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8ー2 『しあわせになりたい王子』前編

 皆様、本日はようこそ劇場部においでくださいまして、まことにありがとうございます。


 本日は十一月公演『しあわせになりたい王子』を上演します。最後までどうかお楽しみください。


〘開幕ブザーの音〙


 ✿出演者


銅像の王子……甲斐野(かいの) いち()


ツバメ……春夏冬(あきなし) (れん)


その他の人……音澤(おとざわ) 陽稀(はるき)


かたりおよびその他の人……椋木(くらき) (なぎ)


かたり「昔々あるところにしあわせな王子がいました。王子はとても心優しく、人々に愛されていましたが、流行りの病であっさり亡くなってしまいました。そんな王子を思って、銅像が作られます。銅像の外側は金で加工してありました。ある日旅の途中でツバメが動けなくなり、王子の銅像で羽根を休めることにしました」


王子「ツバメさん、こんにちは」


ツバメ「やぁ、これは王子様。立派な銅像ですね」


王子「ぼくは少しも立派なんかじゃありませんよ。だってほら。こうしている間にもあの小さな女の子が熱を出しているのに、ぼくの体の金を分けてあげることができないのだもの」


ツバメ「金を分ける? どうしてですか?」


王子「あの家は貧乏だから、子供を病院に連れて行くことができないんだよ。だからああして、毎日祈ることしかできないんだ」


ツバメ「ふぅ〜ん? そんなことがあるんですねぇ」


王子「そうだ。ねぇ、ツバメさん。もしよければ、あなたがぼくの体の金を剥がして、あの家まで届けてくれないなか?」


ツバメ「届けるったって……。それ、本気で言ってます?」


王子「ああ、本気だ。こうして毎日あの子が苦しんでいる姿を見たくないんだ。羽根を休めた後でいいから、お願いできないかな?」


ツバメ「しかたないなぁ。今回だけ、特別ですからね」


王子「ありがとう、ツバメさん。ああ、ぼくはなんてしあわせ者なんだろう。きみという素晴らしいともだちが助けてくれるんだから」


かたり「こうしてツバメは王子の体の金を剥がして、その家に金を運んで行きました。両親はすぐそれに気づき、その金で子供を病院に連れて行き、病気が直ったのです。そうしてツバメが得意満面に銅像の前に戻って来ると、またもや王子は苦しそうにうめいていました」


ツバメ「どうしたの? 王子様。ぼく、きちんと言われた通りにやれたでしょう?」


王子「うん。その子は助かったね。でもほくは、また不幸な人を見つけてしまったんだ」


ツバメ「王子様、特別だって言ったでしょう? ぼくだって明日にはあたたかい国まで飛んで行かなければならないんですよ? それなのに頼みごとばかり聞いていられないよ」


王子「ごめんね、きみの都合も考えずに。でもあと一回。一回だけでいいんだ。ほくの体の金をあの家に分けてあげたいんだ」


 中編へつづく





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