第54話 16 極光と極風
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碧緑の長髪を持つ男の頭上に、純粋な魔力で形成された翡翠の王冠が突如として浮かび上がり、冷たい光を放つ。周囲の狂風は、無数の細く冷ややかな蛇のように空気を這い、四肢と胴へと絡みつき、やがて全身を覆う鱗鎧へと変わる。わずかな動きさえ、樹木を引き裂くほどの烈風を巻き起こす。ゆっくりとマントが滑り落ち、ついに人々は彼の半ば隠された顔を目にする――一枚の不気味な仮面がその顔を左右に分断していた。左半分は深い色に染まり、宝石のように冷ややかな翡翠色の瞳がはめ込まれている。右半分は雪のように白く、そこには冷厳な紋様が刻まれていた。仮面の形は咆哮する鬼を思わせ、右上から突き出た一本角は刃のごとく鋭い。青緑色の仮面の紋様は無数の鬼影を描き出し、それらは唸る暴風の中で歪み、崩れ、再び組み直される。その仮面を見つめるだけで、魂を握り潰されるような圧迫感が襲ってくる。
その時、天地の魔力が突如として停滞し、空気は鉛のように重く圧縮され、呼吸は困難で鈍くなる。碧緑の長髪の男がゆっくりと目を上げた瞬間、極光のような輝きがその身から迸り、荒れ狂う海の如き膨大な魔力が四方八方へと押し寄せる。バイスタの足元の大地が震え、重々しい大剣は光を映し、その全身の魔力もまた激しく高まり舞い上がる――それは伝説の中でごく限られた者しか辿り着けぬ境地、神のモードであった。
二人の視線が空中で交わり、戦意は雷鳴のように炸裂する。バイスタは大剣を高々と掲げ、その切っ先を蒼天へ向ける。一方、碧緑の長髪の男も嵐を操り、一歩も退かぬ。次の瞬間、魔力と魔力が衝突し、擦れ合い、空気は裂け、山林は激しく揺れ動く。数え切れぬ鳥たちが驚き飛び立ち、空へ舞い上がった。轟音と震動は極点に達し、やがて一瞬の、しかし危険な静寂が訪れる。
その死のような静けさの中、バイスタは地を踏み砕き、一条の疾影となって天から大剣を振り下ろす!しかし碧緑の長髪の男は冷笑を浮かべ、指先をわずかに動かすだけで、風の力を無形の刃と化し、剣の軌道を強引に逸らす。次の瞬間、大地の左側がまるで天罰を受けたかのように、森も土もすべてが暴風に巻き上げられ、宙を舞い、砕け、そして地上へと叩きつけられた。
――これこそが、この戦いの真なる幕開けであった。
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