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11ー1

 凪が、学校から居なくなるかもしれない。


 ……はっ。わたしってどうしてこんなに醜いことを考えるかなぁ?


 わたしが凪を振ったから、凪はカナダに逃げるんじゃないか、なんて。


 そんなことあるわけないのに。


「最悪の場合、原稿だけはネットで渡すこともできるけど、どうする?」


 どうするって凪が、正面からわたしを見ていた。


「どうしてカナダに?」

「お婆様が一人ぼっちに見えたから。学校ならそこから通えばいいし」

「信じられないなぁ」


 ダメ。今しゃべったら、すごく嫌な奴として終わっちゃう。


「凪の演劇に対する思いはその程度だったの?」

「好きに言えばいいし、好きに思ってくれてかまわないよ。劇場部を放ってカナダに行くことが逃げだととらわれるなら、それでもいいんだ」


 くっそう。涙が出てきやがる。


「いち花は? 劇場部のことが泣くほど好きなのに、三月で終わっちゃっても納得できるの?」


 そんな、依存症みたいに言わないでよ。わたしだってつらいんだよ。


「ちなみに、正月に電話したことは関係ないから」


 どうしてそんなこと、今言うの?


 三人はそれてもいいわけ? ねぇ、陽稀、蓮。仁科くん。


 どうして誰もなにも言ってくれないの?


 このままだとわたし、悔しくて仕方ないよ。


 どうして凪は、失恋の復讐にわたしの大切なものを二つも取り上げるの?


 劇場部と、凪の姿を見られたら、それだけで満足だったのに。


 どうして。


 わたしは泣き崩れてしまった。


 蓮がしゃがみ込んで背中をなでてくれる。


 仁科くんがペットボトルの水を差し出してくれた。


「そんなの自業自得なんじゃないの?」


 ねぇ、陽稀はどうしてそこでそんなこと言うの? 誰に対する言葉なの?


「なんで? っていうか、なにに対しての自業自得?」

「凪は自分で逃げると言っただろう? それは、いち花に振られたせいで逃げるってことだよね。そんなのお婆様からしたら嬉しくないんじゃない? せめて」


 ボスっと鈍い音がして、陽稀が凪の腹をぐうで殴ってた。


「少なくとも、三月公演まで日本にいるべきなんじゃない? つまらないプライドをすててさぁ」

「いってぇ」


 腹を抱えてうずくまった凪を見ていられない。


 陽稀はどうしてそこまでわかってるの?


 いくらおさななじみでも、そういうのは言わないんじゃないの?


「じゃあせめて、いち花の恋人に会わせてください。それで、気持ちにケリつけるから。三月までは日本にいるから。だから」

「……わかった。とりあえず二月公演まで待って欲しい。二月公演が終わったら、話し合いの場をもうけるから」


 なんてことを約束してしまったのだろう。でもこれで、もう後戻りできない。


     つづく

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