10ー4 『鶴子と恩返し』後編
おじいさん「ほら、もう罠にかかるなよ」
かたり「そうして鶴はまた、群れのところまで戻って行くのでした」
おじいさん「おばあさんや、今日はまたしても罠にかかった鶴を助けてあげたのじゃ」
おばあさん「それはそれは。おじいさんは本当にお優しいのですね。また、いつぞやのように鶴子さんがはたをおりに来たりするのでしょうかね。それはそうとおじいさん、鶴子さんの反物でいただいたお金がついに底をつきました。明日からまた、まんじゅうで腹を満たすこととなりそうですよ」
おじいさん「それはそれで仕方のないことじゃな。わしらのようなものは、まんじゅうでも白湯でもごちそうじゃ」
かたり「と、そこへまた外が激しく吹雪いてきます。そして、いつぞやのように女性のか細い声が聞こえてきました」
鶴子「もし? いらっしゃったら返事をしておくれなもし?」
おじいさん「その声は鶴子さんではないか。どうしていつも吹雪の中を歩くのじゃ? ささ、白湯でよければ召し上がってくだされ」
おばあさん「よく来てくれたねぇ。ちょうど今、鶴子さんのことを話していたところじゃったぞい」
鶴子「いつぞやは助けてくださり、ありがとうございました。今日は今日とて、このような天気になってしまいましたが、よろしければまた、はたをおってもよろしいでしょうか?」
おばあさん「そう何度も甘えるわけにはいかないでしょう? できあがった反物は、鶴子さんが持って帰ってくだされ」
鶴子「ですがおばあさん。わたしはおじいさんとおばあさんのためにはたをおりたいのです。この家のはたおり機のおかげで、以前は美しい反物にできたのでございますから、どうか遠慮なく受け取ってくださいまし」
おじいさん「遠慮などしておらんぞ。わしたちは、鶴子さんにしあわせになって欲しいのじゃ」
鶴子「でしたらひとつ、提案があります。どうかわたしを、この家の子どもとしてここに住ませてください。そうすれば畑仕事も手伝えますし、はたもおることができます」
おばあさん「だがそれでは鶴子さんに悪いじゃろうて?」
鶴子「そんなことはありません。さぁ、どうかわたしの好意を受け入れてください」
かたり「そうして三人は、つつましいながらも笑いの絶えない家庭を過ごすことができたそうな。めでたしめでたし」
〘閉幕ブザーの音〙
以上をもちまして、『鶴子と恩返し』は終了しました。皆様どうか、お足元にお気をつけてお帰りください。
つづく




