1ー6 うちあげ
「なんかこう、ロミジュリをオマージュするとそこはかとなく混沌とすることがわかったよ、ぼくは」
いつもの海辺の喫茶店。ファミレスより少し高いけれど、抜群の景色と品のいいクラッシックミュージック、それにどことなく昭和レトロな雰囲気の漂うここは『喫茶 えにし』。
その名の通り、縁を紡いだ喫茶店なんだけど、今回はその話を割愛するよ。
なんたって凪は、絶賛後悔中で、せっかくのうちあげ気分が台無しなんだもの。
基本、劇場部の公演は月に一度、そしておなじ演目は二度とやらないことに決めてある。
このルールに乗っ取り、なおかつハッピーエンドをひねり出すとなると、一年で十二回の公演が、かなりタイトだということが伝わるだろうか。
もちろん、拍手喝采の場合もあるし、時によりオリジナルの脚本や、誰かの自伝なんかも披露してあるから、あたりはずれははっきりしているけれど。
今回はどちらにも振り切れず、凪的には反省点しかもぎ取れなかったとのこと。
わたしは、そこそこできたんじゃないかなと思う。だって、ロミジュリだよ!? 普通に演じたら5時間とかかかるやつだよ?
それを消し削って、ようやく生まれた苦肉の策なんだから、少しは自分を褒めてあげるべきだと思う。
さらには今日これから、この喫茶店に凪が一目ぼれした女の子を呼び出しているのだ。
そう、これがまさに公開処刑!!
どんくさい陽稀がなぜかモテるのだから、凪ももう少しくらい肩の力を抜けないのかしら?
そうは言っても部員の手前。副部長の凪は心なしか顔を赤くしている。
気圧のせいじゃないよね?
「とにかく。みんなはそっちの席で自由にうちあげしておいてくれたまえよ」
「おかたいねぇ、凪様は」
恋愛教師でもある蓮が、かははと乾いた笑いをもらすと、そそくさと別の席に移動した。その蓮は、恋愛において百戦錬磨のつわものだった。
わたしと陽稀も席を移ると、ドアベルを鳴らして入ってくるとても可愛らしい女の子の姿があった。
その子は凪を見つけて少しばかり緊張した顔をした後、頬を赤らめて凪の前の席に座った。
「はじめまして。椋木 凪です」
「は、はじめまして。有佐 美咲です」
そうしてマスターが水を運んでくると、紅茶をお願いしますと可愛らしい声で注文した。
「あの、どこであたしを見たのですか?」
「駅のホームで。たまたまおなじ時間だったから。その。優しそうだなって思って」
「そんな。あたし、優しくなんかないですよ?」
飛び出せ、青春!! 二人の恋路は次回だっ。
つづく




