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第8話 美処女は飲み友達の家の同居人

 「おいおいおいおいっ……。た、玉川くんっ!?ちょ、ちょっと……落ち着こうか?」

 「わたしのお酌じゃ、呑めないって言うんですかぁ?!ねぇ……?徹さんっ!!」

 「だ、だからさぁ……?な……何で、何も着てないんだよぉ……?!」

 「だってぇ……?さっきぃ……徹さんがぁ、『明日から、巳琴さんと一緒に暮らすことに決めた』ってぇ……?言ってくれたじゃないですかぁ……。だからぁ……これはぁ、徹さんへのお礼なんですけどぉ……!!」

 「べ、別に……脱がなくてたって、良かったんじゃないか?」

 「ほらぁ……徹さぁーんっ!!見て……見てぇ……?」

 「おおおおいっ……!!そっ、そんな姿、僕に見せて……押し倒されたら、どうするんだ?!」

 「んっ……んっ……んんっ……んんっ……!!!!」


 ──ドスンッ……!!ゴトンッ……!!


 「うわっ……!?だ、大丈夫か……?!」

 「んんっ……んっ……すぅーっ……すぅっ……」

 「お、おいっ……!!玉川くん……?!しっかりしろ……!!」


─_─_─_─_


 「ん……。あ……さ……ぁ?」


 これまで感じたことのないような、もの凄い解放感で俺は目覚めた。昨夜は、由美香さんがお風呂に向かった後くらいから、記憶がない。

 分かるのは、あの後酔い潰れた俺は、ベッドの上に寝かされたということくらいだ。


 ──ゴソッ……


 「え……っ?!」


 ──ゴソッ……ゴソゴソッ……


 「はああああっ……!?な、何でっ……?!」

 「ん……っ?お…ふあぁっ……ああ、失礼した。巳琴さん、おはよう?」

 「ええええええええっ……?!はっ……!?も、もしかしてぇー?!お……あっ、わたしたち……!?」


 まず一つ目に、俺の眠気も醒めるような衝撃を受けたのは、一糸纏わぬままベッドの上で寝かされていた事だった。今は、十一月ということもあり、俺の身体の上には、フカフカの羽毛布団が掛けられていて、すぐには分からなかった。

 ただ、昨日からのことが一連の夢オチだったのでは?と考えた俺は、突如消えてしまった30年来の相棒の存在確認を行った際、気付いたのだ。


 「はぁ……。意識のない巳琴さんに、そんなことしてみろよ?僕から寝込みを襲われたって……気付いた巳琴さんから、不同意性交等罪で訴えられちゃうだろ?」


 そう……二つ目は、同じベッドの俺のすぐ隣で、徹さんが一緒の羽毛布団の中で寝ていたのだ。

 ちょっとだけホッとしたのは、よく見れば徹さんはしっかりとパジャマ姿で、寝ていた事だろうか。

 まぁ……事後に徹さんだけシャワーを浴びて、パジャマを着たという線だって、あり得ない話ではないが。


 「別に……わたしは、構いませんけどね……?徹さんがどんな人かって、わたしは知ってますので……?まぁ……?わたしのことを、徹さんが一人の女性として見ることが出来たら……ですが?」


 まだ俺の中では、良い飲み友達としての徹さんに対する友情の方が勝っている……と思う。それに、俺が女性の身体になってしまってから、まだ二日目の話ではある。


 ──バサッ……!!ガシッ……!!


 「ひゃっ……!?」

 「ぼ、僕だって、全然構わないんだぞ?でなければ、昨日だって……『明日から、巳琴さんと一緒に暮らすことに決めた』なんてこと、巳琴さんに言わなかったしな?」

 「へ……っ?!と、徹さんと……お、おほん

っ……!!わたし、今日から一緒に暮らすんですかぁー?!」


 まさに俺にとっては『寝耳に水』の話で、『青天の霹靂』というのは、こういうことを言うのだろうか?

 30歳にもなる俺が、42歳という一回りも違う男性と、一つ屋根の下で暮らすとか……想像もしていなかった事態だった。

 ただ、俺は『これからは、僕が一緒に居るから』などと、徹さんに言わせてしまってる以上、元来からの女性ならば、こうなる事は想像がついた筈だ。

 ところが俺は、どこか出掛けたりする際に、徹さんが一緒に来てくれる程度だろうと、たかを括っていた。


 「僕と一緒に居れば、巳琴さんは怖くはないんだろう?と……言うかだがな?明日から、仕事の行き帰り……巳琴さんは、どうするつもりだったんだ?」

 「えーっとぉ……そ、それはぁ……。」

 「巳琴さんはさ……?日付変わるくらいまで仕事した後、大概は一人ぼっちで、あのアパートまで帰ってたよな?」

 「べ、別にー……会社からわたしの住むアパートまで、近いですし!!」


 このまま、『はい、そうですか』と引き下がった時点で、俺が徹さんと一緒に暮らす話が、完全に確定してしまうのが怖くて、せめてもの抵抗だった。

 近いとは言えども、この女性の身体で夜道を一人で歩くのは、正直無謀だと思ってはいる。


 「あぁ、なんか読めたぞ?昨日みたいなヤバい輩に、襲ってもらいたい……みたいな願望あるんじゃないのか?!」

 「そんな願望、全くないですからっ……!!」

 「まぁ、それは冗談としてだな……?そういう訳だから、狭い家で申し訳ないんだが……今日から、巳琴さんは僕たちと一緒に暮らす事に、昨夜決まったわけで……」


 いつもの徹さんの悪ふざけで、俺を揶揄っているのかとも思っていたのだが、やけに真剣な表情でこちらに話しかけてきているで、マズいと感じた。


 「ほ、本当に……?!これも、悪い冗談ではなくて……?」

 「昨日の夜、巳琴さん……あんなに喜んでたのに……?まさか、僕に……凄いもの見せてくれた事も、忘れちゃってるのか?」

 「えっ……?!一体、わたし……徹さんに何を見せたんですか!?」


 全く記憶にないことを徹さんは、やけにニヤけた表情で、わたしの方を見つめながら話しかけてくる。まさか、昨日のデパートでの一件後みたいに、俺自身の知らないところで、女性の人格が暴走してしまっていたというのだろうか?


 「蕩けたような目で……僕を見つめながら……さ?これ以上は、言わなくても分かるだろ……?それが、巳琴さんが何も着ていない理由だよ……。」

 「は……?わたし、徹さんと……?!」

 「いやいやいやいや!!そうじゃない!!僕とは……してないって!!一人で……さ?」

 「ええええええええっ!?いやいやいやいや!!徹さんに……?!わたし、そんな……!!せ、責任取って貰わないと困りますっ!!」


 本当に何も覚えていないのだが、俺は徹さんの前で着てるものを全て脱いだ上、一人でするところを見せつけた……ということだろう。

 もう、既に……徹さんに、俺の大事なところも見られてしまった以上、責任を取ってもらわなくては、困る事にしておくことにする。

 折角、俺と一緒に暮らすことを、徹さんは呑みながら考えて決めてくれたのだ。


 「だから、言ってるだろう?僕は、巳琴さんが良ければ……本当に付き合っても良いってな?」

 「と、とりあえず……同居人からで!!不束者なわたしですが、宜しくお願いします……。」

 「これは、言っておくからな?次、昨夜みたいなことしてきたら、もう……容赦しないからさ?それは、覚悟しておいて欲しいな?例え、巳琴さんの飲み友達の僕でも、己の欲望を抑えきれない……我慢の限界がくることだって、あるからな?」


 暫くは、お酒の飲む量を制限する必要がありそうだ。昨夜は、日本酒を3合も飲んでしまったのが、今回の件を引き起こした大きな要因だと思われる。

 ただ、徹さんは楽しくお酒を飲むのが好きな人なので、俺も軽くは飲んで付き合ってあげないと、と思って飲んでいるうちに、酔い潰れてしまうのだ。


 ──コンコンコンッ……!!


 「パパぁー?巳琴さーん?朝からラブラブなところお邪魔してゴメンねー?朝ごはん、出来たからねー?」

 「別にラブラブなんか……して、ないよな?!」

 「うーん……どうでしょうかねぇ?」

 「おおおおいっ……!!」


 日曜日の朝ごはんは、由美香さんが担当なのだと以前聞いた記憶があるが、俺も一緒に暮らす以上は、食事の用意が出来るようにしなくてはと思う。

 

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