―いつもと違う日常の始まり―
ここまで読んでくださった方々ありがとうございます!
今回から明弥とシェアーズの同居生活が始まって本格的に物語が進んでいきます!
気が向いたときにでも読んでくだされば嬉しいです(´ワ`*)
―ジリリリリリリリリ。
バンっと力強く目覚まし時計を止めて時刻を見る。7時丁度だ。
昨日は夕食もとらず寝たから19時くらいに寝たんじゃないだろうか。
おかげで睡眠時間は充分すぎるほどで一回目のアラームで起きることができた。
ベッドから起き上がり制服に着替えようと着ている服に手をかけて気づいた。
『昨日制服のまま寝たんだっけか…』
いつもどんなに眠くてもスウェットに着替えてから寝るのに一体なぜ。
よほど熟睡したのかあんまり昨日のことが思い出せない。
まあいいか、とそのまま部屋を出る。
『あー…パン焼かないとな…』
両親は家に居ないので家事(と言えるほどやってない)は俺が全てやらなければいけないので面倒くさい。
男が自炊だなんてたかが知れてるもので、ほとんどパンやコンビニ弁当である。
栄養バランスとかそんなもの考える暇はないし考えられる脳も持ち合わせていない。
あくびをしつつ階段を降りて右手側にある居間と台所に繋がるふすまを開ける。
「あ、明弥さん!おはようございます。朝食出来てますよ。勝手に材料使っちゃいました…えへへ。」
…そうだった。俺は昨日こいつらに会って一緒に住むことを許可したんだっけか…。
居間のど真ん中にあるテーブルと4つあるイスに陽菜と結月が隣あわせに座っていて、結月の向かいに優芽が座っている。
居間に入ったばかりの俺からみると陽菜と結月は背中しか見えていなく、優芽の笑顔は確実に俺をとらえている。
これは要するに俺の席は優芽の隣。結月の向かい。陽菜の斜め右しかないということか?
いやいやいや!昨日まで「お前らなんて嫌いだ!」みたいなことを言っておいて、
次の日になったら仲良く食卓を囲んで「美味しいね☆」とか言いながら朝食を食べるとか意味わかんねえだろ!!
そんなことになったら幽霊だの死人だの以前に自分のことを嫌いになりそうだ…。
そう思いつつもテーブルの上をみてみると、味噌汁と白米と焼き魚と漬物が4人分おかれている。
久々に朝食らしい朝食を見た。
それにしても焼き魚とか漬物だなんて家にあったか?そんなもの俺が買うわけがないんだが…
「あ…冷蔵庫や冷凍庫を見たら冷凍された魚とタッパに入った漬物があって…ご自慢の手作りの漬物だから食べてねってメモも書かれてたのでつい…明弥さんは漬物嫌いなんですか…?」
俺が不思議そうに焼き魚と漬物を見つめていることに気づいたのか優芽はそう言ってきた。
そうか、思い出したぞ。
確か2、3日前に近所のシェアーズのオバサンが俺の家に訪問してきたんだ。
そして訪問してきた挙句、強引にグイグイ漬物と魚を押し付けてきたから仕方なく受け取ったはいいものの、
シェアーズが作ったものとか何だか気持ち悪いのでそのまま放置していたんだった。
「…優芽姉…こんな目の前にご飯おかれておあずけは辛い。」
そう優芽に言う陽菜は寝起きだからか髪の毛がボサボサで、少しは女の子らしくしたらどうだ?と言いたくなるほどだ。
「…美味しそうなにおいする。優芽おねーちゃんお料理上手…?」
そんな陽菜とは違い結月の今日の髪型は耳より少し高い位置で二つにリボンでしばられている。
寝起きだというのに結月のことはしっかりとやるとこを見る限り、陽菜も根はいい子なんだとは思うが…
「こんな無愛想で態度も悪い奴なんて待ってる必要ない。ねえ、優芽姉。もう食べていい?」
『だからお前に言われたくねえっつってんだろ!!お前が一番無愛想だ!!俺が今まで出会ってきた中で一番無愛想だ!!ノーベル無愛想賞があったら間違いなくお前にくれてやる!!有難く思え!!』
勢いにまかせて全力で陽菜の言葉に反論をした。いや、反論せざるをえない。
どうしてこいつは俺に対してだけこんなに可愛げがないんだ!!
朝からこいつと話していると脳みその血管がすべて破裂しそうだ!!
そんな俺の言葉を無視して陽菜は割り箸をパキッと割り、
「いただきます」と言いながら味噌汁に手をつけようとしていたので
『駄目だ』
味噌汁をとりあげた。
「…っ。何ですか。自分の分があるにも関わらず人の食べ物を取り上げるだなんて随分と下劣なことをするんですね。」
『お前なあ…!人が黙って聞いてれば―。』
「黙ってなかったじゃないですか。黙るどころか対抗してきて、なんだか年下と話してるみたいでした。」
『だあああああああああああ!!もう我慢ならん!!よし分かったそんなに俺が嫌なら今ここでプロレスでも―。』
―ピーンポーン―
味噌汁を置き、年下の陽菜とプロレスで決着をつける!などと怒りで冷静な判断が出来なくなっていた俺を我にかえすかのようにインターホンが鳴った。
こんな朝早くに訪問客だなんて珍しい。とりあえずカメラの映像を見て誰か確認してみると…
『…拓夢?』
拓夢が居た。
拓夢は美化委員なので、いつも早めに登校して花壇の花に水やりをしている。
それなのに今日はどうしたんだろうか。
ガチャっとドアを開けると拓夢がこちらを覗き込むように「おはよう。明弥。」と言ってきた。
『ああ。おはよう。こんな時間にどうした?水やりがあるんじゃないのか?』
「うん。そうなんだけど昨日の明弥…なんだか変だったからさ、僕でよかったら相談に乗りたいなって思って…水やりの仕事は昨日のうちに別の美化委員に頼んだんだ。」
昨日のこと…?
昨日拓夢と何かあったか?いや、全く思い出せない。
「何回も電話かけても明弥でないからさ…何かあったのかなって僕すごい心配したんだよ?」
着信?
その言葉にハッとして急いでポケットに入れた携帯を出して見てみると
『不在着信5件…』
拓夢から5回も電話がきていた。そういえば昨日しょうもないことで拓夢に電話した挙句ブチったんだっけか。はっはっは。
あんなしょうもないことでも拓夢はこんなに心配するだなんて…人が良すぎるどころの話じゃないだろう。
『すまんな、大したことじゃないんだ。まあまだ時間早いし。とりあえず中に入れよ。俺まだ朝食とってねえんだ』
「あ、うん。じゃあお邪魔するね。なんだか明弥の家に入るの久しぶりだなあ…」
こんなとこで立ち話もなんだしと拓夢を家にあがらせた。
まるで初めて俺の家に入るかのようにキョロキョロと家の中を見渡す拓夢を連れ、俺は居間のふすまを開け―。
「明弥さん。味噌汁冷めちゃいますよ?あ、そちらの方はお客さんで―。」
そして勢いよく閉めた。
「あ、明弥?どうしたの?それに今なんか誰かの声が聞こえたんだけど―。」
『拓夢。』
拓夢の両肩をガシっと力強くつかみ俺は言った。
『やっぱり駄目だ。花壇に水やりをしてこその拓夢だ。水やりをしない拓夢なんて俺の知ってる拓夢じゃない。さあ今すぐ水をやりに行こう。』
「え?え?な、何をいってるの明弥!?それになんだか目がすわってるよ!?」
『気にするな。大丈夫だ。俺も一緒に行ってやる。一緒に水やりをしよう。』
拓夢の腕をガシっとつかみ強引にドアまで連れていく。
「ちょ、明弥!どうしたのさ急に!うわっ!!」
そしてドアを開けて追い出した。
『そこで待っててくれ。すぐに準備をすまして出てくるから。』
そう言って俺は拓夢に今世紀最大の笑顔を見せた。
拓夢の頭上には終始『?』マークがついていたが気にせずドアを閉める。
そして居間へと向かい勢いよくドアを開けた。
「ひゃあう!?あ、明弥さん…ふすまの開け閉めは静かにやってくださいぃ…心臓に悪いですよぅ…」
ビクっと身体を動かし身体を縮めてぷるぷるしている優芽の目の前にある食事にはまだ手がつけられてない。
陽菜にバランスよく食べさせられている結月と、結月が食べてる間に自分も食べている陽菜とは違い、律儀に俺が食べ始めるのを待っていたんだろう。
だが、
『悪いがお前らシェアーズが作ったものなど食べられない。』
これが俺の答えだ。
「そ、そんなの駄目です!美味しいご飯をたくさん食べないと大変なことになっちゃいますよ!」
『俺は俺なりにパンでもなんでも買って食べる。』
「パンよりもご飯です!ご飯たくさん食べておなかいっぱいになったら―。」
優芽の言葉を全部聞かず俺はふすまを閉めて洗面所に向かい、早急に顔を洗い歯を磨いた。
普段ならパンを焼いてる間に済ませることだが、今日は早起きしたにも関わらず無駄な時間が朝からあったのでもう時間がない。
そしてタオルで顔を拭いてからカバンを持って家を出た。
…何が「そんなの駄目です!」だ。死人に口出しされる筋合いなどない。
家を出ると拓夢が待っていたので『待たせたな。行くか。』と言って隣に並び坂道をくだっていく。
誰かと登校するなんて本当に何年ぶりだろうか。
グロリオーサ学園に入ってからすぐに拓夢は美化委員に入ったので、毎朝時間が合わなく一緒に登校することなどなくなっていた。
「それにしても明弥が水やりしたいだなんて意外でびっくりしたよ…明弥小さいころから花とか興味なかったから…冗談なのかと疑ったけどさっきの様子からして本当なんだなって―。」
『ん?あぁ、冗談に決まってるだろ。』
「え!?や、やっぱり冗談だったの!?僕てっきり本当だと思ってたよ…そ、そうだよね…明弥がそんなこと言うわけ…そ…そっか…うん…」
その後もよほどショックだったのか俺の隣で拓夢がぶつぶつと言っていたが、なんだかこんなこと昨日もあったような…?
そんな拓夢のお経みたいな言葉を隣で聞いてるうちにグロリオーサ学園についた。
優芽と陽菜と結月のシェアーズと呼ばれる存在が俺の家に来るまでは、ここ「グロリオーサ学園」と「家」が俺にとっての居場所だったんだ。
それ以外はシェアーズがウロウロしていてなんとなく落ち着かなかった。
だというのに、今となってはグロリオーサ学園にしか俺の居場所はない。
『…なんだかなあ…』
「ん?何が??」
『いや、なんでもない。それより拓夢。早くしねえとチャイム鳴るぞ。』
「わ!本当だ!」と慌てて上靴を履いて小走りに階段をのぼっていく拓夢を追うように俺も教室へと向かった―。