第55話 02 限界無き者 VS 限界を超えし者
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空気がこんなにも澄み切って、しかもほのかな甘みまで感じられるなんて——無駄にするわけにはいかないな。ひと息吸い込めば、肺の奥まで洗い清められるようだ。だが、こういう空気は、一人で独占してこそ心まで解き放たれる。そういうわけだ、さっさとお前を片付けないといけないな。…そう思わないか?
風——それは束縛なき存在。攻撃の距離に限界はなく、力の上限もない。そよ風のように優しく撫でることもあれば、城をも砕く烈風にもなる。風は決して縛られない。行きたい場所へ、ただ行くだけ。それこそが生きる価値だろう?ああ…俺も風のように、極限まで自由でありたいものだ。
碧い双眸の男はバイスタを見やり、口元をわずかに吊り上げた。
「正直、お前の言ってることは全く理解できないな。今、お前は風を操っているんだろう?それじゃあ風はもう自由じゃないじゃないか。それに、風に限界がない?…違うな。風の限界はお前自身だ。」
バイスタの瞳がわずかに陰り、剣を握る手に力がこもる。
「だが、俺はその限界を超えた。だからこそ、俺の剣は限界をも超える剣だ。」
「限界を超える?」碧眼の男は小さく笑い、興味を引かれたように目を細めた。
「その名は実に美しいな。まるで朝の風が霧を払いのけるようだ。…見せてもらおうじゃないか。お前の言う限界なき風が勝つのか、それとも限界を突破したお前が最後に笑うのか。」
彼の気配が一変し、鋭さを帯びる。空気そのものが刃で裂かれていくようだった。
「もともと面倒で戦う気にもなれなかったが…今は違う。風が満ちている。今こそ斬り結ぶ時だ!」
バイスタの大剣が、空間を裂く轟音とともに極光のような輝きを放ち、男へ振り下ろされる。碧眼の男はわずかに二本の指を動かすだけで、背後から無数の風の球が生まれ、豪雨のように降り注いだ。二つの力が空中で衝突し、耳をつんざく爆音が響き渡る。衝撃波は森全体を呑み込み、巨木すら根こそぎ吹き飛ばす勢いだった——戦いは、まだ終わらない。
同じ頃——幻術の世界では、エリーサが獲物のように追い立てられていた。
「くっ…どうしてあいつらを刺激しちまったんだ?完全にこの幻境のウイルス扱いじゃないか…!」
背後の冷たい壁に身を預け、心臓が鼓のように高鳴る。
全員を幻術から解放するには、正面から奴らを倒すしかない。しかし、ここは幻境——彼女の攻撃は致命傷にならない。これまで何度も試したが、どれだけ倒しても、奴らの身体は瞬時に修復し、不死のように立ち上がってくる。
別の方法を必死に模索していたその時——
「シュッ!」壁の向こうから、冷たい光を放つ大鎌の刃が一気に突き出された。刃先はエリーサの左頬まであと一ミリもない!その瞬間、冷たい殺気が血を凍らせる。
彼女は弾かれた猫のように飛び退き、全力で駆け出した——逃げるしかない。少しでも遅れれば、即死だ!
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