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シェア×シェア  作者: 夢見少女@活動不定期
第一章:出逢い
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―布団の中からこんにちは―

俺は今、部屋に居る。

そしてこの部屋には俺以外に女の子が三人居る。

そう!そうなのだ!!だから俺は今とっても幸せだ!!

……なんて言うわけがない。

くどいほど言ってるが俺は幽霊やら死人やらが嫌いだからだ。


『とりあえず名前から言ってもらおうか。』


俺のベッドの上に座っている二人の少女にそう告げると、姉らしき少女が口を開く


「……私は笹野宮陽菜ささのみやひな。この子は私の妹で結月ゆづき。」


そう言って陽菜は結月という妹の肩を抱き俺に紹介してくれた。

だが俺はその結月の瞳に光が宿っていないことに気づく。


「はじめまして。」


姉の陽菜に肩を抱かれたまま俺に言葉を発する結月の瞳に俺はうつっていない。


……もしかして結月は盲目なのか……?


てっきりシェアーズというものは健康体で出現するものだと思っていたから意外である。

死ぬ前の障害などもそのまま再現されるものなのか?

果たしてそれは良いことなのか悪いことなのか当事者でない俺には判断しづらいが、良いことだとはとても思えない。


「もう気づいてると思うけど、結月は目が見えないから……。」


陽菜が俯きながら重たそうに口を開いてぽつりぽつりとつぶやく。


『……ああ。』


こんなときにどんな言葉を返せばいいのか分からず、ついぶっきらぼうな返答になってしまう。

「かわいそうに」などと同情するのも何か違うし、「だからどうした」などと言うのも違う。

非常に反応しづらい。


ふと視線を優芽に向けると俺が反応に困っているのをよそに笑顔だ。

こんな話題だというのにどうしてこんな笑顔でいられるんだ。こいつの頭は年中お花畑なのか?

そんなことを俺が思っているとはつゆ知らず、優芽はしゃがみこみベッドに座ってる陽菜に視点を合わせた。


「陽菜ちゃんは結月ちゃんが大好きなんですね」


……は?


優芽の発した言葉に開いた口がふさがらない。

一体どっからそんな話になったんだろうか。

当の本人である陽菜も「え?」と言っているし、何がなんだか訳がわからん。


「だって結月ちゃんの髪型とっても可愛いです。これは陽菜ちゃんが結月ちゃんにしてあげたからですよね?」


そう言って陽菜に微笑みかける優芽。

その言葉を聞いて結月に視線を向けた俺は気づいた。


結月の髪は片方だけ編みこみがされていて、横髪をヘアピンでとめられている。

こんな髪型は盲目の結月にはかなり難しいだろう。

俺は女子じゃないし編みこみなんてしたことはない。

ましてや方法も知らないから説得力に欠けるが、見た目からしてなんだか複雑そうだ。


優芽に言われなかったら俺はきっと気づかなかっただろう。


「……うん。結月は私の大事な妹だから。私がちゃんと面倒みないといけない。」


そう優芽に言う陽菜の髪型は肩にギリギリつくかつかないかのショートヘアーだ。

だが自分の容姿にはあまりこだわっていないのか毛先はまばらで、おそらく自分で切ったものだと思われる。


「本当に結月ちゃんが大好きなんですね。あ、私は優芽といいます。これからよろしくお願いしますね。陽菜ちゃん。結月ちゃん。」


「……よろしくお願いします。……ほら、結月も。」

「ん……よろしくね。優芽おねーちゃん。」


『ちょっと待て。』


話が一気に飛躍しすぎて思わず片手で頭を抑えてしまう。

そして優芽に人差し指を突き刺す。


『な・ん・で!!お前が勝手にここに住むことを許可してんだ!!「よろしくお願いします」じゃねえ!!ここは俺の部屋だ!!俺の家だ!!』


「ひゃあ!?ご、ごめんなさい明弥さん!」


『あとお前らもだ!!こんなヘラヘラしてる奴に挨拶するより先にこの俺に挨拶するのが先だろう!!礼儀だろう!!』


俺に人差し指を突きつけられた陽菜はむすっとした表情をしてからぷいっと顔を背けた。

こいつ……優芽とはうってかわって素直じゃなく非常に可愛くない。

いや、別に優芽のことを『ははっ♪可愛いやつめ☆』など思ったことはないし、きっとこれからもないだろう。


だとしても、だ。


あまりにも優芽と俺への態度が露骨すぎやしないか?これが俺のベッドで寝ていた奴の態度か??

そんな俺の心情が顔に表れてるのか優芽がおろおろと陽菜と俺を見つめている。


「おにーちゃん……?お名前なんていうの?」


結月の言葉に張り詰めた空気が一瞬ゆるむ。


『俺は明弥だ。それとお前にお兄ちゃんだなんていわれる筋合いは一切ない』


お兄ちゃんだなんて見ず知らずの死人に言われるだなんて冗談じゃない。

まるで俺とこいつらが家族のように暮らしてるみたいじゃないか勘弁してくれ。

だがそんな俺の言葉にシェアーズ達はどうやら不服のようで。


「……嫌な奴。何でそんなに偉そうなのかわかんない。結月。こんな奴の名前なんて呼ばなくていいよ。」


そう言って俺を一睨みして結月の頭を撫でながら言う陽菜に加勢するように、

優芽も頬をふくらませながら「そうですよ明弥さん。今の言い方は少しひどいです。」などと言ってくる。


それでも結月は「明弥おにーちゃんって呼んじゃだめ……?」と俺に言ってきて少し心が痛む。


結月の純粋な言葉も痛いし、突き刺さるような優芽と陽菜の視線も痛い。

それに加えて何だか頭も痛くなってきた。


『あー、分かった分かった。お兄ちゃんでもなんでも好きに呼んでくれ。』


『降参だ』とわざとらしく両手を軽く上げて俺が言うと、かすかに結月の顔がほころんだ。


「じゃあ明弥おにーちゃんって呼ぶ。これからよろしくね。明弥おにーちゃん。」


その結月の言葉を聞く限りここに住むこと前提なのだろう。

「これからよろしくね。」などと言われたら「はい」と答えるしかないようなものだ。


だけど問題は姉である陽菜なわけで……さっきの俺に対する反応からして俺のことは好いていないらしい。

まあそれも当然か。俺もシェアーズという存在を嫌っているわけなんだし。


陽菜は結月の言葉を聞いて一瞬目を丸くさせて驚いていたが、すぐに元のつり目でどことなくつっかかりにくい表情に戻り、


「結月もこう言ってるし……嫌だけど……本当は嫌だけど。よろしく……お願いします。」


「嫌だけど」を二回も言ってきて心から嫌なことを強調した挙句、後半になるにつれ小声になっていくという技を披露してきた。



なんだこりゃ。



こんな挨拶は生まれてこのかた初めてされた。こんな露骨に嫌ってますアピールされるものなのか。

……いや、俺もしてるからどっちもどっちか。


陽菜のことを責められる立場に自分が居ないことを察した俺は―。


『……こちらこそ。』


そう一言だけ言った。


俺が何を言ってもこいつらはきっと出て行かないし、出て行ったとしても行くあてがなくそこら辺をうろちょろするんだろう。

そうなったら俺のとこに苦情がくる可能性だってあるわけだ。

こうして考えるとシェアーズが俺の部屋に現われたという時点で俺に残された選択肢は一つだったのかもしれない。


それにしても神様というものが本当にいるのならば断言しよう。神様はとんでもなく性悪だ。

幽霊や死人が嫌いな俺のところにシェアーズを送り込んできたんだからな、根性ねじ曲がりすぎにも程がある。


『さっきこいつ(優芽)にも言ったけど空き部屋は3つあるから。あとはお前らで話し合って決めてくれ。俺は今度こそ寝るからな。さあ遠慮なく出て行ってくれ。』


そう陽菜と結月にドアの方向を指差しながら言うと「感じ悪っ……。」と陽菜が呟いた。

だが、お前も充分感じ悪いのでおあいこである。

結月の手を引いて陽菜はドアのほうに向かって歩いていき、部屋から二人が出て行った瞬間に俺は即座にベッドに入った。


さっきまで陽菜と結月が寝ていたせいもあって、なんだか生暖かい。

これがシェアーズじゃなければ歓喜ものだが、シェアーズなのでちょっと歓喜というか寒気ものだ。

……ちょっと今うまいこと言った。やばいな。今すぐ拓夢に電話してこれ言おうかな―。


「明弥さん。その。だいぶ時間経っちゃいましたけど……体……大丈夫ですか……?」


うまいことを言ったので、拓夢に報告しようとする俺に優芽が話しかけてきた。

なんだまだ部屋を出ていなかったのか。

というか優芽は一体何の話をしているんだ?




「体……溶けかかってるんじゃ―。」





『あぁ。それ嘘。』








その後、優芽は「ひどいですー」だの「明弥さんはいじわるです!」だの言ってきたが全て無視。

あんな分かりやすい嘘を信じるほうが悪いのである。そうだそうだ。


俺に全て無視されて諦めたのか「も、もう!明弥さんは、いじわる暴君ですよ!良いですか!?明日からそう呼びますからね!」と言い残し部屋を出て行った。


“いじわる暴君”など微妙極まりないあだ名をつけられて良いわけがないが、どうせ明日になったら忘れてるのがオチだ。



因みに拓夢に電話した結果。


『生きてる女の子の温もりを感じられたら歓喜ものだけど死んでる女の子のぬくもりは寒気ものだよなー』


「え?明弥?ど、どうしたの?急に、え、かんき?一体なにを―。」


―ブチッ。ツーツーツー。


拓夢が話してる最中だったが電話ブチった。



やはり俺の疲労は限界を超えたらしい。

こんなしょうもないことで拓夢に電話するなんて我ながらどうかしている。ちょっと恥ずかしい。

ていうか!この話は電話よりメールの方が伝わりやすいだろう!冷静に考えたら分かっていたのに!くそっ!!くそっ!!

…今ごろ拓夢は急に電話ブチられて困惑しているだろう…

だがすまんな拓夢。俺は寝る。


拓夢から何回も着信がきているのに気づかないほど俺は長い一日を忘れるかのように深い眠りについた―。





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