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「いやぁ〜、寝坊した」
お昼はいつもの狭い部室で弁当を広げる。照明係の筒香くんは、売り物のから揚げをたくさん分けてくれた。
「陽稀はいつものんきでいいよな」
そのから揚げに噛みつきながら、蓮が毒舌を放つ。
「寝坊もいいけど、部活動に影響するようなことはしないでよね?」
しゅんとうなだれた陽稀の向こう側で、弁当を食べながら凪がえんぴつを走らせる。シャーペンにすればいいのに、面倒くさい人だな。
「気をつけるよ」
そう答えた陽稀のカバンから、ラブレターとおもわしき物が床に落ちる。
かわいそうに。この子、読んでもらえてないうちに失恋決定じゃない。
なんて思っていたら。
「手紙のシーンはあった方がいい? なくてもいい?」
めずらしく切羽詰まった声で凪がわめいた。
「なくてもいいんじゃない。神父がうさん臭いところだけにおわしておけば?」
わたしが答えると、凪はラジャーと右手をあげた。
手紙のシーンとは。ロミジュリの中でももだもだする場面で、この手紙が手違いでロミオに届かなかったことにより、悲劇に発展するのだ。
ここで、ざっくり『ロミオとジュリエット』のあらすじを紹介しちゃうよ。
十三歳のジュリエットは、年上のパリス伯爵から求婚されますが、舞踏会でロミオと出会い、恋に落ちます。
悩ましい二人は、翌日極秘に結婚式を挙げて夫婦となりますが、仲間を殺されてカッとなったロミオはジュリエットの親戚のティボルトを殺してしまい、国外追放に。
さめざめとなく二人でしたが、朝が来てお別れの時がやってきます。
縄梯子を降りるロミオに死の気配を感じ取るジュリエット。
いつまでも泣きはらすジュリエットを前に、父親は明日にでもパリス伯爵と結婚するよう迫ります。
ジュリエットがすでに結婚していることを知っているのは神父と乳母だけ。すがる思いで乳母に泣きついたジュリエットに、乳母はパリス伯爵と結婚するよううながしたのです。
もう死んでしまいたいと教会を訪ねるジュリエットに、神父は一時的に仮死状態に陥る薬を渡します。
そんな計画があるとしるした手紙はロミオの元に届きませんでした。
ジュリエットが死んでしまったと勘違いしたロミオは、逆上して彼女のいる遺体安置所に行くことになります。
が、そこでパリス伯爵と対立。勝ったのはロミオでしたが、ジュリエットの薬が切れる前に薬を飲み、死んでしまいます。
目が覚めたジュリエットは、計画が失敗したことを悟り、ロミオの短剣で自害してしまいます。
ざっくりとした悲劇の恋愛もの。
さてさて。凪はこの『ロミオとジュリエット』をどう料理したのかな?
つづく




