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5ー4 『人魚姫のなみだ』中編

人魚姫「(心の声)ああわたし、本当に人間の足を手に入れたのね。だけど、どうしたら王子様に会えるのかしら?」


〘人魚姫、心もとなげに海面を漂うところを船に乗った王子に見つけられる〙


王子「あれは人? おお〜い!! 大丈夫か? 今たすけに向かうぞ!!」


人魚姫「(心の声)いやだ。わたし、裸じゃないっ」


〘王子、海に飛び込む。人魚姫が裸でいることにおどろくが、自分のシャツを肩にかけてあげる〙


王子「大丈夫? 怖かっただろう」


人魚姫「(心の声)声が出ない」


王子「声が出せないんだね。いいよ。船にあがろう。おお〜い、引き上げてくれ」


〘王子と人魚姫、船に引き上げられる。王子、すぐにバスタオルを人魚姫にかけてあげる〙


王子「服は男物しかないけど、それで我慢できるかい?」

 

〘こくこくと頷く人魚姫。とにかく大事にされる人魚姫〙


王子「実は昨日、ぼくは海に投げ出されたんだ。だけどたすけてくれた人がいて、きみとよく似た人だったのだよ。ぼくはその人に恋をしてしまった。彼女は修道女なのにね」


人魚姫「(心の声)ちがうわっ。あなたをたすけたのはわたしよっ。ああ、でも伝えられない。どうしよう?」


〘人魚姫、黒板を見つける〙


人魚姫「(心の声)文字なら書けるわっ」


〘人魚姫、黒板を指さす〙


王子「文字が書けるんだな。よし」


〘王子、黒板を引っ張ってくる。人魚姫、あなたをたすけたのはわたしよ、と書く〙


王子「……困ったな。どうやらきみの文字はぼくの知っている文字とは違うようだ。心配いらないよ。家族がたすけに来るまで、ぼくが責任を持ってきみのお世話をしよう。これもなにかの縁だからね」


人魚姫「(心の声)どうして? 言葉は伝わるのに、文字は別のものだなんて」


〘人魚姫がっかりしているところへ修道女が浜辺にいる姿を見てしまう〙


王子「おお、あの方だ。ぼくの命の恩人。わざわざ出迎えてくれたのか。なんとやさしいのだ」


人魚姫「(心の声)違うのに。あなたをたすけたのはわたしなのよ? どうすればわかってくれるの?」


〘船着場に船が着く。人魚姫、初めて歩くことに戸惑い、足をもつれさせてしまう〙


王子「おっと。気をつけて。ここは失礼して、ぼくがきみを抱き上げよう」


〘王子、人魚姫の体をお姫様抱っこして丘に降ろす〙


人魚姫「(心の声)なんてやさしい人なんだろう。まさかここまで好きになってしまうなんて、思ってもみなかったわ」


王子「なんて軽いんだ。ご飯はちゃんと食べているかい? どうしてぼくは、こんなにきみのことが気になるのだろう?」


人魚姫「(心の声)それはあなたが、わたしのことを好きだからよ」


〘その様子をずっと見ていた王子の兄〙


兄「おや? あの文字は古くから伝わる人魚文字じゃなかったか? この娘、何者だ? ああ、それよりうっかりして弟にまで修道女のことを嗅ぎつけられてしまった。彼女のことをずっと見ていたのは俺なのに。見ろよ、弟のあの表情。鼻の下を伸ばしてみっともない。それにしてもあの娘。なぜ裸で海に浮いていたんだろう? 考えれば考えるほどわからなくなる。いっそ、あの娘が人魚だったらよかったのに」


 後編へつづく





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