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なんというかぐや姫なのだろう。食におぼれて婚期を逃したか。
でも、おかしいなぁ。この時代の女性は、ぽっちゃりした方がもてるって聞いたことがあるんだけど。
凪って本当に美意識強いな。
そんな凪に恋人を会わせるために、わたしはスマホをぎゅっと握りしめた。
「ごめんなさい。彼氏ができた、なんて嘘でした」
みんなの前で堂々と白状したわたしに、やっぱりな、という陽稀の声が重なる。
「おかしいと思ったんだよ。でもこれで、凪は日本にいる理由になるだろ?」
う〜。頭まで下げてあやまったよう。
「わたしが適当に嘘をついたのはあやまります。だからどうか、三月公演まで日本にいてください」
「いち花は、それだけでいいの? 三月公演が終わったら、凪と会えなくなっても後悔しない?」
蓮が穏やかに声をかける。わたしははっとなって凪を見た。
「嫌だ。三月公演終わっても、これからも凪と一緒にいたい。本当は凪のこと、大好きなんだからぁっ」
思わず本音を全部吐き出してしまった。
真っ赤になって、凪を見ると、笑ってない。むしろ怒ってる?
「怒った?」
少なくともわたしのせいでカナダに行こうとしていたのだから。そりゃ怒ってあたりまえだけど。
笑ってって言っても、困るよね?
「怒ってない。あきれただけ」
マジか。もっと悪いじゃん。
「でもこれで、どうしていち花がぼくのことを振ったのかわからなくなった。ぼくのこと好きだって言ったよね? それ、本当?」
「……本当」
「じゃあおつきあいしてもいいんじゃない? 違う?」
「違わない、です。むしろウェルカム」
「よし。交渉成立。ぼくはカナダに行かない。お婆様はさみしかったら日本に来ればいいし、ぼくのことを好きないち花を放ってカナダには行かない。むしろ嘘つかれた分束縛するけどいいよね?」
……ダメって言えないじゃん。
「三月公演は、あるの?」
「あるよ」
しっかりとそう言ったから、わたしは凪を信じる。
「みんなも。嘘ついてごめんなさい。うっかり劇場部が途中で崩壊しそうになりました」
つまらないプライドやかけひきなんてしなきゃよかった。
だって。これで堂々と凪とつきあえるんだから。
わたしにはまだ劇場部がある。三月公演でいったん終わるけど、凪とはこの先も会える。
こんなにしあわせだと、四月からどうなっちゃうのかわからなくて不安になるなぁ。
つづく




