第4話 女性として生きる戸惑いと友情
「も、もう……っ!!そ……それくらいで、勘弁してくれませんかぁー?!」
脱衣所に俺と由美香さんが入ってから、そこそこ時間が経っていた。それもこれも、女性になってしまった俺の身体を、由美香さんが頭のてっぺんから足のつま先まで、メジャーなどを使っては測定していたのだ。
勿論、それまで着ていた部屋着や下着などは、由美香さんの手によって全て脱がされてしまい、俺は一糸纏わぬ生まれたままの姿で、立たされていた。
「本当に……良いんですかぁー?!今から……巳琴さんにとって、とーっても為になる大事なこと……教えてあげようかなーって、思ったんですけどねぇー?」
「えっ!?ど、どんなことですかぁー?!」
「えーっ?!もう、勘弁して欲しかったんじゃなかったんですかぁー?だから、どうしよっかなぁー?って……。」
脱衣所に入った直後の由美香さんは、俺の身体のことについて半信半疑な様子だった。でも、俺から衣服を剥ぎ取り……女性になってしまった身体を見てからというもの、由美香さんの態度が一変したのだ。
俺が男性の身体だった頃とは違い、話す時の言葉遣いやボディタッチの頻度も異様に増え、やけに距離感が近くなった気がするのだ。
しかも、女性になった俺の身体を測定する為とはいえ、胸やデリケートゾーンにまで躊躇せず、さも当然かのように触れてきたのには、流石に驚いた。
「お願いしますっ!!教えて下さいっ!!」
「巳琴さんって……一人ですること、お好き……ですよね?」
「はいっ……。俺って、彼女も出来ない……童貞だったんで、必然的に……。」
全く……由美香さんも、急に何を言い出すかといえば、そんな話だったのだが、不思議と俺は自分のことを語ってしまっていた。
「それは……別に、恥ずかしい事じゃないですっ!!わ、私も……彼氏居ないし、一人でしてますっ!!」
「ええええっ!?由美香さん……彼氏居ないんですかぁ?!」
「そ、そんなことはどうでも良いんですっ!!だから、何が言いたいかっていうとですねぇ……?」
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「あ゛っ……!!」
どういう訳か、浴室内に聞き慣れぬ艶かしい声が、響くという事態になっていた。
その声の主は、由美香さん……ではなく俺だった。
「はぁ……っはぁ……っはぁ……はぁ……。」
「どう……?巳琴さん、初めてのご感想は?」
結局、さっきの話は、急に女性の身体になってしまった俺に対する、由美香さんの気遣いで、一人でする時の方法やコツを教えるというものだった。
そして、俺は……何故か自分も一糸纏わぬ姿となった由美香さんに再度手を引かれ、浴室内で手ほどきを受けているところだった。
さっき、成人向けの映像作品の一人でするシーンを思い出し、自分だけで試してみた時は、全くスッキリ出来なかったのだが、それが嘘のようだ。
「は、はいっ……!!気持ち良かったですっ……!!」
「そ、それは良かったぁ……!!あ、あのぉ……!!巳琴さん、ちょっと……良いですか?」
「も、もう無理っ……!!」
男性の時は、連続でも平気だった気もするが、女性の身体はそうはいかないらしく、俺の全身は脱力感に襲われてる上、敏感になってしまっている。
そんな状態の中での、由美香さんからの質問は恐怖でしかなく、条件反射的に無理だという言葉が、俺の口から発せられていた。
「違いますっ!!巳琴さん、そうじゃなくて……私と、お……お友達になって貰えませんか?」
「あ……。えーっと……俺、こう見えても……中身は、由美香さんとは一回りも上な……おじさんなんですよっ?!それでも、良いのであれば……。」
「はいっ!!今日、私……本当は、巳琴さんに……告白しに来たんですっ!!でも……!!巳琴さんのお身体は、私が確認した限り本当に女性になっているみたいなので……!!それなら、私……巳琴さんのお友達になることにしました……。」
今日、由美香さんがおめかししているように感じたのは、俺の勘違いではなかったようだ。それに、俺の勘は当たっており、不可抗力とは言えど由美香さんには、本当に申し訳ないことをした。
そう言えば……昨日、徹さんが由美香さんとの約束があると言って、早々に帰宅したのは……恐らく、今日の為の仕込みがあったのだろう。
前々から、徹さんから『30歳になって魔法使いになれなければ、僕の娘と付き合えばいい。』と言われてはいたが、親娘で本気だったとは驚いた。
「もし……由美香さんが良ければ、なんですけどね……?女性同士の恋愛だって、俺……あると思うんですっ……!!」
「わ……私はっ……!!男性の巳琴さんと……付き合いたいんですっ……!!ですが……女性の巳琴さんが嫌だと言うことではなく、お友達としてお側にはいておきたいんです……。いつ、巳琴さんが男性に戻られるのかも分かりませんし?」
由美香さんは、身長は今の俺より少し低いくらいの背で、色白な童顔で可愛い18歳の女子高生だ。今日、初めて……由美香さんの身体を、間近で拝ませて貰ったのだが、お顔には似つかぬメリハリボディの持ち主で、俺よりお胸も大きくて驚いている。
もしかするとだが、俺がスッキリすることが出来たのは、由美香さんが間近にいることにより、その相乗効果もあっての結果かもしれない。
まぁ、そんな事よりも……一回りも違う俺みたいなおじさんの事を、由美香さんみたいな可愛い子が好いてくれるなんて、そうそうないだろう。
しかも、俺が元の身体に戻るまでは、友達として待っていていてくれそうな口ぶりだ。もしかすると、一晩寝て起きれば元の男性の身体に戻っている可能性だって、俺にはまだある。
「分かりました。では、これから……お友達として、宜しくお願いします!!まだまだ、この身体のこと分からないことだらけなので……。由美香さん、また色々と教えて下さい!!」
「はいっ!!じゃあ……この後なんですが、ちょっとパパも交えて、色々……これからのことお話しませんか?」
「あははっ!!すーっかり……徹さんのこと、忘れてましたぁー!!」
よく考えてみれば、徹さんは居間へと置き去りにされている筈なのだが、脱衣所にも浴室にも近寄って来ているような気配はなかった。
今回は、由美香さんが俺を脱衣所まで連行しているので、恐らくはその影響で近寄って来なかったのだろうか?
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浴室から脱衣所へと上がった由美香さんと俺は、とりあえず着ていた衣服を着直すと、そのドアを開けた。
すると、さっきまで色々と散らかっていた居間が、綺麗に片付けられていたのだ。
そんな綺麗になった居間の隅で、徹さんがスマホを眺めているのが確認できた。
「ぱ、パパ?!」
「おお、なんだか時間かかりそうだったから、玉川くんの部屋片付けてしまった!!」
「徹さん、本当に申し訳ないっす!!」
「あ、パパ?私、巳琴さんとお友達になったからねー?それで、パパさー?巳琴さんの彼氏になってあげて欲しいんだけどさー?」
「え……?!」
あらかたの予想通り、部屋が片付いたのは徹さんの仕業だったのだが、由美香さんが意味不明な事を言い出してしまって、俺は思わず声が出た。
どうして、俺が一回りも違う飲み友達の徹さんと、付き合わなければならないのだろうか。
「由美香?お前の言っている意図が読めないのだが……。」
「もー!!巳琴さん、美人なのにまだ処女なんだよー?それに、女性になりたてだよー?会社内外で、変な虫がつかないように、パパが彼氏役をするって事なんだけどー?」
「あぁ、そう言うことか!!玉川くん?そういう作戦らしいんだが、どうかな?」
経営企画室の主任の徹さんが彼氏だという話になれば、由美香さんの言う通りで、俺にとってはメリットでしかない。
でも、徹さんにとっては、俺が彼女だということで、他の女性が寄り付き辛くなり、デメリットになってしまうのは目に見えている。




