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10ー2 『鶴子と恩返し』前編

 皆様、本日はようこそ劇場部へおいでくださいました。部長の甲斐野(かいの) いち()です。


 一月公演は『鶴子と恩返し』です。どうか最後まで楽しんでください。


〘開幕ブザーの音〙


鶴子……甲斐野 いち花


おじいさん……春夏冬(あきなし) (れん)


おばあさん……音澤(おとざわ)  陽稀(はるき)


かたり……椋木(くらき) (なぎ)


かたり「昔々あるところに、気持ちの優しいおじいさんとおばあさんが貧しいながらもつつましく住んでいました。おじいさんは早朝、罠にかかった鶴を助けて、手当てしてあげました」


おじいさん「これはこれは大変なケガをしているね。かわいそうに。どれ、この軟膏が効くといいのだが」


かたり「おじいさんは、鶴に貴重な擦り傷用の軟膏をつけて、離してあげます」


おじいさん「遠くまで逃げるんだぞ。達者でな」


かたり「おじいさんはいつまでも鶴の後ろ姿を見送っていました」


〘場面転換。粗末な藁の家〙


おばあさん「おや、おじいさん。今日も手ぶらかい?」


おじいさん「これはおばあさん。せっかくだけど、手ぶらなんだよ。ヨモギの葉っぱを摘んできたから、まんじゅうにして食おうじゃないか」


おばあさん「まんじゅうとはまた面倒なことじゃの。あっははははっ」


かたり「食べるものがなくても、二人はいつも仲良しです。おばあさんも最初こそ面倒らしい顔をしておりましたが、おじいさんと一緒にまんじゅうの皮をこねている間に笑顔になります」


おじいさん「おばあさんや、あんこはどうするかのう?」


おばあさん「あんこもあずきもないでの。ただのヨモギまんじゅうじゃ」


おじいさん「精のつく食べ物じゃなくてごめんよ。おばあさんは先日風邪をこじらせたばかりだからのう」


おばあさん「その気持ちだけで充分だで。それ、こねたら蒸すよ」


かたり「こうして二人でまんじゅうが出来上がるのを待ちます。間に、今日鶴を助けたことをおばあさんに話しました」


おばあさん「それはいいことをしたのう。おじいさんは優しいから、きっとその鶴も元気になったであろうの」


かたり「のんきにかたりあう二人でしたが、空腹から逃れることはできません。どちらからともなく、ぐぅと腹の鳴る音がして、微笑みあうのです」


おばあさん「腹が空きましたな、おじいさん」


おじいさん「そうですな、おばあさん」


かたり「やがて、吹雪になり、戸を叩く音がし始めました。最初は風の音、かと思っていた二人でしたが、とうやらそうではなかったようすです」


鶴子「もし。こんばんは。どなたかいらっしゃいますか?」


 中編へつづく



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