10ー5
本家である『鶴の恩返し』をくつがえすようなアレンジは、凪がわたしに恋をしているからなのかな?
三学期が始まって、凪と話したのはほんの数回のみ。お芝居の話をしただけだ。
わたしもなんとなく気まずくて、今日まで来てしまった。
わたしは凪に育ててもらったようなものなのに、彼の好意を拒んだ。
きっと後からひどい罰がくだされることになるだろう。
ねぇ、凪。どうしたらわたしたち、同じ方向を向いて好きって言えるのかな?
凪の気持ちを知ってから、どこかうぬぼれて舞い上がってるわたしがいる。
なんて女だ。彼への気持ちに応えないどころか、ほかに彼氏がいるなんて嘘までついた。
最低。
ねぇ、凪。わたしって最低な女なんだよ。
あなたが心を壊す必要もないほど救いようのない女だよ。
だから、わたしのことは悪い夢だったと思って、忘れて欲しい。
ズルいよね、わたし。凪にあきらめさせてからじゃないと、自分の気持ちを抑えられないだなんてさ。
今日の打ち上げは、誰もわたしに話しかけてこなかった。
それでいい。
たまには一人でいるのも悪くない。
そろそろ受験勉強を始めなくちゃいけないし、わたしは自分を戒める必要があるんじゃないかな?
恋をして、両想いだってわかったのに絶望しているのって、わたしだけなんじゃないかな?
ねぇ、もし凪が怪我をした鶴だったら、わたしはあなたを助けるのかな?
逆に、わたしが鶴だったら、凪はわたしを助けてくれるのかな?
まるで綱渡りをしているような緊張感の中、わたしはみんなに伝えなくちゃいけないことがある。
「あのね、みんな」
せっかく盛り上がっている時に、最低なことを言おうとしている。
「三月公演で劇場部は解散するよ」
みんなはそれを待っていたかのように、それぞれの表情を浮かべる。
もっと叱られたり、罵られたりするのかと覚悟していたのに。
「しかたないよ。部員はほかにいないんだし」
蓮の言葉がストレートに届いた。
「受験勉強しなきゃだしな」
陽稀も状況をわかってるか。
そして。
「悪いけどぼく、三月まで日本にいるかわからない。カナダでお婆様と暮らしてみたいんだ」
それは突然の凪の別れの言葉で。
わたしは自分が放った言葉から、何倍にも返されてしまったのだった。
つづく




