4ー5
七月公演を終えると、夏休みの準備に入った。
大学に行っても演出をつづけるつもりの凪と、とりあえず取れるだけの資格を取るつもりらしい陽稀と、留学する予定の蓮とで、楽屋で打ち上げをしていた。
「八月公演は厳しいだろうな。体育館は借りられるとしても、夏休みだからお客様集まらないかもだし」
蓮が冷静に分析する。そういえば去年はあまり人が集まらなかった。そして、エアコンがあってもとても暑かったことは覚えている。
「夏休みの間に取れる資格ってなんだろ? 英語検定? 無理だな」
陽稀はぶすっとしてそう言った。
「英語なら蓮に教えてもらえばいいじゃない?」
あたしが言うと、蓮はだめだめと首を左右に振る。
「ぼく、人に教えるの苦手だし。検定のためだけの英語なんて勉強したくないし」
辛辣なことを言うな。やっぱり留学目的の英語は違うのだろう。
「とはいえ、いずれはぼくも英語検定受ける予定だから、いっしょに勉強するんならついでにみてあげてもいいよ。先日まなちゃんに振られちゃったから」
「え? 蓮が振られたって? それ本当!?」
凪の食いつき方がえぐい。
「英語ばっかり勉強してる人だと思わなかったわって。あっさりと振られました」
「なんの教科だったらよかったのかしら?」
「そういうことじゃないと思うよ、いち花」
この中で唯一彼女持ちになった凪が知ったふうな口を聞くけど。
「まぁ、そういうぼくも、そろそろ嫌われる頃合いだよね。演劇の勉強ばっかりしてるからな」
信じられない。あんなに美咲ちゃんのことでみんなに気をもませたくせに、美咲ちゃんより演劇を取るかなぁ?
「正直、美咲ちゃんからの熱量を感じないんだよ、最初から」
「嘘ぉ。美咲ちゃん、あんなにけなげだったのに、あれでもまだ熱量足りないの?」
「うん。話してる途中でぼくのこと値踏みしてるような気がしていたし、二人で会っている時も、陽稀の話を聞きたがっていたからね」
親友を嫌いになるくらいなら、愛情を捨てるよと言い置いた。
なんかちょっとだけかっこいい。ってかやっぱり美咲ちゃんも陽稀のことが気になってたか。しかたないよ。陽稀は外面だけはいいんだから。
なにより、この四人でくつろいでいる中に入ったら、みんなの本当の笑顔を見れるからね。そこで陽稀のことを好きになる女の子は、初めてじゃなかったりするし。
「というわけで、夏休みも部室使っていいことになったから、勉強がてら八月公演に集中することにするよ」
こうしてわたしたちの夏休みは始まった。
これでみんな恋人がいない夏休みをむかえることになるわけだ。なんか笑える。
つづく




