第8話13絶対的な強さ、絶対的な破壊力
死の追撃、絶望の連撃!
「……もう死んだのか? いや、逃げたんだ。」
フィードは静かに呟いた。
しかし、その声音にはわずかな焦燥が滲んでいた。
実は——
攻撃を受ける直前、二人は協力して山洞の天井に穴を穿ち、そこから脱出していたのだ。
「逃げた、逃げたぞ!」
焦りを隠せぬまま、フィードが叫ぶ。
「うん、急がないと……このままじゃ——」
「俺に追いつかれる、というわけか?」
突如として背筋を凍らせるような声が響き渡る。
そこに立っていたのは——死の水泥。
闇のように黒く濁った泥が、その身を包み込む異形の存在。
粘りつくような魔力が空気を歪ませ、圧倒的な威圧感が場を支配する。
死のコンクリートは不気味に手を伸ばすと、その腕の一部がうねるように変形し——
長大な黒槍となった。
——ズバッ!!
空気を切り裂く鋭い音とともに、その槍が疾風のごとく振り下ろされる!
「クソッ!」
フィードとニックスは咄嗟に身を翻すが、凄まじい衝撃が炸裂!
轟音とともに、二人の身体は吹き飛ばされた。
その刹那——
死のコンクリートの手が蠢き、新たな形を成す。
次なるは、無数の矢。
ドロリとしたセメントの表面から、鋭利な黒い矢が無数に形成され、まるで毒蛇の群れのように、二人の落下地点へと一斉に射出される——!
——ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!!
嵐のような矢の雨が、地面を穿ち、岩を砕く!
濛々と立ち昇る煙と粉塵。
やがて視界が開けると——
傷ついたフィードとニックスの姿がそこにあった。
「……もう、やるしかない……!」
拳を握りしめ、決意を込めた瞳で互いに頷き合う。
そして——
二人は再び死のコンクリートへと向かって突撃した!
——ドンッ!!
二人の猛攻が同時に炸裂する!
しかし——
死のコンクリートはわずかに体を傾け、 全ての攻撃を受け止めた。
「遅い。」
冷たい声が響く。
次の瞬間——
死のコンクリートの脚が閃く!
——ズドォッ!!
ニックスが強烈な蹴りを喰らい、轟音とともに吹き飛ばされた!
さらに——
「フンッ!」
死のコンクリートの手が疾く動き、フィードの顔を鷲掴みにすると——
ズシャァァァ!!
そのまま地面に叩きつける!
ガガガガッ!!
地面が砕け、衝撃波が周囲に波及する。
だが、フィードが反撃する隙すら与えず——
死のコンクリートの膝が突き上がる!
「グッ……!」
フィードの身体が再び宙を舞い、岩壁へと弾き飛ばされた。
「……ッ!」
その隙を狙い、ニックスが二度目の攻撃を仕掛ける!
しかし——
死のコンクリートは振り返ることなく、それを察知していた。
彼の肘が鋭く動き——
ドガァッ!!
ニックスの顎を正確に打ち抜く!
「ぐっ……!!」
弾かれたように彼の身体が地面へと叩きつけられる!
息も絶え絶えな二人。
それでも——
フィードはなおも立ち上がり、最後の力を振り絞り、死のコンクリートに殴りかかる!
——その刹那、二つの拳が交錯!
しかし——
力の差は歴然だった。
フィードの拳が死のコンクリートの拳と衝突した瞬間——
——バキッ!!
衝撃が骨を軋ませる!
フィードの拳は完全に弾かれ——
そのまま、死のコンクリートの拳がフィードの腹部を貫く!
「ガッ……!!」
鋭い痛みとともに、フィードの身体が宙を舞う。
そして——
死のコンクリートの視線が、地に伏せるニックスへと向けられる。
無慈悲な足が踏み込まれ——
「消えろ。」
——ドガァァァッ!!!
一閃、ニックスの身体が弾丸のように蹴り飛ばされた!
しかも、その飛ばされた方向は——
まさにフィードの元へと向かっていた!!




