第54話 18 極光、点々と
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碧緑の髪を持つ男は、目前の驚天動地の光景を前にしても、一歩も退かなかった。
その瞳は嵐に磨かれた宝石のように鋭く、冷たく、ただ一点を見据えている。
両手を合わせ、指先がわずかに震えたかと思うと、次の瞬間、勢いよく上方へと突き出した。
まるで透明な鋼鉄で鍛え上げられたかのような「空気の壁」が咆哮と共に立ち上がり、バイスタの攻撃と空中で真正面から激突する。
刹那、衝撃は砕け散る水晶のように爆ぜ、無数の白い破片となって四方に舞い散った。
それらは軽やかな雪片のごとく降り注ぎながらも、極光のように冷たく艶やかな輝きを放っていた。
破片は風に巻き上げられ、回転し、渦を描く。
まるで幾つもの縮小された惑星が見えない軌道を回っているかのように、幽かな青と銀白の光を交互に放ち、頭上の天蓋を無限の宇宙へと変えていく。
その深淵は、呼吸することさえ忘れさせるほどに美しかった。
だが、攻撃は終わらない。
次の瞬間、バイスタの足元の大地が突如として大きく凹み、彼の身体は恐るべき重圧によって地面へと叩き落とされた。
硬い地表は衝撃によって獣の爪で裂かれたように亀裂を走らせ、巨大な「X」の痕を刻む。
しかし悪夢はまだ序章に過ぎなかった。
胸の中心を何か目に見えぬものが強く繋ぎ止め、その直後、耳を劈く爆発音が轟き、バイスタは地の底から吹き飛ばされる。
「……空気が……爆発した?」
バイスタは心の中で呟く。
胸を繋ぐその力こそが、相手の奇襲に違いない。
だが、彼は空中で突如として拘束される。
見えない檻に閉じ込められたかのように、身体は完全に固定された。
碧髪の男の声が、冷ややかに、そして揺るぎない自信を帯びて空間に響く。
「俺の攻撃範囲は無限だ──世界の隅々にまで空気は存在する。
知っているか? 空気の密度を極限まで圧縮すれば、あらゆるものを粉微塵にできる……この星そのものさえもな。」
バイスタの周囲の空気が狂潮のように押し寄せ、隙間なく収束し、圧迫し、骨も肉も完全に粉砕しようとする。
碧髪の男の瞳に、一瞬だけ驚愕が走る──数万トンの圧力を浴びても、この男の表情は微塵も揺らがない。
息を奪うような重圧の中、バイスタが断続的に声を絞り出す。
その言葉は気圧に引き裂かれ、途切れ途切れになりながらも、確かに響いた。
「……極光は……消えない……たとえ……散っても……闇を……照らす……」
その瞬間、先ほどの激突で舞い散った破片が突如として輝きを増し、呼び覚まされた星々のように極光の力を爆発させる。
無数のバイスタの幻影が光の中から現れ、空を裂く速度で碧髪の男へと突進する。
「正面から攻める気か? ……まだまだ甘いな!」
男は冷笑し、全身から天地を薙ぎ払う烈風を放った。
それは数万の刃と化し、触れたもの全てを粉砕する。
だが、極光の幻影は斬り裂かれると同時に無数の光粒となり、星屑の雨となって降り注いだ。
それらは寸分違わず、バイスタを拘束する空気の結界に突き刺さり、瞬時に高密度の気流を破壊して周囲の空気を解放する。
大地を踏みしめた瞬間、バイスタの影は光と融合し、まるで彼自身が永遠の極光であるかのように輝き放った。
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