9ー3 『マッチ売りと少女』中編
マッチ売り「いくら中毒性がないとはいえ、お譲ちゃんのように小さな子が幻覚作用をもたらすマッチに興味を持つのは反対だよ。もしものことがあったら大変だからね」
少女「ふん。そんなんだからマッチが売れないのよ。時代の流れを先読みしなければ、商売なんてやっていられないわ」
マッチ売り「お言葉だが、お譲ちゃん。なんと言われようとあのマッチはうちでは取り扱わない。これから先もずっとだ」
客「すんません」
少女「いらっしゃい。花を買ってくださるのでしょう?」
客「いや、俺はマッチを買いに。アレ、ありますか?」
マッチ売り「残念ながらうちでは普通のマッチしか売っていないんだ」
客「そうですか。それじゃあ普通のマッチと花を買います。おじさん、次はぜひともアレを仕入れておいてくださいね」
かたり「お客さんは去って行きました」
少女「なんだかヤバそうな客だったわね、悪いことにマッチが使われないといいけど」
マッチ売り「悪いことって?」
少女「放火とか?」
マッチ売り「それはいけない。さっきの客はどっちへ行った。ともかくマッチを回収しかけりゃいけない」
少女「放っておけばいいのに」
マッチ売り「そうはいかん。それに気安くアレを売ってくれだなんて言っていたし、危険人物かもしれん」
少女「お人好しね。人は誰しもはかない夢を見たいものよ。それも単なる幻覚なんだから、かまわないじゃない?」
マッチ売り「そうはいかんっ」
少女「そうしたら、オリジナルの『マッチ売りの少女』なんてヤバイことの極みじゃない」
マッチ売り「それを言ってくれるな」
少女「そうね。しかたないからさっきの客、手分けして探しましょう」
マッチ売り「俺はあっちを探す。きみはそっちをお願いするよ」
少女「いいわよ。それじゃあまたね」
かたり「少女はお人好しのマッチ売りが走り去る後ろ姿を見送ったなり、その場を動きませんでした」
少女「おろかものね。簡単に子供を信じる人がどこにいるのよ? あなたなんかに協力するわけないじゃない。さあ、出てきていいわよ」
〘さっきの客、マッチを持って登場〙
客「検証してみましたが、普通のマッチでした。本当にあの男が、幻覚作用のあるマッチを売っているのですか?」
少女「似顔絵によるとそうなのだけど。わたしの目が節穴なのかしら?」
かたり「こうして少女が実は警察の片棒をかつぐ協力者だということがわかったのであります」
後編へつづく




