第55話 08 創世の前奏曲
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バイスタの戦場もまた、激しい膠着状態へと突入していた。
巨剣が振るわれるたび、その刀身に極光が炸裂し、まるで星々が砕け散るかのように眩く輝く。風の力は四方を巡り、時に攻撃の軌道を急変させ、時に見えぬ推力となって彼の体を押し上げ、まるで風そのものに抱かれるように、死線の刃を紙一重でかわしていく。
突如、正面の風が凝縮し、巨大な掌の形を成して轟然と襲いかかる。
バイスタは咄嗟に身を横へと滑らせ、風壁すれすれをかすめて右へ退く。しかし休む間もなく、頭上の空気が崩落し、山嶽のごとき重圧が覆いかぶさった。
極光が閃き、剣勢は雷鳴のように轟き、その圧力を真っ二つに裂き払う。
対峙する碧緑の長髪の男は、ただ静かに彼を見据えた。その眼差しは、天空に渦巻く暴風のように冷酷。
「速度を上げるべきだな。でなければ、厄介な連中を呼び寄せることになる。しかも奴らは一人残らずやかましい――耳障りで堪らん。」
バイスタは鼻で笑い、応じる。
「やかましい? お前もずいぶん喋るじゃないか。」
「それは違う。」男は唇の端を上げ、風に溶けるような軽やかな声で続ける。
「俺はただ、心のままを口にしているだけだ。言いたいことを言い、やりたいことをやる――それは共有であり、解放でもある。俺にはその力がある。だからこそ、風のように……絶対の自由でいられる。」
言葉と同時に、その身はふわりと浮かび上がる。碧緑の髪が風に舞い、身体は軽やかに宙で翻り、やがて怠惰に空気の上へ横たわった。まるで大空そのものが彼の寝床であるかのように。
バイスタの瞳が鋭く光る。隙を見逃さず、極光を凝縮させ、一閃の剣気が空を裂いて疾駆する。
だが、それは到達する前に目に見えぬ空気の壁に阻まれ、ガラスの砕けるような音を立てて弾かれた。
「……チッ。」バイスタは心中で毒づく。
その時、空気の流れがさらに狂乱を帯び、大量の気流が引き寄せられ、渦を巻きながら膨張を始めた。
先の竜巻とは異なる――これは比べものにならない規模。荒れ狂う気配は、森全体に圧迫の呻きを響かせるほどだった。
「……違う。」バイスタの胸中に緊張が走る。
「この空気の集束量……過去のどの攻撃よりも膨大だ!」
見れば、碧緑の長髪の男の周囲を風が旋回し、その髪と四肢を纏い込む。やがてそれは膨張し、姿を変え、無形の力が実体を得ていく。
――風の巨人。
その容貌は男と瓜二つ。しかし、数倍どころか、山岳に匹敵するまでに拡張された巨体。
天空を貫くほどにそびえ、腕ひとつでさえ建物一棟に匹敵する太さ。大地に足を踏み下ろせば、樹々は玩具のように砕け散った。
呼吸ひとつで空気は沸騰し、巨人の動作ごとに圧倒的な風圧が奔り、大地そのものが悲鳴を上げる。
碧緑の男は高みから見下ろし、指先で風の巨人を示す。その笑声は狂風の咆哮のごとく響き渡った。
「見えたか? 風は――あらゆる形を成すことができる。」
その言葉と同時に、風の巨人は大地を震わせ、天を覆う足を振り下ろした。
まるで天地そのものが崩壊するかのごとく、容赦なき一撃がバイスタを襲う――!
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