。


「私の仕える神様も尊敬していますが、この話は別です。あなたが良いです」

「なら良かった」

「・・・あなたは?」

ヴェルテルトが言葉をねだると、フローラ様が楽しそうに嬉しそうにクスクス笑う。


あなたが良いに決まっているわ。もちろん。


囁き声の後にキスまでもらった。ヴェルテルトは幸せをしっかりと抱きしめた。

 

 

 

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