2ー4 オリジナル劇『悲劇のヒロインの恋』中編
〘喪失感におそわれたまま、自宅へ向かうイチカの前に、不思議な光がきらめく〙
妖精「うわっ。うわわわぁ〜!?」
〘妖精、アスファルトに尻もちをつく〙
イチカ「大丈夫ですか?」
妖精「え?」
イチカ「だって、いきなり転ぶから。救急車呼びましょうか?」
妖精「きゅーきゅーしゃってなぁに?」
イチカ「具合が悪いわけじゃないの?」
妖精「大丈夫だよ。ただ、飛ぶのにまだ慣れてなくって。えへっ」
イチカ「かわいい。あなた、名前は?」
妖精「名前なんてないよ。人間はぼくたちを見てこう言うかな、妖精って」
イチカ「へぇ〜? 妖精って、本当にいるんだ?」
妖精「そうだ、きみ、ぼくの願いを叶えて欲しいんだけど、ダメかなぁ?」
イチカ「願いって言われても。その願いによっては、力になれないかもしれないけど。あたし、イチカ。イチカ。わかる?」
妖精「イチカかぁ。きみ、可愛くてやさしいんだね。ぼく、きみのこと大好きになっちゃった」
イチカ「妖精に好かれてもなぁ。あ、うれしいわよ。好きだなんて言われたことは。でも、本当に好きな人の一番好きにはなれないのよね」
妖精「ぼくじゃダメ?」
イチカ「ダメってわけじゃないけど。残念ながらわたしの一番はあなたじゃないの。ごめんなさい」
妖精「いいよ。じゃあ、ぼくの願いを叶えてくれたら、きみが一番好きな人と両想いにしてあげるよ」
イチカ「本当? そんなことができるのる」
妖精「できるよ。だって妖精だもの」
イチカ「妖精ってすごいのね。わかったわ。あなたの願いを叶えてあげる」
妖精「やったぁ。ありがとう、イチカ」
イチカ「それで、そのお願いとはどんなことかしら?」
妖精「あのねっ。ハルキって男の子をひどい目にあわせて欲しいんだ。
イチカ「ハルキ? まさにわたしが一番好きな人なのに、ひどい目にあわせなくちゃいけないの? どうしてそんなことを願うの?」
妖精「だって、ハルキに意地悪されたんだ。ぼくの姿が見えていたはずなのに、知らんぷりしちゃってさ。だから、ちょっとだけひどい目にあわせてやりたいんだけど、残念ながらぼくにはそういうことはできないんだ。マイナスオーラを身にまとうと、悪魔に魂を奪われてしまうからさ」
イチカ「マイナスオーラって。今のわたしのことじゃないの。だから、やっぱりあなたのお願いは聞き届けられないわ。ごめんなさい。だってわたし、好きな人をひどい目にあわせることなんてできないもの」
妖精「ハルキはイチカにひどいことをしたのに?」
イチカ「あなたまさか、さっきのやり取りを見ていたの? だとしたらなおさら、そんなお願いは取り下げて欲しい」
妖精「……イチカも意地悪なの? ぼく、ぼくはイチカのことも嫌いになるんだぞ。それなのに、イチカはハルキを選ぶんだな。わかった、もういい。さようなら、イチカ」
〘妖精退場。幕下りる〙
中編終了 後編につづく




