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#28 スーパーにて

私の名前は三河故貝。読書が好きな高校生だ。今は友達とスーパーに来ている。スーパーに来ているのは明日の料理の材料を買うためだ。ただ、二人とも作りたいものがエキゾチックなので、スーパーで売っているかどうかが問題だ…

放課後、二人で近所のスーパーに来た。正直、個々の品ぞろえにはあまり期待していないが、一応来てみることにした。

「ここに売ってなかったらどうする?」

賽瓦に一応聞いてみる。返答は大体予想がついているが、もしほかの店に行くのだったら時間を調整しなければいけないし。

「...なかったら別の店行く。ネットはあんまり使いたくない...」

賽瓦がそう答える。

...ネットで買い物をするのが好きじゃないのは意外だった。なんでだろう?支払いとか手続きが面倒くさいのか?それとも、店で買うことに意味があるとか?ちょっと聞いてみよう。

「え~、なんでだよ?ネットのほうが楽じゃね?」

もし、店で買う理由に私が入っていたら少しうれしい。なんというか、そんなに一緒にいたいんだって感じで。さぁ、どうなのか!

「...私まずアカウント持ってないし。あと、店で実物見たいし...言わなくていいでしょ。それ以上は」

賽瓦が死んだ目でこっちを睨む。ばれてたらしい。それ言ってるのと大差ないよね、と言いたくなったのをグッと抑えて私はそそくさと買い物かごを取りに行く。自分で聞いておいてちょっとだけ恥ずかしくなったからだ。その間に賽瓦は野菜コーナーに向かっていく。だいぶ怒っていらっしゃるようだ。

彼女が見えなくなる前にカートも持ってこなければ!


何とか賽瓦を見失う前にカートとかごを用意できた。そのあと、二人で少し見て回ったが、やはり今度作る料理の材料はすべてそろわなかった。正確に言うと、賽瓦が作ろうとしているカオマンガイについては大体の材料がそろったが、私が作ろうとしているルンダンの材料がだいぶレアなので、すべてはそろわなかった。あったのは肉と香辛料ぐらいでココナッツミルクやらルンダンの素やらはこのスーパーにはなかった。いやぁ、残念だなぁ。すごく残念。

「...あんたの料理の材料だいぶ足りないみたいだけど」

賽瓦がかごを見ながらそう話してくる。そうだよ。全然なかったんだよ。

「ここじゃ手に入らないのが多くて。どうする?ほかのスーパー行く?」

行くとしたら明日がいいなぁ。今日は家帰ってゆっくりしたい。なんか嫌な予感するし。さっきから知ってるような声が聞こえるし。

「そうだね...あんたが帰りたそうにしてるし帰る。また明日買いに行こう。そういう材料が売ってる店知ってるから」

なんだ、最初から売ってる店知ってたんじゃん。...スーパーに来たのも無駄ではなかったな。ちょっとうれしい。それはそれとして、早く帰らねば。万が一にでもクラスメイトと遭遇したらちょっと気まずい…

「あ、賽瓦じゃん!どうしたの?なんか買いに来たの?」

はい、嫌な予感が的中しました。クラスメイトの藤井が角から現れた!そして私は賽瓦の後ろに下がった。人と話すの得意じゃないし、藤井はよく知らないから!

「こんにちは。料理の材料買いに来たんだよ。藤井は?」

賽瓦...頼もしいやつ!彼女に対する評価が結構上がった!まあ、私は話すの苦手ではないんだけど、普通に話すのは難しいから、賽瓦もそういうところあるのかと思ったら結構普通に話せるじゃん。強いなぁ。

「私?私は料理の材料買いに来たの。カイトと一緒に!」

言いながら遠くの人物を指さす藤井。人がいるところでそうやって指さすのはあんまりよくないと思う。それはさておき、そこにいたのは中学生ぐらいの男子だった。弟かな?

「へ~、藤井に弟がいたのか。意外だな」

いつも自分勝手に動いてるからてっきり一人っ子かと思ってた。弟の面倒を見てるならだいぶ印象が変わる。

「うん?意外?まあいいや。カイトは私の弟だからね!しっかり材料をメモってるよ!だから、私が買うものは特にない!」

自信満々に話す藤井。

...藤井ってすごいなぁ。弟に頼りすぎじゃなかろうか。

「ねぇ...さすがにそれは姉としてちょっと、任せすぎじゃない?少しでも必要なもの聞いてかごに入れてあげたほうがいいと思うよ...」

賽瓦は優しく助言する。若干の憐れみを込めて。

私もそう思う。姉としての自覚とか、ちょっとはないのでしょうかあなた。少しでも手伝ってあげたほうがいいよ。

「そう...そうだね!カイト手伝う!教えてくれてありがとうね!それじゃあ!」

藤井はそう言いながら手にポテチを4袋持ってカイト君のところに向かう。

自分のおやつはちゃっかり持っていくんだ...油断できない姉なんだろうね。カイト君にとっては。


スーパーでの買い物が終わると、二人で家に帰る。まだ夕ご飯まで時間があるので、私の家に寄って少しだけ本を読むことになった。

「ねぇ、やっぱり肉は400gのほうがよかったんじゃない?」

「う~ん、500gのほうが量多いし、コスパ良かったからなぁ」

「...ちょっと食べ終わるまで時間かかるでしょ」

「かもね。大丈夫、余ったら私が全部食べるから」

こんな感じで適当に話しながら私の家まで歩く。

「でさ~、先生が提出物うるさくてさ~」

「...ふ~ん」

「右手が寄生生物になって~」

「...あっそ」

「体から偽札を出せるようになるんだけど~」

「...」

二人で話していると、だんだん賽瓦の反応が薄くなっていく。眠いのか?少し聞いてみる。

「眠い?」

賽瓦は黙ってうなずく。そうか~。まあ色々あったしな。とりあえず、賽瓦の荷物を持つ。

「いいよ、ちょうどベンチあるしここで休憩しよう」

家までもう少しだけれど、そんなに眠いなら少しだけ休ませよう。私も結構疲れたし。

ベンチに座ると、賽瓦はすぐに寝てしまった。賽瓦の寝顔を見たことはあまりなかったが、なるほどこういう感じか。...何とも言えないな...

「あぁ...涎垂れてるし...」

仕方ない。私のハンカチで彼女の涎を拭く。自分が涎垂らしてたって知ったらショックだろうし、教えないでおこ…

そのあと、日が暮れる少し前まで休憩した後、起きた賽瓦を家まで送ってその日は解散した。彼女のプライドを考えて、家に少しだけお邪魔して涎を拭いたハンカチを洗濯機に放り込んだ。賽瓦は眠そうに「バイバイ」と言って見送ってくれた。料理の材料がそろうであろう明日が楽しみだ。どっちのほうが料理作るのうまいか比べたいしね!

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