6ー2 喜劇『白雪姫は目覚めない』前編
皆様、本日はようこそ劇場部においでくださり、まことにありがとうございます。劇場部部長の甲斐野 いち花です。
今回の九月公演は喜劇『白雪姫は目覚めない』をお送りします。
どうかごゆるりとご歓談ください。
〘開幕ブザーの音〙
✿出演者
白雪姫……春夏冬 蓮
語り、および王子……甲斐野 いち花
悪い魔女およびその他の王子……椋木 凪
また別の王子および鏡の精……音澤 陽稀
白雪姫「はぁ。お父様が再婚したのはいいけれど、あたらしいお母様はわたしのことが嫌いみたい。今日もお父様と二人っきりで買い物に出かけて、わたしは掃除をしたり、洗濯したり。はぁ。つまらないわ」
〘ドアをノックする音〙
白雪姫「あら? 誰かしら? はい」
悪い魔女「おお、なんて美しい娘さんだい。わたしはねぇ、ちょっとそこで転んでしまったんだよ」
白雪姫「よければうちで休みませんか? わたしでよければ、お背中さすらせてもらいます」
悪い魔女「おお、なんと心優しい。そんなお嬢さんにはお礼にとてもおいしいリンゴをさしあげよう」
白雪姫「あら、いけませんわ。そんなにおいしいものでしたら、ご自身でお食べください。わたしは大丈夫ですから」
悪い魔女「そうはいかないのよ。いや、あの、言うほどおいしくないのよ」
白雪姫「だったらなおさらもらえません。それに、知らない人からものをもらうのははしたないことだとしつけられております」
悪い魔女「うぐ。それなら、一口だけ齧ってみたらどうかい? とってもあまくておいしいよ」
白雪姫「いりません。具合が悪くないのでしたら、わたしはこれで失礼します」
〘ドアを閉める白雪姫〙
悪い魔女「……はぁ〜っ!? なに、なにしくさってるんじゃわれっ!!」
〘魔女悪態をつきながら退場〙
白雪姫「ああ嫌だ。変なおばあさんにからまれてしまったわ。最近この辺にも変質者があらわれるという噂もあるから、玄関はしっかり鍵をかけておかなくっちゃ」
〘悪い魔女、下手から登場〙
悪い魔女「おのれ、白雪姫めっ。その美貌おそろしきおなごじゃ。鏡の精までとりこにするその美貌、必ずや我が物にしてやろう。ひとまずはさらばじゃっ!!」
こうして白雪姫は、とりあえずの難を逃れたのでした。
中編につづく




