2ー1 悲劇のヒロイン症候群
「いきなりそれはないって」
凪は美咲ちゃんにごめんねと謝った。
「そうだよ、いち花ずうずうしい」
蓮の毒舌が胸に痛い。
「いくら俺たちといつもいっしょだからって、それはないでしょ?」
うん、わかってる。陽稀の言うように劇場部の三人、ルックスだけは特上なんだ。だから困ってるんだ。今さら彼らに男としての魅力は感じない。だけど、彼らのルックスを目の当たりにしているということは、美意識がおかしくなるのだ。
これまで凪にちゃんとした恋人ができなかったのは、彼がかっこよすぎて女の子が萎縮してしまったからだろう。
そして、そんなイケてるメンズと肩を並べるわたしだからこそ、これぞといった男子が寄ってこない原因でもある。
いや、わたしだってわかってるのよ。かれらのようなイケメンと比べられたら嫌なんだろうなってことぐらいは。
でもさ、せっかくの彼氏だったら三人に見劣りしない人がいいって思うじゃない? それだけの理屈なのよね。
「あのっ。多分生徒会長あたりがそうなんだと思いますけど、彼女もいますし」
そうだよね。普通は彼女の三人や四人いたっておかしくないのよ。
陽稀だけが悪者ってわけじゃないのよ。
「あ〜、わたしも青春したい。彼氏欲しい〜!!」
だだをこねるようにテーブルに突っ伏すと、みんなから笑われてしまった。これはこれで恥ずかしい。
「なんか今のなし。美咲ちゃん、忘れてくれる?」
「あたしは、そんないち花さん可愛らしいと思いますけど?」
うぬぅ。可愛い子に可愛いって言われると、負けたような気になる。
「でも忘れて。今だけちょびっと魔がさしただけだから」
そう、恋人なんていらんわ。そんなことより進学、入試対策、そんでもって演劇だよ。
一年ってなんで十二月までしかないんだろう?
おかげで劇場部の活動は十二回しかできないじゃないよ。
「それで? 次の演目はなにになるのかな?」
無理やり話を切り替えたわたしを凪がぎろりと睨みつけた。
「どうしようかまだ考え中」
「凪ってさ、行き当たりばったりなの? 脚本」
「そうだよ。悪いかい?」
「悪くないけど、どう? 次回作は美咲ちゃんも役者デビューしない?」
「あ、あたしはそういうのはまったくわからないので」
「そうそう。そういうところがいいんだよね。つつましくて」
つつましくなくて悪かったわねっ。
結局、凪に見せつけられちゃったな。
つづく




