8ー4 『しあわせになりたい王子』後編
王子「そんなことを言われても、どんな顔をすればいいのかわからないんだ。見ての通り、ぼくはみすぼらしい銅像だし」
ツバメ「みすぼらしいのは自業自得です。この姿を望んだのは誰のせいでもない、王子そのものなのですから」
王子「そうだよね。ぼくは自分勝手がすぎてしまった。そのせいで、きみのたいせつな命が失われてしまう。さぁ、どうか、その小さな身体をせめてぼくの体で風よけにしてくれたまえ」
かたり「こうして、王子の足元でこくりこくりと眠り始めたツバメですが、その身体を大粒の雫が濡らします。ですが雨は降っておりません。王子の涙だったのです」
ツバメ「王子様。お願いですからそんな顔しないでください。その宝石は、かならずぼくが届けますから」
かたり「こうして、王子の目は……抜けませんでした。ツバメがどんなにつついても、びくともしません。そのうちに春がやってきました。そう、ツバメは王子の悪知恵により、無事越冬することができたのです」
ツバメ「ありがとう、王子様。仲間ももうすぐやって来る。これで無事に合流できます」
かたり「しかし、王子はもうしゃべりませんでした。そう、王子の魂はツバメの優しさのおかげで成仏し、あたらしい命へと姿を変える決心がついたのです。生まれ変わっても王子はありがた迷惑なお人好しかもしれませんが、誰かの心にはかならず響くはずです。あとはツバメが長生きすることを願い、この物語は終わりとなります」
〘閉幕ブザーの音〙
これで、十一月公演『しあわせになりたい王子』は終了となります。お足元にお気をつけてお帰りください。
つづく




