第8話15 さらなる魔法の爆発
終焉の手、覚醒の刻
死のコンクリートの漆黒の腕が、まるで蛇のようにうねりながら二人を絡め取る。
「なっ……!」
ニックスとフィードの身体は、ぐるぐると空中で回転しながら、セメントに包まれていく。
——ズンッ!!
瞬間、重力が反転したかのような感覚が二人を襲った。
「降りてくるぞ!!」
フィードの叫びと同時に——
——ドガァァァン!!!!
二人の身体が、山洞の天井に激突する!
バキバキバキ……!!
轟音と共に、天井に無数の亀裂が走る。
そして——
崩壊が始まった。
岩の破片が次々と降り注ぎ、粉塵が舞い上がる。
ニックスとフィードの姿は、その瓦礫の中に消えた。
……生死不明。
***
死のコンクリートは、悠然とその場に立ち尽くし、崩れ落ちた山洞を冷めた目で見つめていた。
「……普通の人間なら、あれで死んでいるはずだ。」
しかし、その声には微かな疑念が滲んでいた。
「まぁいい。念のため、もう一度確実に仕留めておくか。」
——ゴゴゴゴ……
突如、空間が歪む。
天井の崩落による粉塵をかき消すように、巨大な影が広がった。
——それは、巨大な手のひらだった。
黒く、冷たく、逃れられない死の手。
ゴゴゴゴゴ……!!
それがゆっくりと、だが確実に二人の位置へと落ちていく!
「まだ……終わってない!!」
——その瞬間、崩れた岩の中から、フィードが立ち上がった!
「ぬおおおおおおおおっ!!!」
彼は両手を天に突き上げるように、迫りくる手のひらを全身全霊で受け止めた!
——ゴギギギギ……!!
「くっ……重すぎる……ッ!」
膝が震える。
地面が陥没する。
それでも、フィードは歯を食いしばり、全力で押し返そうとする。
「壊れろ……ッ!!!」
しかし——
手のひらの重圧は、まるで山そのもの。
押し返そうとした瞬間、フィードの身体が軋み、今にも押し潰されそうになった。
「フィード!!」
——その時、もう一人の影が立ち上がった。
「ぐぅ……!!」
ニックスだ。
彼は、フィードの隣に並び、両手をかざす。
「負けてたまるかあああああ!!!」
——バキィィィン!!!!
閃光のような音が響いた瞬間、巨大な手のひらは粉砕された!!
破片が四方に飛び散り、二人は荒い息を吐きながら立ち尽くす。
「……フィード、このままじゃダメだ。何か策を考えないと。」
ニックスの額には汗が滲んでいた。
フィードは、荒れた呼吸を整えながら、静かに答える。
「……最良の方法がある。」
「……?」
「ニックス、さっきのが君の全力か?」
フィードの言葉に、ニックスは目を見開く。
「以前、君が話していたよな——突然強くなることができるってやつ。もう一度できるか?」
「でも、それは……!」
「俺が時間を稼ぐ!だから、集中しろ!!」
言い終わるや否や、フィードは全力で死泥鬼へと突撃した!
「おおおおおおおおおお!!!」
激しい戦闘が再び繰り広げられる。
ニックスは、その光景を見つめながら、拳を強く握りしめた。
「……集中、集中しなければ……!」
だが——
ドガァッ!!
「ぐぁっ……!」
再び吹き飛ばされるフィードの姿が、視界に映った。
「……ッ!」
焦燥が走る。
「応えてくれ……!!」
彼は、奥底で感じる何かに必死に呼びかける。
「応えてくれええええ!!」
——その時だった。
ふわっ……
目の前に、微かな光が生まれる。
そして——
そこに現れたのは——
彼がよく知る“精霊”だった。




