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第13話 女性として人生愉しめる日々に

 県立総合病院での、女性としての機能についての検査を受診した際、俺の身に起きた出来事全て……忘れてしまいという一心だった。


 産婦人科のあるフロアの待合室まで、検査を終えた俺が戻ってくると、徹さんはベンチソファから立ち上がり、駆け寄ってきて抱き締めてくれたのだ。

 どうやら今回の検査については、特例で区役所側の負担らしく、俺に対しての会計などがないことを、徹さんは事務の方から説明されていたらしい。

 ただ、色々あった産婦人科のフロアからは……一刻も早く離れたかった俺は、徹さんを急かすようにして、足早に病院の建屋を後にした。


 そして、今日から一緒に暮らし始めた自宅までの帰りの道中、俺の身体に起こった出来事について、徹さんに包み隠さず打ち明けたのだ。

 すると、徹さんは悔しそうな表情に変わり、それから会話もないまま……自宅へと着いた途端、お察しの通り……俺はベッドへと強引に押し倒された。

 今回の出来事については、俺にも負い目があるため、徹さんに言われるがまま、全てを受け入れる結果となった。


 「ほらっ……!!巳琴さんっ!!忘れられそうか……?」

 「い、いえ……まだぁ、ダメそうですっ……!!」

 「そうかぁ……。今朝は、触れようとしただけで、あんな嫌がってたのにな……?」


 そう、今朝あの後……徹さんは、俺の……本来であれば排便しか行わない排泄器官にも、同じことを行おうと、顔を近づけてきたのだ。

 30年近く男性だった俺が、同性の男性からよりにもよって、そんなところへと……そういう行為を受けることなど、絶対にあり得ない事だった。


 しかし、産婦人科にて子宮の検査を受診した際、俺が処女だった事が原因で、排泄器官側からの触診を実施する事態となり、その固定観念は崩壊した。

 検査だというのに、結果的には……激しい刺激とその直後に得られる悦楽感を、何度も味わってしまうことになった俺は、更に求めてしまったのだ。


 「ううっ……。と、徹さんっ……!!け、今朝は……断ってしまって、ごめんなさいっ!!」

 「はぁ……。あの医師にされたことが、そんなに……良かったんだよな?巳琴さんの……観念を変えてしまうくらいにさぁ……?」

 「そ、そんなつもりじゃ……なかったんですっ……!!た、ただ……わたしは、検査を受けただけだったんですが……。」


 徹さんに対して俺は、謝ってみたり言い訳してみたりと、まるでドラマなどでよく見た事のある、浮気した彼女や妻のような振る舞いをしている。だが、総合病院で俺の身体の検査を担当した、産婦人科医の斎藤先生とは、今のところは何もない……ハズだ。


 「でも、検査が終わったのにも関わらず、あの医師に……『お願いします』と、懇願したんだったよな?」

 「ご、ごめんなさいっ……。わ、わたしが……いけなかったんですっ……。そのせいで、担当医の斎藤先生にも勘違いをさせてしまう結果に……。」

 「巳琴さんは……付き合いの長い僕よりも、初対面でどんな人間かも分からない医師に、その身も……心さえも……捧げようとしたんだろう?」


 もう、徹さんに対して俺は、何も言い返す言葉も出なかった。飲み友達以上彼氏未満という、俺にとって都合の良い関係に徹さんとはなっている訳だが、そんな相手がいるのにも関わらず、求めてしまったのだ。30年もの間、彼女も出来ずに都合良く……自由に生きて来た俺には、いきなりそんな関係を築くのは……難しかったのかもしれない。


 「ふと……わたし、思ったのですが……今の徹さんとの関係、解消した方が……良いのかもしれませんよね?」

 「どうして、そう思うんだ?」

 「わたし、色々……矛盾してるじゃないですか……?数時間前まで、あんなに嫌がってたのに……今、こう話している間でさえ……受け入れてますよね……?」

 「まぁ……な?だが、きっかけはどうであれ……僕は、嬉しいがっ……なぁ!!」


 真剣な話をしていると思いきや、俺の身体は徹さんと……普通の恋人同士では、あり得ない繋がり方をしている。しかも、徹さんに叱られるたびに、俺の身体は凄くゾクゾクしてきており、絶対におかしい。


─_─_─_─_


 「それで、パパと巳琴さんは……こんな時間まで、普通じゃないエッチしまくってたって事で、OK?」

 「おいおい……由美香、ちょっとそれは違うぞ?実は……な?悪いことをした巳琴さんを……僕が、厚意で再教育していただけなんだがな?」


 どちらかといえば、由美香さんの言った内容の方が、俺は正解だと思う。今までの時間、斎藤先生に嫉妬心と対抗意識を燃やした徹さんが、例の検査で俺が味わった悦楽感を再現すると言い出し、試行錯誤を繰り返していた。その際、徹さんは俺に向かって、しきりに『これは、巳琴さんに対する再教育の一環で、僕が厚意でやっているだけだ。』などと言ってきていた。


 「さ、再教育って、何?!それに……み、巳琴さん……?!悪いことって、何しでかしちゃったの!?」

 「僕がいるのに、浮気をだな……。」

 「う、浮気ぃ……!?え……?ど、どういうことぉ?!」


 浮気と徹さんから言われてしまうと、俺も反論することは難しい。ただ、今回の件については……俺も自分自身の軽率な行動には反省しているが、まだ完全には付き合っていないので、そこまで言われる筋合いもない。


 「わ、わたしたち……まだ、恋人まで至ってませんので……。」

 「あ……!?確かにっ……!!あのさぁ、パパぁ……?巳琴さんへの押し……弱いんじゃないのぉ?!今って……ただパパが、まだ彼女でもない女性の友達の行動に嫉妬して、束縛してるだけだよねぇ?」

 「押しが弱いと言われても……なぁ?僕は……今すぐにでも、巳琴さんのこと……妻として迎えたいと伝えてはいるんだ……。これ以上、どう押せば良いのだろうなぁ……?」

 「へっ……?!巳琴さん待ち……ってことかぁ……。ちょっと……今回、私が巳琴さんのフォローするの難しいかなぁ……。」


 初めは俺の肩を持とうとしてくれた由美香さんだったが、徹さんの話を聞いた後は、手のひら返しされる結果となってしまった。

 まぁ、徹さんからプロポーズされたのだが、俺の気持ちの整理がつくまで保留状態にしている上、雰囲気に流され都合の良い関係を結んだのは確かだ。

 『今は、そんな気分ではない』と、一旦断っておけば良かったのだが、それをしなかったが為……俺は、悪者扱いされる羽目になってしまった。


 「わ、わたしが……誰と付き合おうとも、そんなこと……徹さんには、か……関係ないじゃないですかぁー!!」

 「はぁ……?!関係あるに決まってるだろ……!!」

 「そ、束縛しないで下さいっ!!わたし……自分自身の可能性について、色々……経験してみたいんですっ!!だからって……つ、妻にならないなんて……徹さんからのプロポーズ、わたし……お断りしてませんよね?!」


 女性の身体になってから、俺はまだ三日目な訳なので、色々と経験不足過ぎると思っている。言うなれば、オープンワールド系のネットゲームで、キャラ作成してチュートリアルを終えたばかりなのに、ワールドボスに挑むようなものだ。とは言うものの、今朝からの俺は……大体、徹さんのせいで……エリアボスに挑んでしまったのだが、受け入れるのがハイペース過ぎたと反省している。


 「わ、悪かった……。だけど、分かって欲しいんだ!!巳琴さんが……他の野郎共に、取られたくなかったんだよ!!」

 「あ、あのぉ……!!ほ、他の方たちとの交際に関してなんですけど……そこは、大目に見てもらいたいです……。必ず……わたしは徹さんの妻には、なりますので……お、お願いしますっ!!」


 折角、女性の身体になれたのだから、俺は……徹さん以外の男性のものも、この際なので……知ってみたいと思ってしまった。多分、今日の昼間の検査の一件がなかったら、こんなことも思わずに……徹さんに餌付けされ、飼い慣らされた挙句、妻に落ち着いていたかもしれない。

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