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9ー2 『マッチ売りと少女』前編

 皆様、本日は劇場部にお集まりくださり、まことにありがとうございます。劇場部部長の甲斐野(かいの) いち()です。


 十二月公演の『マッチ売りと少女』は、皆様がよく知るあの物語とは、かなり趣向が違っております。最後までどうか、おたのしみください。


〘開演ブザーの音〙


 ✿出演者


マッチ売り……甲斐野 いち花


少女……春夏冬(あきなし) (れん)


かたりおよび女神……椋木(くらき) (なぎ)


客およびハイエナの獣人……音澤(おとざわ) 陽稀(はるき)


かたり「昔々あるところにマッチ売りをなりわいとしている男がいました」


マッチ売り「あ〜、寒い。年末だから客足が多いってのに、なんでマッチの売れ行きが悪いんだかな」


かたり「そこへ、一人の少女がやってきました」


少女「わたし、悪い子だから今日はご飯をもらっていないの。せめてこの、川辺で摘んできたお花を売って、ご飯代を稼ぎたいものだわ。……あら? こんなところに商売敵がいるの?」


マッチ売り「おや、あの少女、裸足じゃないか。お〜い、どうした?」


少女「嫌だ、話しかけられちゃった。あの、マッチ売りのおじさん。わたしのお花、買ってくれませんか?」


マッチ売り「悪いがそれはできない。こう見えてもマッチの売れ行きがよくないんだ。それより、どうして裸足なんだい?」


少女「その方があわれでいじらしく見えるからよ。実際、それだけでこれだけの稼ぎになったわ」


マッチ売り「なんと、それをも商売にしてしまうのか。俺のような男がマッチを売っていたところで売れないはずだ」


少女「おじさんじゃあ手売りは難しいかもしれないわね」


マッチ売り「その通りだな」


少女「ところでおじさん、世間では不思議なマッチが流行っているそうね」


マッチ売り「ああ、()()か。広い意味で法律に抵触するから、俺は見ないようにしているし、そういうのは取り扱っていない」


少女「でも、中毒性はないのでしょう? だったら少しくらい楽しんでみたいって思うじゃない?」


かたり「どうやら話はややこしい方に傾いてきたようです」


 中編につづく



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