1ー1 ロミジュリ症候群
空が青かった。海が晴れていた。よしっ、今日もいいお天気だ。
「いち花、おはよう」
「おはよう、凪」
わたしの名前は甲斐野 いち花。高校二年生。おさななじみの椋木 凪もおなじ。絶賛他校の女の子に片思い中。
駅のホームの人ごみに、小動物系男子の春夏冬 蓮があらわれた。
「おはよう、お二人さん。陽稀は?」
「遅刻だろうな」
「遅刻だわね」
わたしたち、と残る一人の同級生で幼馴染みの音澤 蓮の四人で劇場部をしている。
たまに端役でいいから仲間に入れて欲しいと頼まれるけど、せいぜい照明係ってところかな?
陽稀とおなじクラスの筒香 純って名前の男の子なんだけど、この子将来はプロの照明係に慣れるんじゃないかしらって腕前。
話は脱線したけど、わたしたちは月に一回学校の体育館を借りて演劇をしているけれど、演劇部ではない。
と、いうのも。照明以外はほぼ小道具すらない状態で、あるのは自分たちだけという逃げも隠れもできない部なのだ。
しかも、五人揃えばハッピーエンドマニアなものだから、みんなが知ってる悲劇もなにもかも、ハッピーエンドに書き換えちゃうの。それってすごくおもしろいと思わない?
そんなわけでやっぱり陽稀は遅刻みたい。
電車に乗り込んだわたしたちは、ようやくホームにたどり着いた陽稀にあっかんべーをして見せる。
まったく。ねぼすけでぼんやりしている癖に、なぜか女性にモテるのが陽稀なのよ。まったくわけがわからない。母性本能をくすぐるタイプなのかしら?
とか言っても、わたしの初恋はなぜか陽稀だったのよね。今じゃ笑えるんだけど。しかもすぐ断られたというね。
さて、二年生になってから最初の公演を控えているわが劇場部だけど、残念ながら、まだ演目が決まらない。
「それで? なにを演るか決まった? 凪」
「書くべきか、書かざるべきか。それが問題だ」
「もう。ちゃっちゃと書けばいいのにさ。それか、潔く振られてしまえばいい」
蓮の毒舌にわたしは笑った。
凪ってかっこいいんだけど、どうも女性が寄ってこないタイプなのよね。慎重すぎるっていうか、むずかしく考えすぎなところがあるの。
「じゃあさぁ、他校の生徒に一目ぼれした凪が、自分のためにロミジュリをハッピーエンドに書き換えるってのはどう?」
「待って、待って。簡単に言うけどロミジュリだよ。こう見えてもぼくはシェイクスピアをリスペクトしているのだよ? 無理に決まってる」
「そんな考える必要なんてないんじゃない。ここはいち花の案に乗ってみたら? おれも早く台本欲しいしさ」
蓮に後押しされた凪はうーむとうなる。
「ロミジュリかぁ。ハッピーエンドになるかなぁ?」
凪のためにも、ここはロミジュリを推したいところなのよね。
つづく




