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10ー1

 年末年始は劇場部のみんなとは別行動をした。家族との生活も大切だからだ。


 それにしても暖冬って嘘なくらいに寒いよね。さすがにまだ花粉は飛んでないけれど、少しだけ鼻がむずむずする。


 と、わたしのスマホが振動した。


 凪からの電話だった。

 

『あけおめ、いち花』

「あけおめ、凪。どうしたの? 新年早々」

『十二月公演の打ち上げで言った言葉を撤回したくなったんだ』

「え? なんだっけ?」


 とぼけた。だって、凪はわたしの芝居を好きでいてくれてるわけだから、それ以上にはならないんでしょう?


『ぼくは、役者としてのいち花と、一人の女性としてのいち花のどっちも好きだってことに気がついた』


 切った。 


 切るでしょう? 普通。新年早々そんな告白って、ある?


 また凪から電話がかかってきたから、呼吸を整えていたら、切れてしまった。


 なんだよ、もう。


 そして届いたメールに目を丸くする。

 

『いち花のことを、全部丸々愛してしまいました。もう大好きです』


 どうすんのよ、こんなのっ。答えなんて返せるわけないでしょう!?  


 考えあぐねた結果、そんなこと今さら言うのはズルいよ、とメールで返した。それから、彼氏ができた、と打ち直して送った。


 もちろん、嘘なんだけど。もうそうするしかない。だって、わたしたちが劇場以外で健全なお付き合いなんてできるわけない。


 きっと、延々と演劇論を戦わしている間に戦友のポジションで終わるのがオチだ。


 そんなのって、悲しいじゃない。


 わたしは自分を安売りしないんだ。


 凪のことは好きだけど、この想いを表に出すことはない。

 

 そんなの、陽稀に指摘されるまでもなく考えていたことだから。


 それから凪からは電話もメールも返ってこなかった。

 

 自分勝手だけど、がっかりした自分がいる。


 もし、直接うちに来てくれてたとしたら、押された勢いで本音が飛び出していたかもしれない。

 

 でも、それはない。  


 凪のおうちは、みんなでカナダに旅行中だからだ。


 カナダなんて寒くて、熊がたくさん出るような場所なのに、凪ママの実家がカナダにあるからお正月なんかは度々帰省しているのだ。  


 つまり、凪はサンブンノイチだけカナダ人の血が混ざっている。


 いつか、あの大平原で釣りを楽しむ凪を想像できて笑える。

 

 だから、凪とわたしは根本的にあわないんだよ。

 

 わかっているのに惹かれあうってのが不健全なんだよ。わかってるもん。

 

 凪、本当はわたし、あなたのことが好きです。


 絶対に口に出して本人の前で言わないけれど。

 

 そう、絶対に……。

 

     つづく

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