第14話 社長秘書兼彼女に昇格した社畜
──コンコンコンコンッ……
「はい。」
「は、販売促進部の玉川です……。」
「おおっ……!?玉川か……?早く、入れ!!」
「は、はいいっ……!!しっ、失礼……し、します……。」
──ガッチャッ……
昨日、あの会話の後……徹さんとは、擦ったもんだあったのだが、結局は……強引に俺を抱いてスッキリしたら、揉めていた事すら忘れたようだった。
今朝だって、今日から俺は会社へ出社する予定になっていたのに、起きがけに徹さんの相手を2回戦もさせられて、朝からもう既にグッタリなのだ。
そして、朝食や支度を済ませ、徹さんと一緒に出社したのだが、あまりの俺の変わりように大騒ぎとなり、その話は社長の耳にまで届く事態となった。
「う、上田社長……。あ、あのぉ……お呼び頂きましたのは、ど……どのようなご用件でしょうか……?」
「うおっ……?!本当に……販促の玉川なんだろうなぁ……?また、秘書室の誰かが……ふざけてやってるんじゃないのか?」
荷物を自席に置くなり、秘書室から内線が入った俺は、同じフロアの奥にある秘書室まで歩いて行き、その先にある社長室の前まで通されて、今だ。
秘書室の前までは、会社に着くなり俺の彼氏になったことを公言した徹さんが、着いてきてくれている。なんかあれば、俺が社長室内から大声で騒げば、微かに聞こえるような距離感にはある。
「あっ、はいっ……!!社長?俺っすよぉー?徹さんの手先の玉川っす!!」
「見た目も……声も……滅茶苦茶、可愛いんだが……。喋り方、玉川すぎて……残念過ぎる……。しかも、徹の名前出すところ……完全に終わってるぞ?」
「俺のこと、社長に分かって頂けて、本当は嬉しいはずなんすけどね……?何故か、滅茶苦茶微妙な気持ちなんすよねぇ……。」
実は……上田社長と徹さんは幼馴染の同級生で、お互いに悪友と呼び合う程の間柄なのだが、社内ではそんな素振りなど一切見せたことはない。
それなのに、何故一般社員の俺がそんな秘密を知り得たのかと言えば、ある時……徹さんに飲みに呼び出されて行くと、そこには上田社長が居たのだ。
それからというもの、たびたび徹さんと上田社長がサシ飲みしてる場に、呼び出される事が増えていった。それ故だろうか、気が付けば俺は上田社長の前でも、徹さんと話す口調で喋っても、良いような雰囲気になり現在に至るのだ。
「ただ……なぁ?玉川の名を騙って、ワタシに取り入ろうとする不届者って可能性も……あり得るからなぁ?」
「あぁ……!!この前、社長言ってたっすよねぇ……?って、俺のこと……疑うくらい、そんなに多いんすか!?」
「本当に悪いな……?明らかに、玉川だとは思うんだが……確証が持てなくてな?だから……とりあえず、今着ているもの……ワタシの目の前で、全部脱いでくれないか?」
流石、地元でTVやラジオなどへのCMを流せる企業の社長、と言ったところだろうか。
でも……何だかんだ言いつつも、上田社長には婚姻歴がないのだ。上田社長曰く、彼女は簡単に出来るそうなのだが、お眼鏡にかなう相手はなかなか現れず、現在まで結婚するまでには至っていない。
それにしても、目の前にいる見慣れぬ女性が、俺だという確証を持てないまでは、当然のことで理解できる。
ただ……上田社長の目の前で、着ているものを全部脱ぐというのは、流石の俺でも理解に苦しむ。
「はい……っす!!ま、まぁ……そうすよねぇ……?は、ははっ……。俺、脱ぐっすから……社長、じーっくり……ご堪能くださいっす!!」
──パチンッ……!!ジイィィィッ……!!
──シュッ……!!
「玉川?こんなタイミングで悪いんだが……今からお前、販促から秘書室に異動だからな?」
「えっ……?!お、俺が……!?ひ、秘書室っすか……?!」
今日の俺の出立ちは、いつも通りにスーツ姿で来ている為、彼氏の服を着た彼女のようにダボダボしている。だから、ワイシャツから脱ぐよりも、スーツのスラックスを先に脱ぐ事を選んだのだ。そうすれば、俺の大きなお胸を包み込むブラジャーを、いきなり上田社長の前で露わにしなくて済むと、考えたのだ。男性にとっては、ショーツなんか見ても大抵は無反応で、その中身の方が大変興味があるからだ。それとは対照的で、ブラジャーについては……一見しただけで、補正率も含め大体の大きさが想像できるので、胸派の男性には効果絶大なのだ。
それよりも、どうして俺が秘書室に異動なのか、全くもって意味不明だ。
「まさか……徹のやつ、玉川に話をしてないのか?まあいい、ワタシの口から直接、玉川……いや、巳琴に教えてやる。遥か昔のことになるが、ワタシと徹の間で、どちらかに彼女が出来たら二人で共有するという誓いを結んだ。そういうことだ。」
「はいぃ……っ?へ!?えっ……お、俺、社長の彼女でもあるってことっすかぁー?!」
「やはり……お前、巳琴だな?あの徹が、飲み友達としてお前を選んだのも、頷ける。だから、これ以上……脱がなくて良いぞ?」
「もう……俺、頭ん中滅茶苦茶なんすけど……。」
「あとで、秘書用の制服を貸与させるから、その時は……ワタシに着替える姿、見せてくれ。」
まさか、上田社長と徹さんとの間で、そんな誓いを立てていたなんて、全く聞かされてもいない話に、俺の頭はどうにかなりそうだ。今朝、会社があるのにも関わらず、徹さんが執拗に俺を抱いてきたのは、出社すればこうなると……悟っていたからなのだろう。
「あ、あのぉ……?気付いちゃったんすけど……俺」
「おい!!もう、巳琴は……ワタシの彼女なんだから、そんな言葉遣い……やめてはくれないか?」
「わ……分かりました……。そ、それで……お話の続きなのですが……?」
言葉遣いだけでも、上田社長の前では、俺らしく過ごせるのではと……期待してしまったのだが、こちらも違ったようだ。うろ覚えだが、徹さんの自宅内や二人のいる前で、『俺』と言った瞬間……由美香さんの『私のパパと巳琴さんが本気で付き合う』が発動する筈だ。
「ああ。で、巳琴は何を気付いたんだ?」
「上田社長」
「ワタシは……巳琴の彼氏だぞ?構わんから、ワタシのことは下の名前で呼べ!!」
「た、鷹雄さんっ……!!今までの彼女……徹さんに取られたりしてませんでした?!」
「流石、ワタシの彼女だ……勘が鋭いな?悔しいが……殆どが徹のせいだ。大体……あいつが、ワタシの彼女の大事なところを……ぶっ壊すんだ!!」
「へっ……?!確かに……おっきいですけど……そこまででは?」
まさかの上田社長こと……鷹雄さんからの悲壮感一杯な一言に俺は、率直な意見しか返すことができなかった。もしかして、俺の排泄器官は……学生時代、よく便秘気味で切れ痔を繰り返していたせいで、知らぬうちに拡がってしまっているのかもしれない。
そのおかげで、俺が生きるのに必要な排泄器官を、徹さんに壊されずに済んでいるとなると、処女を維持する生殖器官は、破壊される危険性がある。
「あいつ……!!そういう事に関しては、あいつは手が早いんだ……!!では……巳琴は、もう……処女ではないのだな……?」
「い、いえっ……!!わ……わたしが、処女ではないのは、う……後ろのほうです……。」
「おおっ……!!一度、そっちでも……彼女を抱いてみたいという、気はあったのだ!!ただ……なかなか、皆嫌がってなぁ……?では……よしっ!!巳琴……奥の部屋に行こうか?」
噂には聞いてはいたのだが、本当に社長室には更に奥の部屋があるようだ。そこへと、気に入った女性社員を連れ込んでは、欲望の限りを尽くすのだと聞いているが、体験談を聞いたわけではなかった。




