6ー3 喜劇『白雪姫は目覚めない』中編
語り「白雪姫の美貌をうらやむ継母は、あの手この手で白雪姫を手にかけようとしますがどれも失敗に終わります。それどころか、継母の本当の姿は悪い魔女だったのです。これまでは難を逃れてきた白雪姫ですが、ある時ぐっすり眠っていたところを狼男にさらわれて、森の奥に捨てられてしまいます。そんな白雪姫でしたが、森の奥には七人の小人が住んでいました。尺の都合で割愛しますが、この小人たちはそろいもそろって白雪姫の愛らしさに心がほぐされてゆくのでした。こうして白雪姫は、森の奥で小人たちと仲良く暮らしていたのですが、そう、問題はクソ真面目な鏡の精です。今日も鏡に一番綺麗なのは誰? と質問する悪い魔女に、一番綺麗なのは白雪姫だと答えてしまいました。こうして悪い魔女は、またしても白雪姫殺害計画をたてなくてはならなくなりました。懲りない魔女だ」
〘悪い魔女、グツグツと煮えたぎる鍋の中から可愛らしいマカロンを取り出す〙
悪い魔女「んっふふふっ。これなぁ〜んだっ?」
鏡の精「やけにご機嫌ですね。お菓子でしょう?」
悪い魔女「マカロンって言うのよ。これを食べたらコロンと心臓の血が凍りつくの。そうして永遠の眠りについてしまうのよ。おっほほほほっ」
鏡の精「ああ、恐ろしや、恐ろしや。どうしたらそういう発想になるんだか? 美貌に磨きをかけていればいいのに、まったく面倒くさいのう」
悪い魔女「さぁて。これを持って、白雪姫に食べさせてあげなくちゃ。それにはそう、ちょっとした工夫が必要なのよ。どう見ても悪い魔女である見た目じゃ食べてくれないわ。だから、こうするの」
〘悪い魔女、マカロンに「わたしを食べて」とマジペンで書く〙
悪い魔女「んっふふふん。わたしって悪いオンナ。さぁ、これを小人の小屋の前にそっと置いてっと。ドアをノックしたらすぐ去らなくちゃ、ねん」
〘悪い魔女、ドアをノックして木陰に隠れる〙
白雪姫「はい。……あら? なにかしら、これ。わたしを食べて? あやしいわぁ。食べないわぁ」
〘白雪姫、マカロンを悪い魔女が隠れている草むらに放り投げる〙
悪い魔女「おのれぇ、白雪姫めっ。すっかり警戒してくれちゃって。でもいいの? この世界にはこんなに小さくてあまくておいしいマカロンなんて存在しないのよ? そう、ヘンゼルとグレーテルだって真っ青なお菓子のお家をプレゼントしたっていい。いっそ、そうしましょう」
語り「どうやら趣旨が変わってきた悪い魔女ですが、こんなことであきらめたりはしません。ついに、魔法の鏡を使った魔術を発見したのです」
悪い魔女「おっほほほほっ。これで白雪姫の可愛いお顔はわたしのモノ。さぁ、鏡さん。彼女の顔を取っておしまいつ」
鏡の精「うわぁ〜、嫌なこと頼むなぁ。ありえないなぁ」
〘悪い魔女、ドアの外にきらきらとした可愛らしい手鏡をそっと置き、ノックする〙
白雪姫「誰もいないわ。あら? この鏡、すっごく可愛い」
〘白雪姫、鏡に自分の顔を写すと、顔が鏡の中に吸い込まれ、魔女の顔になってしまう〙
後編につづく




